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イラクの歴史と好戦的な独裁者「サダム・フセイン」

イラクは、豊かな過去と現代の戦争に歴史が分断された国です。2本の大河が紀元前三千年頃には世界最初期の文明を育み、シュメールなど古代国家が誕生しました。続いてペルシャやギリシャやローマの一部となり、イラクは7世紀にイスラム支配下となります。イスラム教黄金期であるアッバース朝の頃には、バグダードが首都として栄えました。16世紀以降、イラクはオスマン帝国に組み込まれて数百年を過ごします。ここまでが豊かな過去です。

イラクは当初、イギリスが創った国?

オスマン帝国は、20世紀初頭の第一次世界大戦で西欧に敗れました。勝ったイギリスは、旧オスマン領のこの辺りに勝手に国境を引き、戦争の功労者だった元メッカ太守のハーシム家の三男坊ファイサルを王に据えてイラクを作ります(1921)。
勝手に引かれた国境線の中には、スンナ派アラブ人、シーア派アラブ人、クルド人、トルコ系、ルル族など、いくつもの民族が昔から住んでいたので、イラクはまとまるのが難しい多民族国家となったのです。

サダム・フセインが独裁者となり、イラクは戦争の道へ

世界的な民族運動の高まりを背景に、イラクは1932年にイギリス保護下から独立します。軍部のクーデターで王制が倒れたのです。そして1968年にアラブの栄光の復興を掲げるバアス党政権が誕生しました。その政権で秘密警察を押さえたサダム・フセインが独裁者となります。

サダム・フセインの指導下でイラクは3度の戦争を経験することになります。イラン・イラク戦争(1980)、イラクのクウェート侵攻に端を発する湾岸戦争(1991)、アメリカが中心となり侵攻してきたイラク戦争(2003)です。イラク戦争で政権は倒れ、国土は破壊され、サダム・フセインはアメリカに殺害されました。
アメリカの開戦理由である大量破壊兵器は、イラクにはありませんでした。サダム・フセイン亡き今、民主主義の下、強権体制抜きで、いかに多民族国家をまとめていくのか。イラク人は模索を続けています。

イラクを知るキーワード

イラクのキーワード:約十年刻みの動乱

サダム・フセイン大統領は、3度の戦争でイラクを崩壊へ導きました。戦場でカメラマンにピースする兵士の内心はどうだったのだろう。

イラクのキーワード:クルド人

自分の国を持たない世界最大級の少数民族。イラクには北部と北東部に多く住んでいます。イラクでは、イラク戦争後に事実上の自治を獲得しました。

イラクのキーワード:アルビル市

イラクのクルド人自治地域の中心都市。第2のドバイといわれるほど発展しました。巨大モールの前で記念撮影をすることが流行っています。

イラクのキーワード:シュメール人

五千年前にメソポタミアを発展させると突如消えた古代人。高度な灌漑技術を持ち、楔形文字を発明しました。オカルト好きは宇宙人と主張しています。

イラクのキーワード:聖地カルバラ

シーア派が崇めるフサインの廟があります。彼は4代カリフ・アリーの子。後継をめぐりウマイヤ朝と戦い負けて殺されるも、殉教者として歴史に名を刻みました。

イラクのキーワード:私設発電所

イラク戦争であらゆるインフラが壊されました。ない物は作るしかない。市民らは自家発電機を使った私設の発電所を作り、近隣に送電しています。

イラクのキーワード:バビロン国際祭り

イラク戦争後途絶えていた祭典が、2021年に復活しました。古代バビロンの遺跡がある開催都市ヒッラの人々は、これを復興の一里塚と喜びました。

イラクのキーワード:マーシュランド

イラク南部の湿地帯マーシュランドにいたマダン人は、葦の浮島に家を作りました。彼らは開発で陸に上がりましたが、建築技術は継承されているといいます。

イラクのキーワード:ルマイラ油田

イラク南東部にあるイラク最大級の油田。クウェート国境の近くなので、両国が原油の権利を主張し、イラクのクウェート侵攻の一因となりました。

イラクのキーワード:名物マスグーフ

チグリスとユーフラテスの鯉をグリルしたイラクの国民食。店先の焚き火を囲むように串刺しの鯉を並べ、豪快に焼くレストランがあります。

イラクの著名人

イラクの著名人独裁者:サダム・フセイン

イラクのティクリート生まれ。サダム・フセインは、入党後に若くして頭角を現します。ライバルを押しのけトップの座に就き、秘密警察を使った強権政治に走りました。(1937〜2006)

『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。

その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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