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トルコはイスラムと世俗主義の狭間にいる国

東洋と西洋の境界に位置し、「文明の十字路」と呼ばれるトルコ。トルコには古くからヒッタイト人、フリュギア人など数多の民族が現れては消えていきました。11世紀、中央アジアから来た遊牧民族オグズがセルジューク朝を建国。彼らの信仰はイスラム教スンナ派で、この時期にアナトリア半島のイスラム化が進みました。

トルコの中世の歴史

セルジューク朝は十字軍の攻撃で衰退し、13世紀にはモンゴル人がアナトリア半島まで襲来しトルコの大部分を支配します。民衆はイスラム神秘主義(スーフィズム)に救いを求め、そこからイスラム戦士集団(ガーズィー)がいくつも誕生しました。十字軍とモンゴル軍に痛めつけられたイスラムの復権機運が高まるなか、戦士集団から新興のオスマン朝が台頭。1453年には東ローマ帝国を滅亡させ、アジアとヨーロッパにまたがる大帝国となりました。

オスマン帝国はイスラム教国でしたが、ジズヤ(人頭税)を払えば異教徒も信仰の自由が認められました。皇帝直属の常備軍イェニチェリは、キリスト教徒の男子を徴用し、イスラム教に改宗させた精鋭部隊です。多宗教国家の強みを生かしたオスマン帝国は、16世紀に最盛期を迎えました。

新生・トルコ共和国の誕生

しかしその後は、西欧の進出に蝕まれていきました。崩壊の危機に瀕した帝国で1923年、軍司令官ケマル・アタチュルクが革命を起こしトルコ共和国を建国します。政治と宗教を分離する「世俗主義」の道を選びます。新生トルコは一夫多妻を禁止するなど宗教と距離を置き、旧体制の刷新と近代化を武器に国を発展させていききました。

それから百年後、地域大国となったトルコは、権威主義の匂いが強くなってきたエルドアン大統領の下で、イスラム教回帰の動きを見せています。世俗主義と宗教重視の両立は、可能なのでしょうか?

トルコを知るキーワード

トルコのキーワード:カッパドキア

噴火と風雨による侵食でできた奇岩群に、古代人や迫害された初期キリスト教徒が穴を掘って暮らしました。近年は、気球ツアーが大人気です。

トルコのキーワード:お酒が飲める

トルコでは、飲酒が法律で禁じられていません。水で割ると白く濁るブドウベースの蒸留酒「ラク」などを、メイハネと呼ばれる居酒屋などで楽しんでいます。

トルコのキーワード:ハマム風呂文化

古代ローマの公衆浴場の流れをくむというトルコのハマム。温かい大理石の上に寝て汗をかき、マッサージをしてもらいます。内風呂が普及して数が減りました。

トルコのキーワード:猫の国

預言者ムハンマドは猫を大切にしたとされ、イスラムの国は猫に優しい。トルコも地域猫を大切にしています。映画『猫が教えてくれたこと』も制作されました。

トルコのキーワード:スーフィの旋回舞踏

イスラム教の神秘主義「スーフィズム」の祈りの儀式です。回転で宇宙の理を体現し(トランスして)神を感じます。YouTubeで見ると意外とゆっくり。

トルコのキーワード:植毛大国

悩める男たちの最後の希望。隠れた一大産業で、高い技術と低い価格にひかれて、世界中の人がトルコへ集まっています。ヒゲ植毛を望むアラブ人も来ます。

トルコのキーワード:世界遺産アニ遺跡

トルコは10世紀頃、アルメニアの政治と宗教の中心でしたが戦乱と地震で荒廃。その千年後にトルコの世界遺産として登録された美しい廃墟です。

トルコのキーワード:クルド人

トルコ、イラク、イラン、シリアなどに住んでいます。トルコの人口も、4〜5人に1人はクルド系です。そのPKKという組織がトルコ政府軍と戦っています。

トルコのキーワード:青年トルコ人

19世紀末から20世紀の初頭に青年トルコ党を結成して、オスマン帝国の近代化を目指した志士たち。1908年に革命が成功し、後に政権を握りました。しかし第一次世界大戦の敗北と続くケマル・アタチュルクの活躍で、彼らは歴史の表舞台から消えました。

トルコのキーワード:キマイラの火

トルコ南西部ヤナルタスの山にある岩の間から、天然ガスが出て勝手に燃え続ける所。すでに何百年も燃えているらしい。パリピはここで記念撮影しています。

トルコのキーワード:鯖サンド

焼き鯖、オニオンスライス、レタスを挟んだイスタンブール名物。ガラタ橋の屋台で売っていたりします。通は有名店を避けるとのこと。

トルコの著名人

トルコの著名人:初代大統領、建国の父 ケマル・アタチュルク

現在はギリシア領になっている港町、テッサロニキ出身。帝国軍人として衰えたオスマンを支え、大戦後の戦乱を収めてトルコを建国しました。(1881〜1938)

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ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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