ジョージアが守り続けたキリスト教
ギリシャ神話の英雄イアソンは、仲間たちアルゴノーツとともに金色の羊を求め旅立ちます。お宝のありかコルキスは、古代ジョージアに実在した国です。ギリシャ人がうらやむほど豊かな土地だったのでしょう。
ジョージアの歴史
コルキス王国に続いて、紀元前4世紀頃には内陸部でイベリア王国が勃興しました。4世紀には早くもキリスト教を国教と定めています。現在使われるジョージア文字が発明されたのも、イベリアの時代です。
中世には東ローマとペルシャの勢力争いの舞台となり、続いてアッバース朝イスラム帝国に征服されます。しかしイスラム教がこの国に根を下ろすことはありませんでした。11世紀初頭、バグラト3世が全土を統一し、ジョージア王国が成立します。「ジョージアの黄金期」とされる12〜13世紀のタマル女王時代には、芸術文化が花開きました。
その後はモンゴル帝国、サファヴィー朝ペルシャ、オスマン帝国などの支配を受けるものの、ジョージア南西部のアジャリアを除いてキリスト教徒が多数を占め続けました。19世紀には、ジョージアはロシア帝国の領土となります。
近年のジョージア
ジョージアはソ連崩壊後に独立を果たしますが、国内に少数民族の自治共和国を3つ抱えて民族対立に苦しみます。2008年には南オセチアとアブハジアの独立を支持するロシアと戦火を交えました。戦後、両地域にはロシア軍が駐留し、やがてジョージアはロシア読みの旧国名グルジアを捨てました。ジョージアはロシアとの経済的な結びつきは捨てなかったものの、情勢が不穏なことに変わりはありません。
ジョージアを知るキーワード
ジョージアのキーワード:格闘技大国ジョージア
古式武術チダオバで鍛えられた男たちが、柔道やレスリングで大活躍しています。ジョージア出身の力士・栃ノ心も幼少期は、チダオバに熱中しました。
ジョージアのキーワード:スターリンの故郷
ソ連の指導者スターリンは、ジョージア中部のゴリ出身。晩年までジョージア料理を好んでいました。郷土の英雄か独裁者か、その評価は今も論争の的。
ジョージアのキーワード:バグラティ大聖堂
11世紀、当時の首都クタイシに建てられた教会建築の傑作。一度は世界遺産に登録されましたが、修復をやりすぎたためにリストから抹消されています。
ジョージアのキーワード:古都ムツヘタ
紀元前3世紀〜紀元5世紀にイベリア王国の首都だった街。4世紀には、キリスト教を国教とする歴史的な宣言がここで発せられました。
ジョージアのキーワード:世界一深い洞窟
アブハジアにあるベロブキナ洞窟の深さは、2212m。人類が足を踏み入れた洞窟のなかで最も深く、その全貌はいまだ謎に包まれています。
ジョージアのキーワード:アジャリア自治共和国
イスラム教を信仰するアジャール人が多数を占める地域。首都バトゥーミはリゾート開発が進み、「黒海のラスベガス」と呼ばれています。
ジョージアのキーワード:南オセチアとアブハジア
ジョージア中部の南オセチアと西部のアブハジアは、それぞれオセット人、アブハズ人が多数を占める地域。1990年代前半の紛争以来、ロシアの影響下での「独立状態」です。
ジョージアのキーワード:仕切り屋タマダさん
ジョージアの宴会ではタマダと呼ばれる仕切り役が場を盛り上げ、乾杯の音頭をとります。タマダは飲んでも決して酔いつぶれてはいけないのです。
ジョージアのキーワード:ツボ熟成ワイン
八千年前からワインが造られていたジョージア。クヴェヴリと呼ばれるツボに果汁を注ぎ、土に埋めて発酵させるのが先祖伝来の製法です。
ジョージアのキーワード:シュクメルリ
鶏肉をガーリックソースで煮込んだ家庭料理。お好みでミルクを入れてもよし。ケッチという伝統的
な赤い土鍋で作るのが本場流です。
ジョージアのキーワード:百万本のバラ
死後評価された不遇の画家ピロスマニは、ジョージアの出身。一目惚れした女優のために広場をバラで埋め尽くしたといわれ、歌の題材になりました。
ジョージアの著名人
ジョージアの著名人歌手・作曲家:ケイティ・メルア
幼少期に内戦を避けてイギリスへ移住し、19歳で歌手デビュー。初のアルバムが全英で180万枚を売り上げ、瞬く間にセレブの仲間入りしました。(1984〜)
ジョージアの著名人・ソ連最後の外相:エドゥアルド・シュワルナゼ
ゴルバチョフが抜擢。祖国ジョージア独立後は大統領に就任するも、汚職に批判が集まりバラ革命で失脚しました。以後、親欧米政権ができました。(1928〜2014)
『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!
ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。
その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載
好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。
掲載している国・地域
イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア
【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)
福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。
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