目次
「三里塚闘争」の舞台となった三里塚周辺の環境:成田空港開港前
そもそも三里塚は下総台地上にあり、江戸時代には牧が設置されていた場所です。明治維新以降は宮内庁管轄の下総御料牧場が置かれていたように、基本的に農地にはあまり適していません。
戦後、政府は引き揚げ者を帰農させ、戦後の食糧危機に対応するために、未開墾地(=下総台地)の開放を行いました。かくして、三里塚周辺には、満蒙開拓団(まんもうかいたくだん)の引き揚げ者や、故郷を米軍に奪われた沖縄の人たちが入植することになりました。
「三里塚闘争」は成田空港開港への地域住民の激しい反対運動
国としては国有地(御料牧場)を活用できるし、三里塚住民からの土地買収は容易であると判断したのでしょう。しかし、三里塚住民からすれば、再び国の都合で土地を追われることになるのは、たまったものではありません。政府の強硬的な姿勢に反発した住民たちは、 建設反対を訴え、激しい抵抗運動を開始しました (三里塚闘争)。
三里塚闘争:成田空港開港へ向けて公団側と反対派の対立
公団側は、土地買収価格を引き上げるなど条件を緩和しながら折衝を繰り返し、1968(昭和43)年までには開発予定地のうち89%の民有地を確保しました。しかし、強硬な反対派は態度を軟化させず、やがて全学連や新左翼の過激派を巻き込み、公団側と反対派は対立を深めていきました。
三里塚闘争:成田空港開港のために払われた多大な犠牲
1971(昭和46)年には、千葉県は反対派が所有する土地に対して行政代執行を行使し、警察官3名が殉職する東峰(とうほう)十字路事件が起きてしまいます。このようにして、多大な犠牲を出しながら、土地収用は行われていったのです。
三里塚闘争を経て成田空港開港も不完全な状態
紆余曲折の末、成田空港の開港は1978(昭和53)年3月30日に予定されました。しかし、直前の3月26日に反対派を支援する左翼集団が実力行使に出て、管制塔を占拠(成田空港管制塔占拠事件)。
結果的に、開港は5月20日に延期。もともとの計画ではA、B、Cと3本の滑走路を建設する予定でしたが、A滑走路1本のみ、旅客ターミナルビルも1棟のみという、不完全な状態でのスタートとなりました。
三里塚闘争その後:成田空港の現在と今後
現在の成田空港はA滑走路とB滑走路の2本で運用していますが、訪日客は増加の一途をたどっており、近い将来に離発着数が限界を迎えるとのことで第3滑走路の新設が計画されています。しかし、羽田空港が拡張されたことから、羽田にシフトする航空会社も増えており、成田空港の先行きは不明瞭な時代を迎えています。
成田国際空港付近の今
鉄道の駅や線路を頼りにしてみれば、この地の激変ぶりがわかります。
昭和26年の空港建設予定地付近は、田んぼのほか針葉樹林・広葉樹林の地図記号ばかりでした。当時は畑は無記号だっため地図では確認できませんが、付近一帯は開拓された農地と原野が広がるような場所でした。
『千葉のトリセツ』好評発売中!
日本の各県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。本書では千葉県の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載!
●収録エリア:千葉県全域
【注目1】千葉の地質・地形を徹底分析
・市原市を流れる養老川河岸の露頭に約77万年前の地層チバニアン発見!
・恐竜時代の岩石がむき出しの見て楽しい銚子のジオ巡り
・火山がない県なのに鴨川に海底火山が流出?
・繰り返される巨大地震の爪痕・南房総に発達する海岸段丘
・鋸山の絶景をつくった「房州石」とはどんな石?
・・・などなど、千葉のダイナミックな自然の成り立ちを解説。
【注目2】古代から中世、江戸時代、近現代の千葉の歴史を一望
・ふたつの大型環状貝塚からなる巨大な加曾利貝塚の謎
・32基もの古墳がつくられた富津の内裏塚古墳群とは?
・鴨川市小湊がゆかりの地、高僧・日蓮の波乱に満ちた生涯
・坂東太郎の流れを変えた徳川家康の利根川東遷
・日本地図を完成させた佐原村の名主・伊能忠敬の素顔
・廃藩置県で26県もあった千葉県域をどうやって統一?
・・・などなど、千葉の歴史のポイントがわかる。
【注目3】千葉を駆け巡る鉄道網をはじめ、千葉で育まれた文化や産業を紹介
・民鉄最高速160キロでスカイライナーが走れる理由
・成田空港線の高架橋は成田新幹線の遺構だった
・登山鉄道も計画された小湊を目指した小湊鉄道
・かつて千葉市の中心駅は京成千葉駅だった!?
・・・などなど、千葉を走る鉄道網の秘密に迫る。
また、銚子港が水揚げ量日本一を誇る理由や明治期最先端の土木技術が光る海の要塞・第二海堡とは?、皐月賞や有馬記念の舞台として知られるJRA中山競馬場の誕生秘話・・・など、千葉県にまつわる文化・産業の面白話もたっぷりと紹介します。
『千葉のトリセツ』を購入するならこちら
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!