中東の石油の歴史~中東の石油と欧米の関係~
人類が石油を用いた内燃機関を大規模に使い始めたのは、19世紀後半です。この臭い燃える水の活用に乗り出したのはアメリカとヨーロッパで、アメリカと現在のアゼルバイジャンで石油を盛んに掘って輸送し、重工業が発展する第二次産業革命の下地を作りました。
20世紀に入るとフォードが自動車の大量生産を始め、第一次世界大戦で内燃機関兵器の重要性が知られるようになります。この時点ですでに中東に石油があることに欧米が感づいており、1901年にはイギリス人投資家のダーシーが、イランでの石油開発権をイラン王から取得していました。以後も欧米が湾岸地域で、石油に関する権利を王族から安く譲り受ける動きが続きました。
20世紀の中東の石油は、各国の政権・軍事と複雑に絡み合う
1927年にはイラクでヨーロッパ企業が大油田を発見します。その7年後にはアメリカ企業の協力の下、サウジアラビアで巨大油田が発見されました。この時にサウジアラビア王は、アメリカに石油の権利を与え、その見返りとして政権維持のため軍事的な保護を受ける合意を結びました。合意は現在も継続中です。
1990年のイラクのクウェート侵攻は、両国にまたがる油田の問題が背景にありました。アメリカが2003年に始めたイラク戦争にも石油への野心が絡んでいたとの議論が流布しています。石油は中東をめぐる紛争の火種でもあるのです。
中東と世界の石油埋蔵量マップ
注…厳密には地中に天然の状態で埋蔵されているものが原油、それを精製したものが石油ですが、本稿では石油に統一しています。
『地図でスッと頭に入る中東&イスラム30の国と地域』好評発売中!
ヒット商品『地図でスッと頭に入る』海外シリーズの第4弾。宗教・民族対立、石油資源競争・・でつねに紛争の絶えない中東は、昔から日本人にとって遠い存在の地域であり続けた。しかしながら、日本がもっとも石油資源を依存している地域でもあり、われわれ日本人はこの地域に無関心ではいられないはずである。また、中東および中央アジア、北アフリカはイスラム教が最も普及しており、イスラム教なくしてこの地域を語ることはできないほどである。
本書は、これら中東・中央アジアの国々について、他の関連図書よりもわかりやすく解説する入門書となることを目指します。
その国や地域の概略がスッとわかる、1カ国ごとに見て楽しいイラストマップを掲載
好評を得た「地図でスッと頭に入るアメリカ50州」「同 ヨーロッパ47カ国」「同 アジア25の国と地域」に次ぐ第4弾。日本人にはなかなか馴染みのないその国について知っておきたい知識がスッと頭に入ります。この本を読んでおけば、日本にいる中東出身の人たちともコミュニケーションが盛り上がること間違いなし。
また、ヨーロッパ版では1カ国につき2ページの展開でしたが、今回の中東版では主要な国と地域についてはページを増やして、より詳しく紹介しています。
掲載している国・地域
イラン/イラク/トルコ/シリア/レバノン/イスラエル/パレスチナ(ヨルダン川西岸、ガザ地区)/サウジアラビア/クウェート/バーレーン/カタール/アラブ首長国連邦/オマーン/イエメン/エジプト/スーダン/リビア/チュニジア/アルジェリア/モロッコ/アフガニスタン/カザフスタン/ウズベキスタン/キルギスタン/タジキスタン/トルクメニスタン/アゼルバイジャン/ジョージア/アルメニア
【監修者】高橋和夫 (たかはし・かずお)
福岡県北九州市生まれ、大阪外国語大学外国語学部ペルシア語科卒、コロンビア大学国際関係論修士、クウェート大学客員研究員、放送大学教員などを経て2018年4月より一般社団法人先端技術安全保障研究所会長。主な著書に『アラブとイスラエル』(講談社1992年)、『イスラム国の野望』(幻冬舎、2015年)、『世界の中の日本』(放送大学教育振興会、2015年)、『中東から世界が崩れる』(NHK出版、2016年)、『現代の国際政治』(放送大学教育振興会、2018年)、『国際理解のために(改訂版)』(放送大学教育振興会、2019年)、『中東の政治』(放送大学教育振興会、2020年3月)、『最終決戦トランプVS民主主義―アメリカ大統領選挙撤退後も鍵を握るサンダース』(ワニブックス、2020年7月)など。
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