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ベルベル人と呼ばないで

モロッコ北部と中部の山々、大西洋の浜辺、南部のサハラ砂漠といった自然が欧米人を惹きつけています。映画『カサブランカ』に憧れる旅人もいますが、四千年以上前から住む先住民ベルベル人は劇中に登場しません。

モロッコのベルベル人とは

古代ギリシャ語の「バルバロイ」に由来する「ベルベル」は、7世紀に来たアラブの征服者が付けた名で、先住民たちは自らを高貴や自由を意味する「アマジグ」と呼びます。ギリシャ人、フェニキア人、ローマ人と邂逅を重ねた彼らは、イスラムを受容し、11世紀にはムラービト朝が現在のスペインまで勢力を拡大しました。

やがてベルベル人の多くはアラブ化します。17世紀にはアラブ人主体のアラウィー朝が現れ、その統治は途中フランス(一部スペイン)による植民地支配を受けた時代に形骸化するも、現在まで続いています。この間に伝統的なベルベル人は山岳地帯と砂漠のオアシスに追われました。現代の人口比はアラブ人が65%、ベルベル人が30%ほどです。

モロッコの植民地時代から現代

モロッコがフランスの事実上の植民地となった時代は、1912年から1956年。この間に農業と工業の近代化が進み、古くからある町(メディナ)の周囲に近代都市が造営され、フランス式の近代国家の地盤が作られました。モロッコは独立後も元宗主国との関係は基本的に良好で、外交姿勢は親欧米、アラブ諸国とイスラエルの仲介役を担っています。

かつて列強と不平等条約を結び、フランスの保護国となる道を選んだのはアラウィー家のスルタンでした。しかし独立の原動力となり国民を鼓舞したのもまた、時のスルタン(後の初代モロッコ国王ムハンマド5世)です。アラブの春を経て幾分弱まったとはいえ、現代のモロッコにおいても国王の政治権力は強く、国王批判はイスラム教批判と同様に許されていません。

モロッコを知るキーワード

モロッコのキーワード:リフ山脈

青い建物が美しいシャウエンの街が有名ですが、アブド・エル・クリムが20世紀前半のひと時、ベルベル人国家のリフ共和国を作った場所です。

モロッコのキーワード:タンジェ

元スペイン領の北部の街。ムハンマド5世が演説を行い人々の独立心に火を付けた所。タンジェリン(みかん)の名前の由来でもあります。

モロッコのキーワード:タジン

素材の水分で蒸し焼きする、水資源が少ない土地で重宝される鍋。鶏肉や羊肉を、クミンや生姜やコリアンダーで味付けするのが定番です。

モロッコのキーワード:フェズのタンネリ (革なめし区)

革製品が欲しい客が迷路のような旧市街を通り到着すると、ミントの葉を渡されます。それは、鳩のフンを使った革なめし用薬剤の匂いが強烈だから。

モロッコのキーワード:リン鉱石

石油はありませんが、化学肥料の素となるリンならたくさんあります。モロッコの中部アトラス山脈の西にあるフリーブガでよく採れ、埋蔵量は世界屈指です。

モロッコのキーワード:アイット=ベン= ハドゥの集落

城塞都市建築「クサール」の代表格で、ハリウッド映画人に重宝されるモロッコの世界遺産。幹線道路「カスバ街道」があるので、交通の便はそこそこ。

モロッコのキーワード:地元民はあなたを見ている

おせっかいな国民性で、新顔を放っておけません。カフェでミントティーを飲む男たちに、若者や旅人は常に見張られており悪さができません。

モロッコのキーワード:民族衣装ジェラバ

男女とも着るゆったり外套のこと。女性はフードを被らずにヒジャブを被ったりしますが、ノーヒジャブの人も都市部の若者を中心に少なくありません。

モロッコのキーワード:フェネック

モロッコではアトラス山脈が斜めに走り、それ以南は砂漠です。イヌ科キツネ属のかわい子ちゃんが生息し、人は地獄のサハラマラソンを走ります。

モロッコのキーワード:西サハラ

スペインが去るとモロッコとモーリタニアが領有を主張し、大部分をモロッコが実効支配して今に至
ります。地元サハラウィー人は独立を訴え、ポリサリオ戦線が活動中。

モロッコのキーワード:辺境の街タルファヤ

英国が砦を築き、飛行士サンテグジュペリが働き、モロッコによる西サハラ占領活動「緑の行進」の起点になるなど数奇な運命の街です。

モロッコのキーワード:君の瞳に乾杯

名作映画『カサブランカ』の舞台は、ドイツに降伏したフランス政権がモロッコを統治した時代。亡命者や枢軸国に反抗する人々が押し寄せた港湾都市は現在、商業と金融の中心です。

モロッコの著名人

モロッコの著名人:映画俳優 ジャン・レノ

フランス支配時代のモロッコ、カサブランカ生まれ。両親はフランコ独裁を逃れたスペイン人。植物好きの殺し屋からドラえもんまで、仕事を選ばびません。(1948〜)

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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