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変わるイスラエルとアラブ

紀元前にユダヤ人王国が黄金期を迎えるも、やがてローマに攻められて滅び、2世紀以降に本格的な民族離散(ディアスポラ)が始まります。強い望郷の念は、旧約聖書にある「約束の地」への帰還として二千年にわたり語り継がれました。そして富を蓄えた19世紀後半に転機が訪れます。

シオニズムが盛んになり、イスラエルが誕生する

近代化の成熟過程にあった欧州では、自民族による主権国家を造る「ナショナリズム」が広がったのです。彼らは少数派のユダヤ人を迫害しました。するとユダヤ人の民族意識に火が付きます。富裕層はユダヤ人の「帰還」事業(農民としての入植)を支援し、同時期にユダヤ人国家建設運動「シオニズム」が登場します。

国家建設は第一次大戦でオスマン帝国が負け、この地の支配者が消えると一気に現実味を帯びます。シオニズムが声高に叫ばれ、欧州のユダヤ人の移住が加速しました。それが先住のアラブ人(パレスチナ人)との衝突を引き起こしました。オスマン帝国に代わりこの地を統治したイギリスは、衝突を抑えられず解決を国連に委ねます。国連はこの地をユダヤ人とアラブ人で二分する策を提案、そうして1948年にユダヤ人国家イスラエルが誕生しました。

イスラエル建国したと同時に中東戦争が勃発

当然アラブは反発し、イスラエル建国翌日に第一次中東戦争が勃発します。イスラエルが足並みがそろわないアラブを下します。その後両者は戦争をさらに3度繰り返すことになりました。イスラエルは1993年にパレスチナの暫定自治を認めるオスロ合意を締結しますが、溝は埋まらず今も和平が進んでいません。

この間にイスラエルはIT国家として世界を席巻するようになりました。アラブの一部の国は経済協力のため、またイランに備えるため、イスラエルとの関係を正常化させています。宿命の敵は、戦略とビジネスのパートナーとなるのでしょうか。

イスラエルを知るキーワード

イスラエルのキーワード:テルアビブ

イスラエルの経済の中心。ヤッファ港郊外にユダヤ人移民がテルアビブの街を造り、やがて2つが合体しました。市場やビーチが人気ですが、稀にテロが発生します。

イスラエルのキーワード:エルサレムにある嘆きの壁

ユダヤ王ヘロデが改築したエルサレム神殿を、反乱を鎮めに来たローマ軍が紀元70年に破壊しました。残った西壁がユダヤの聖地となりました。

イスラエルのキーワード:ネゲブ核研究所

1950年代にフランスの援助で造られました。平和利用のためとされますが、イスラエルが核兵器を保有しているのは公然の秘密です。

イスラエルのキーワード:点滴灌漑

イスラエルの先端農業企業が開発した、少量の水で作物を育てる仕組み。イスラエルのネゲブ砂漠でのブドウ栽培とワイン製造という奇跡を成し遂げました。

イスラエルのキーワード:ゴラン高原ワイン

第三次中東戦争以降、ゴラン高原を実効支配中。ここで入植者が生産するワインは、国際的な評価も高いです。さぞかし美味なことでしょう。

イスラエルのキーワード:ハイファの街、奇跡の夜

イスラエル北部ハイファは、旧ソ連から来たユダヤ人やアラブ人も一定数暮らし多様性が高いエリアです。12月には3宗教の記念日を一緒に祝うお祭りがあります。

イスラエルのキーワード:マカビア競技大会

4年に1度開かれる世界のユダヤ人選手が集うスポーツの祭典。初開催はイスラエル建国前のシオニズム運動が展開された1932年です。

イスラエルのキーワード:農業共同体キブツ

入植の過程で登場した社会主義的な農村。富を皆で共有し、平等に分配します。料理や子育ては共同で行います。現在も200以上存在し、世界中からボランティアが訪れています。

イスラエルのキーワード:ファラフェル・サンド

ファラフェルは豆を使ったコロッケのこと。中東一帯で食べられています。平べったいパンに挟む食べ方が、世界中で流行りかけました。

イスラエルのキーワード:ヌビアアイベックス

長さ40km、幅2〜10kmの巨大な窪地「ラモン・クレーター」で見ることができるヤギの仲間。一時は絶滅しかけたものの、回復してきました。

イスラエルのキーワード:エイラトでダイビング

イルカと泳げるエイラトは、イスラエルが唯一紅海と接している重要な港です。近年はパイプラインの建設計画とサンゴ保護の間で揺れています。

イスラエルの著名人

イスラエルの著名人:首相 イツハク・ラビン

軍出身でアラブに大勝した第三次中東戦争を指揮しました。首相になると穏健な姿勢を見せオスロ合意を結びますが、強硬派に暗殺されました。(1922〜1995)

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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