トップ > カルチャー >  海外 > アフリカ >

長い乱世が、チュニジアの国を成熟させた

地中海で活躍したフェニキア人の国カルタゴがあったのはチュニジアの沿岸で、ローマに下ってから後も、幾度も外から支配者が現れました。7世紀のイスラムはその一つです。

チュニジアは16世紀にオスマン帝国に組み込まれ、19世紀にはフランスによる保護国化と近代化を経験し多様な文化と人種を受け入れました。イスラム教が多数でありながら、飲酒とノーヒジャブをある程度認めるチュニジアの大らかさは、文明の混交を背景としています。その懐が深いチュニジア人の堪忍袋の尾が切れたのは、21世紀です。

チュニジアのアラブの春までの流れ

1956年、国際社会から海外植民地経営を批判されたフランスは、チュニジア独立を承認しました。チュニジアの初代大統領は、長年政治運動に携わり辛酸をなめたブルギバでした。やがて彼の政権が長期化し、独裁色を帯びるようになると1987年に罷免、軍部出身のベン・アリが後任に選ばれます。

ベン・アリ大統領は前任者の自由化・民主化路線を引き継ぐとしました。しかし次第に秘密警察による国民とイスラム政党の弾圧、報道規制、縁故主義がはびこっていきます。

チュニジアから始まったアラブの春

腐敗に絶望した青年モハメドが抗議の焼身自殺を決行すると、反政府デモが一気に広がり2011年にベン・アリが退陣、民主化運動「アラブの春」の発端となりました。

チュニジアのアラブの春は各国に飛び火しました。しかしチュニジアのような民主化を実現した国は、ありません。政治的混乱と経済低迷はまだ続きますが、それはより良い未来のための過渡期の戦いだとチュニジアの国民は切に願っています。

チュニジアを知るキーワード

チュニジアのキーワード:名将ハンニバル

メジェルダ川沿いは、ローマ人の胃袋を支えたという穀倉地帯。ローマに負けたカルタゴの名将は草葉の陰でさぞ不愉快だったでしょう。

チュニジアのキーワード:マトマタの地中住居

映画『スター・ウォーズ』のロケ地になった、先住ベルベル人の住居跡。穴を掘り壁面を部屋にしました。今は、快適なホテルになっています。

チュニジアのキーワード:古都カイルアン

7世紀に造られ9世紀に発展した、北アフリカで最も古いイスラムの歴史を持つ街。街を象徴するグレートモスクは、一部のムスリムにとって4番目に重要な聖地です。

チュニジアのキーワード:シディ・ブ・サイド

のんびり陽気なチュニジア人の気質と、きらめく地中海の夏を象徴する首都チュニス近郊の景勝地。といっても、古代は灯台が設置された要衝でした。

チュニジアのキーワード:ジェルバ島ワニ園

ジェルバはオデュッセウス上陸地、チュニジア国内最古のシナゴーグ、オスマン帝国と戦った戦場と歴史ある島。家族連れに人気なのは、ワニ園です。

チュニジアのキーワード:国際サハラ祭り

チュニジアのドゥーズの街で毎年12月に開かれる遊牧民の祭典。1910年に初開催されたラクダ祭りが、世界的イベントに成長しました。ラクダマラソンや合同結婚式が行われています。

チュニジアのキーワード:多年草エスパルト

北アフリカや南ヨーロッパに生えるイネ科の植物。高級紙や籠など、チュニジアの伝統手工芸品になります。猪狩りで有名なチュニジア西部カスリーヌ州で採れます。

チュニジアのキーワード:花飾りマクモウン

チュニジアの国の花ジャスミンを使ったいい香りがする小さなブーケ。街中で売っている人を見かけます。男性は耳にはさむのがチュニジア流。

チュニジアのキーワード:ハリッサソース

トウガラシやパプリカを使うチュニジアの伝統調味料。どんな料理にも使える家庭料理の万能選手です。癖になる旨みと辛さで、世界中にファンが増えました。

チュニジアのキーワード:映画 『皮膚を売った男』

チュニジア人監督ハニアさんの2020年の作品。シリア難民の主人公が、背中にビザのタトゥーを入れ悲壮な越境を試みます。古代フェニキア人つながりで、チュニジアは地中海東岸と縁があります。

チュニジアの著名人

チュニジアの著名人:初代大統領 ハビーブ・ブルギバ

独立・民族運動のため、宗主国フランスに何度も逮捕されました。チュニジアの国を率いると穏健な改革と外交を展開、一時は社会主義も実践しました。(1903〜2000)

チュニジアの著名人:映画女優 クラウディア・ カルディナーレ

フランス統治下チュニジア生まれ。美人コンテスト優勝後、イタリアで『若者のすべて』などの作品に出演。(1938〜)

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  海外 > アフリカ >

この記事に関連するタグ