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長きにわたる圧政の果て

カザフスタンは古代から遊牧民の地で、広大な国土の一部がいくつかの王朝に組み込まれていました。そのなかには、10世紀頃に中央アジアでイスラム教を定着させたカラハン朝や、13世紀から栄えたモンゴル帝国があります。モンゴル帝国を構成する国(ハン国)の1つにウズベク族が暮らす地があり、彼らとたもとを分かったのがカザフ族とされます。正確な歴史は伝わっていません。

ロシアがカザフスタンの地に近づいてきた時代

15世紀以降カザフ族は草原全体を支配しましたが、17世紀末から西モンゴルの遊牧民ジュンガルの攻撃に苦しみます。加えて北からゆっくりですが着実にロシアが南進します。カザフはロシアの保護をもってジュンガルに対抗しようとしましたが、ジュンガルは中国に滅ぼされ、カザフはロシアに併合されました。

カザフスタンの20世紀から現代

20世紀に入りロシアがソ連になると、カザフも組み込まれます。ソ連はカザフ遊牧民の定住化と、ロシア人・ウクライナ人の入植を主導。この植民策は暴力と飢餓がセットで、150万のカザフ人が死に、人口と文化のソ連化が進みました。

1991年のソ連崩壊でカザフスタンは独立します。カザフスタンの初代大統領は共産党出身のヌルスルタン・ナザルバエフ。彼は次第に独裁傾向を強め、2019年の辞任後も影響力を保ちました。後任のトカエフは民主化を進めるとしましたが、翌々年にエネルギー価格が暴騰して国民が激怒、大都市での反政府デモに発展しました。デモの根底にあるのはカザフスタンの民主化を求める声です。カザフスタン人の戦いは、これから本番を迎えるのです。

カザフスタンを知るキーワード

カザフスタンのキーワード:ヌルスルタンにあるカーン・ シャティール

首都ヌルスルタンにある世界一大きいというふれ込みのテント。中はレジャーセンターです。初代大統領の肝煎りで造られた、独裁者らしいステキな仕事。

カザフスタンのキーワード:北部の穀倉地帯

ソ連時代にフルシチョフが進めた処女地開拓政策などで、ロシア人とウクライナ人が入植しました。肥沃なカザフスタン人の遊牧地は麦畑になりました。

カザフスタンのキーワード:ドリンカ村政治弾圧犠牲者博物館

ソ連当局が不都合な人々をぶち込んだグラグ(強制労働収容所)は、現在博物館。破壊された移動式住居ユルトの天窓は暴力の証明です。

カザフスタンのキーワード:死よりも強く

カザフスタン北東部セメイ(旧セミパラチンスク)で行われた、ソ連時代の核実験を伝える碑。今も後遺症に苦しむ人がおり、汚染で農業が難しいエリア。核はロシアに返還もしくは廃棄済み。

カザフスタンのキーワード:バイコヌール宇宙基地

ガガーリンが乗るボストーク1号、その前には名犬ライカが乗ったスプートニク2号が飛び立った所。現在もロシアが租借中です。

カザフスタンのキーワード:テンギス油田

カスピ海沿いと沖合で油田が発見されました。石油だけでなくウランや銅といった地下資源があるカザフスタンは、中央アジアのなかで恵まれています。

カザフスタンのキーワード:映画の街アルマトイ

ソ連時代はニュース映画を作り、今は劇映画を作る中央アジアのハリウッド。カザフスタン映画の父、シャケン・アイマノフが活躍しました。

カザフスタンのキーワード:馬術競技キズ・クー

男性が女性を捕まえることができれば、キスしてもらえます。女性が逃げきると立場逆転、男はムチで打たれる側に。本気が試される競技です。

カザフスタンのキーワード:ウヤットマン

カザフスタンにはウヤット(恥の文化)があり、露出が多い女性の服、友人が集まらない結婚式を嫌います。その古い習慣を擬人化したキャラが、一時期流行しました。

カザフスタンのキーワード:国民食 ベシバルマック

平打ち麺の上に茹でマトンとタマネギソースを乗せ、おもてなしの時は羊の頭で飾ります。手で食べるので料理名の異名は「五本指」です。

カザフスタンのキーワード:みんな大好きベルーガ

ベルーガはオオチョウザメのこと。絶品キャビアはその卵。漁師と美食家、捕獲禁止時代は密猟者に大人気で、もうあまり採れません。

カザフスタンのキーワード:ドンブラ

カザフスタンの伝統音楽に欠かせない楽器。けっこうな早引きですが、手の動きはゆったり優雅。YouTubeで視聴できる素晴らしい時代になりました。

カザフスタンのキーワード:2022年1月反政府デモ

液化石油ガス価格倍化の抗議が、アルマトイ政府庁舎襲撃に発展。ロシア主力の安保軍や治安部隊が鎮圧しました。その後ナザルバエフが政界引退を表明しています。

カザフスタンの著名人:最強ボクサー ゲンナジー・ゴロフキン

プロアマを通じノックアウト負けなしの国際ボクシング連盟世界ミドル級王者。お父さんは炭鉱労働者のロシア系でお母さんはアジア系です。(1982〜)

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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