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正統カリフ3代目・4代目と芽吹いていたイスラム分裂

ウマルは彼に恨みを抱くペルシャ人奴隷に刺され、死の間際に評議会を任命し互選より次期カリフを選ぶよう命じました。選ばれたのがウマイヤ家のウスマーン(位644〜56)でした。彼は、当時各地で微妙に異なるバージョンで作られていたクルアーン(コーラン)を統一し、全土に道路・運河・モスクを数多く建設しました。

正統カリフ3代目・ウスマーン

すでにイスラム帝国は広大な版図を得ていましたが、ムハンマドから正統カリフ2代目・ウマルまでは征服によりメディナに入る金は原則的にウンマ内で分配されていました。正統カリフ3代目のウスマーンは増大する国家の支出を管理する常設機関を設置、ウマイヤ家の人々は政府の要職に就いて富を得ました。

ウスマーンは、なかでもシリア総督の座を得ていた同家の従兄弟ムアーウィヤを寵愛しました。広い領土からの租税収入は劇的に増加、カリフ自身は禁欲的な生活を送りましたが、イスラム統治は抑圧と腐敗の兆候を示し始めました。帝国は不満に満ち、改革派により正統カリフ3代目のウスマーンは撲殺されることになります。

正統カリフ4代目・アリ―

この殺害者らがカリフに推挙したのが、アリーです。アリーはムハンマドの娘ファーティマの婿で、彼こそがムハンマド没後すぐ指導者となるべきだと考える派閥がありました。

彼らは前3代のカリフの正統性を認めず、イスラムの少数派であるシーア派の母体となりました。やっとカリフに就任したアリーですが、ムアーウィヤは「ウスマーンの殺害者を逮捕し処罰せよ」と迫り抗争が勃発します。アリーは交渉による打開を図り、これを妥協と見て失望した「カリフの資質は血統や家系でなく当人の人格によってのみ決まる」と考えるハワーリジュ派により暗殺されました。

正統カリフ時代の領土拡大

正統カリフ時代の領土拡大を地図で把握する

正統カリフの系図

※拡大できます

●後継者はアラビア語でハリーファ。日本語ではカリフといわれます。ムハンマド死後にカリフとなったのはアブーバクル。次がウマルで、その次がウスマーン(オスマン)。そしてその次がアリーでした。この4人は正統カリフとして知られています。

●同族を重んじるアラブ社会でムハンマドのいとこであり、娘婿のアリーをムハンマド没後の後継者にする意見もあったようですが、アリーは当時若かったのです。アラブ社会には年長者を重んじる習慣もあり、年配で経験豊富なアブーバクルが後継者に選ばれた側面があります。

●この後継順をよしとするのがスンナ派。この順序ではなく指導者の地位は、預言者ムハンマドから直接アリーへと引き継がれるべきだったと考えるのがシーア派。シーア派は、指導者の地位はアリーの子孫たちに引き継がれるべきだと信じています。

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ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
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その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載

好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。

掲載している国・地域

イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア

【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)

福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。

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