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いつまでも進まないパレスチナの和平

パレスチナは、1948年の国境線のイスラエルとヨルダン川西岸地区と、ガザ地区を合わせた地域を指します。ところが西岸のラマッラーに存在するパレスチナ自治政府を指す場合もあり、混同させられます。

古代から続くパレスチナの土地をめぐる争い

歴史的に多くの人々が、パレスチナのこの土地を巡って争いました。古代ユダヤ人も先住ペリシテ人などを打ち破って王国を樹立しました。ユダヤ人の国も最後にはローマ帝国に滅ぼされます。

7世紀にイスラム教徒が征服し、住民のアラブ化が進みます。オスマン帝国の時代を経て、第一次世界大戦後にイギリスがパレスチナの支配者となりました。その撤退を受けて、1948年にユダヤ人がイスラエルの建国を宣言します。

反発したアラブ諸国の軍隊が侵入してきますが、イスラエルが勝利。その過程でパレスチナ全体の78パーセントを支配しました。残りのガザ地区をエジプトが、そしてヨルダン川西岸地区をヨルダンが押さえました。また一部のパレスチナ人は故郷に踏み止まりましたが、70万人以上が難民となり周辺に逃れました。さらに1967年の戦争で西岸とガザが、イスラエルに占領されます。

パレスチナはPLOによる暫定自治

難民の中から、パレスチナ解放を唱える武装組織ファタハなどが誕生します。こうしたパレスチナ人の民族運動を代表するのが、PLO(パレスチナ解放機構)です。1980年代には、占領地で投石などによる民衆蜂起「インティファーダ」が起こりました。その対策に苦慮したイスラエルが、和平を模索した背景です。

PLOも武闘から外交へと路線を変更しました。これが1993年のオスロ合意へとつながります。ファタハの主導するPLOは、限定的な自治を与えられました。その後、和平交渉は膠着。ガザではイスラム組織のハマスが、支配を確立しました。イスラエルは西岸へのユダヤ人の入植を進めています。聖地を巡る争いが続いているのです。

パレスチナを知るキーワード

パレスチナのキーワード:囲まれたA地区

パレスチナは3つに分かれています。A地区は、パレスチナ人が普通に暮らしています。B地区は、イスラエル警察に見張られています。C地区は、警察も行政もイスラエルに握られています。そしてA地区の外側をB地区とC地区が囲っています。

パレスチナのキーワード:岩のドーム

エルサレムの神殿の丘にある聖地。預言者ムハンマドが天に登る階段を登った所で、当初ムハンマドはエルサレムの方角を向き祈りました。

パレスチナのキーワード:分離壁アート

イスラエルが勝手に作った西岸地区を分断するための壁(国際法違反)は、西岸側では皮肉が効いたストリートアートのキャンバス。

パレスチナのキーワード:ガザ・ ゴールドマーケット

中世からあるとされる歴史あるガザの市場。金製品を作るための型は、トルコから輸入できます。加工機械の輸入をイスラエルが規制しているのが悩みの種です。

パレスチナのキーワード:カランディア検問所

ヨルダン川西岸からエルサレムに出入りする際に、パレスチナ人が通過させられる検問所。ひどい扱いで知られ殺傷事件も起きています。

パレスチナのキーワード:ジェニンの馬

2002年にイスラエル軍が、北部の街ジェニンに侵攻し難民キャンプを急襲しました。その跡地に小劇場と破壊された車で作った馬の像が建っています。

パレスチナのキーワード:パレスチナの農業(水不足)

パレスチナのあたりでは、昔はレモンを作っていました。しかしユダヤ人入植者が水を独占。アラブ農民(フェラヒン)は少ない水で作れるトマトに切り替えて対応しています。

パレスチナのキーワード:タイベビール

ラマッラー郊外にあります。オスロ合意で平和になると期待したキリスト教徒の創業者が、1994年に創設しました。毎年オクトーバーフェストを開催しています。

パレスチナのキーワード:伝統舞踏ダブケ

地中海の東部沿岸地方の伝統的なラインダンス。現在は結婚式で披露されることが多いです。華麗で素早い足運びをYouTubeで見てください。

パレスチナのキーワード:ヘブロングラス

ヘブロンは、旧約聖書に登場するアブラハム一族が住んだ街とされています。ローマ時代に発達したガラス工芸の技術が、現代も生き続けています。

パレスチナのキーワード:甘味クナーファ

薄く伸ばした生地にチーズやナッツやクリームを入れ、シロップをかけた中東定番のスイーツは、パレスチナ、ナブルスの街が本場とのこと。

パレスチナのキーワード:魚がうまいぜ

地中海沿岸だけあってニシンが獲れますが、イスラエルが海を封鎖しており、遠くの漁場に行けません。仕方なくイスラエルから輸入することも。

パレスチナの著名人

パレスチナの著名人:議長 ヤーセル・アラファト

ファタハを創設しゲリラ戦を開始、その後パレスチナ人を代表するPLO議長になりました。後に外交的解決に転じ、オスロ合意を結びます。(1929〜2004)

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また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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