20世紀末から21世紀初頭にかけて、大きな問題が世界を揺さぶりました。自らの信じるイスラム教社会を、暴力を辞さずに実現しようとする「ジハード主義」の台頭です。

直接のきっかけは２００１年９月11日のアメリカ同時多発テロ。先述の通り、犯行グループはテロをジハードとしました。アメリカはテロの首謀者、過激派組織アル・カーイダのビン・ラーディンを匿っているとされたタリバン打倒のためアフガンに侵攻しました。同年12月にはタリバン政権を倒し、その後もアフガン民主化のため駐留しました。またアメリカは２００３年に大量破壊兵器を所持しているとの疑惑からイラクに侵攻、サダム・フセインを殺害し、やはり駐留を続けます。しかし両国に民主主義は根付かず、アフガンに至っては２０２１年の米軍撤退でタリバン政権が復活しています。

この間アメリカはアル・カーイダの拠点や幹部を何度も潰しました。しかしその度に代わりが登場し、組織は存在しました。２０１１年以降はアル・カーイダから分裂していた組織、イスラム国がシリアの内戦に乗じて台頭します。２０１４年頃にはシリアのなかでも大きな勢力となり、アジアなど世界中でイスラム国の活動が活発になったのです。

イスラム復興運動は、イスラム原理主義運動とも呼ばれます。特に1988年ソ連がアフガニスタンから撤退すると、当地に集まりソ連とジハード（聖戦）を戦ったアフガン帰還兵らは90年代以降、各地で過激なイスラム復興運動を担うようになりました。

なかでも自爆テロなどのテロや組織的軍事力の行使をも辞さず、ジハードにより真のイスラム国家建設を目指すジハード主義者らにはIS（イスラミック・ステート、イスラム国）やボコ・ハラムなどの組織があります。また９・11以降は組織と直接関わらず、個人が自発的にテロを行うローンウルフ型テロも増加しました。

ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。