トップ > カルチャー >  海外 > 中東 >

サウジアラビアの王、サウード家の履歴書

イスラム誕生の地は、16世紀以降オスマン帝国に支配されました。それから二百年が過ぎた18世紀、過去の栄光を取り戻すべく原点回帰を誓い、保守的で厳格なイスラム改革を志す男が内陸部ナジュド地方に現れます。名をワッハーブと言いました。

彼は流浪の末に同志となるサウード家と出会います。ワッハーブの教えを受けたサウード家は国取りに乗り出し、二度の建国と亡国を経て、第二次王国を追われた王子イブン・サウードが、現在のサウジにつながる国を1902年に建てます。

サウジアラビア建国の立役者イブン・サウード

イブン・サウードは砂漠の民兵集団イフワーンの力を借りながら、宿敵ラシード家とオスマン軍を破りました。さらに第一次大戦後にイギリスの後ろ盾で建国されたハーシム家(元メッカ太守で後にイラクとヨルダンの王を出す)の国を負かし、半島の大部分を統一しました。

建国後のサウジアラビアはアラブ連盟に加盟しつつ、民族自決を唱えたアメリカも頼り合弁石油会社サウジアラムコを立ち上げました。厳格なワッハーブ派の教えに親しんだイブン・サウードは、1953年に死去。晩年は物の氾濫と風俗の変化に困惑し、国の行末を心配していたといいます。

近年のサウジアラビア

後を継いだサウジアラビアの王らは石油を武器に、イスラエル問題ではアメリカと距離を置くも、湾岸戦争では米軍駐留を受け入れました。しかし米軍駐留を嫌う過激派が出現し、彼らはアメリカ同時多発テロを引き起こします。

2011年「アラブの春」の影響は少なかったサウジアラビア。2015年に、ムハンマド・ビン・サルマンが皇太子になりました。皇太子は、経済面では脱石油の改革を掲げています。しかし民主化の道筋は示していません。またイエメンへ軍事介入しました。さらにトルコでの批判的なジャーナリストの殺害の黒幕といわれています。今、注目の人です。

サウジアラビアを知るキーワード

サウジアラビアのキーワード:サウジアラムコ

サウジアラビア東部フフーフの街の近郊にある世界最大級の油田ガワールを管理運用するのは、時価総額世界トップクラスのサウジアラムコ社です。

サウジアラビアのキーワード:イフワーン

サウジアラビアの初代国王イブン・サウードが国を作る際に力を借りた、イスラム教ワッハーブ派を信じるベドウィンの軍勢。サウジアラビアの国内統一が終わると、邪魔になりサウード家が弾圧しました。

サウジアラビアのキーワード:ジッダ・タワー

紅海に面した商業都市ジッダで建設中の建物。完成すれば高さ1kmと世界一になりますが、工事がなかなか進みません。施工はビンラディン財閥です。

サウジアラビアのキーワード:消費税3倍

石油安を背景に5%で導入され、最近は15%に上がったサウジアラビアの消費税。市民は駆け込みで車を買ったらしいのですが、一番困るのは薄給の外国人労働者です。

サウジアラビアのキーワード:預言者のモスク

メディナにあるムハンマドが住んだ所にあるモスク。ムスリムしか入れません。近くのファストフード店は、当然ハラール対応で安心。

サウジアラビアのキーワード:ラスアルカイル水工場

サウジアラビアは川がありません。化石水(数千年の地層堆積で封じ込められた地下水)は有限なので、世界最大級の海水淡水化プラントを建設しました。

サウジアラビアのキーワード:センターピボット灌漑

サウジアラビアは砂漠の国ですが、北西部アル・ジャウフでは地下水を自動で円形にまく灌漑農業を実践しています。オリーブや麦や各種果物ができるようになりました。

サウジアラビアのキーワード:国民の祭典ジャナドリア

毎年、サウジアラビアで開催される祝祭で人気演目はラクダレース。競馬と違い、20km前後を走ります。イスラム教はギャンブルNGなので、賭けはできません。

サウジアラビアのキーワード:イフタール

ラマダンで日中の断食後に食べる最初の食事。家で豪華料理を囲んだり、有志が配給する食事をもらったりし、一緒に食べ連帯感を養います。

サウジアラビアのキーワード:国民食カブサ

シナモン、クミン、カルダモンを使うお祝いの席に欠かせない、肉乗せスパイス炊き込みご飯。床に座って手で食べるのが、サウジアラビアの伝統的な作法です。

サウジアラビアのキーワード:女性の運転解禁

戒律が厳しく2018年解禁。しかし親族女性を追跡できるアプリ「アブシャー」も普及しており、サウジアラビアの女性の権利拡大は道半ばの状況です。

サウジアラビアの著名人

サウジアラビアの著名人:元王妃・慈善家 アミーラ・アル・タウィール

サウード家から分家した非王家の出身で、アメリカの大学を卒業。ワリード王子と結婚の後、離婚しました。女性の運転解禁を訴えていました。(1983〜)

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』を購入するならこちら

リンク先での売上の一部が当サイトに還元される場合があります。
1 2

記事をシェア

※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。

まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!

エリア

トップ > カルチャー >  海外 > 中東 >

この記事に関連するタグ