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空海の伝説には、空海の地質学の知識が伝説に影響した?
伝説の多くは温泉の知名度を高めるために弘法大師(空海)の名前を拝借したり、高野聖(こうやひじり)(修行のために各地を巡り歩いた真言宗の僧侶)が温泉を発見した際に、開祖である弘法大師(空海)を名乗ったと考えられます。語り継がれる中で伝説として弘法大師信仰と結び付いたものもあるでしょう。
ただ水にまつわる伝説が多いのは、空海の業績も関係しているのではないでしょうか。空海は唐で、密教以外にもさまざまな学問を習得して帰国しています。もし唐で最先端の地質学を習得していたとすれば、水脈に関する知識もあるはずです。水にまつわる伝説が多いのは、空海に地下水や温泉が湧きそうな場所を見極める知識があり、実際に清水や温泉を発見していたからかもしれません。
空海が関わる水や温泉の伝説を地図で見てみよう
弘法大師(空海)が、金剛杖や錫杖で地面を突いたところ、水が湧き出てきたなど水にまつわる伝説は全国各地に数多く存在しています。
空海の伝説エピソード
書道家・空海が唐で残した伝説
長安の宮中の壁面に書かれている王羲之(おうぎし)(書聖と呼ばれる東晋(とうしん)時代の能書家)の書は、長い歳月により一部が消えてしまっていました。しかし修復する者がいません。「空海という留学僧は書の達人らしい」という噂を聞いた皇帝は空海を宮中に呼び寄せて修復を命じました。空海は両手両足に筆を持ち、口にも筆をくわえると、5本の筆で5種類の書体を書き分け、即座に修復しました。皇帝は非常に驚き、空海に「五筆和尚(ごひつわじょう)」の称号を与えました…。 数多く残る空海伝説の一つです。
全国巡礼の伝説
唐から帰国後の空海の太宰府滞在期間は記録が少ないのですが、九州、山陽、四国などを巡礼して密教を広めていたという説があります。例えば大聖院(だいしょういん)(広島県廿日市市(はつかいちし))は806年、善通寺(ぜんつうじ)(香川県善通寺市)、最御崎寺(ほつみさきじ)・津照寺(しんしょうじ)・金剛頂寺(こんごうちょうじ)(いずれも高知県室戸市(むろとし))は807年空海開基と伝わる寺で、「空海の修行地」や「空海開基」は全国各地に点在しています。
さすがの空海も東北や関東に足を運ぶのは難しかったと思いますが、善通寺は空海の出生地のすぐ近くであり、室戸岬は空海が悟りを開いた場所です。滞在地に指定された筑紫国と、出生地である四国、その中継地点である山陽地方くらいであれば、実際に出向いていても自然に思えます。
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真言宗の開祖であり今も「お大師さま」として多くの人から信仰を集める空海。天才であるが故に数多くの挫折や苦悩を経験しながら、当時まだ新興勢力にすぎなかった密教をいかにしてこの世に広めたのか、そこには現代にも通じる社会を生き抜くための知恵が隠されています。本書は、謎の多い空海の生涯と思想をひも解きながら現代社会を生き抜くための行動の指針や考え方のヒントを紹介していくものです。
1.空海の行動から見る教え~空海の処世術~
・四国の地方豪族出身の真魚(空海)が貴族の子弟が通う大学に入学
・官吏を目指し勉学に励むも儒教に興味が持てず大学を退学、出家
・西日本の霊場で山岳修行に励み悟りを開いて「空海」になる
・苦悩の末、大日経と出会う
・朝廷が派遣する遣唐使使節団の一員として唐へ向かう
・30日以上の漂流の末、福州に漂着。約2400㎞の道のりを経て長安へ。
・密教習得に必要な梵語を学び、中国密教の中心的人物である恵果阿闍梨から密教の全てを伝授され後継者と認められる
・「日本で密教を広めよ」という恵果の遺言を果たすため日本へ早期帰国
・朝廷との約束を破って帰国したため上京の許可が下りず筑紫に滞在
・最澄の執り成しもあり809年に入京が叶う
2.空海の考え方から見る教え ~空海の交渉術~
・南都六宗と距離を置きたい桓武天皇と最澄の活動により、密教布教の基盤が固まる
・「書」という共通点を持つ橘逸勢との交流が嵯峨天皇と結びつく
・薬子の変で乱れた国家を平穏にするため鎮護国家の修法を行ない嵯峨天皇から信任を得る
・早良親王の怨霊を鎮めるために乙訓寺の別当となり高雄山寺で最澄に持明灌頂を授ける
・自分の都合で密教の教えを求める最澄を許せず経典の貸与を拒否。2人の関係が途絶える
・都から離れた紀伊山地に位置する高野山を真言密教の修禅道場として開創する
・唐で学んだ最先端の技術を駆使して故郷に貢献。築池別当として満濃池の修築工事を完遂する
・嵯峨天皇より東寺を賜り国立寺院だった東寺を密教の根本道場に再編する
・さまざまな学問を学べる庶民のための学校、綜藝種智院を設立する
・密教の基盤強化のために病を押して活動し弟子たちに具体的な指示を残して入定する
3.空海が完成させた密教とは ~密教の教え~
・鎮護国家思想の学問から現世利益の仏教へ。これまでの仏教と空海が持ち帰った密教の違い
・密教の最終目標はその身のまま仏になること。正しく三蜜加持を行なえば即身成仏できる
・両手を合わせて印を結び仏と一体化して真実の言葉である真言を唱え仏の加護を得る
・密教を経典や注釈書だけで理解するのは困難なため大宇宙の本質を仏の配置で表現した曼荼羅で把握する
・仏の区分は如来・菩薩・明王・天の4種類。それぞれの仏の違いと特徴を知る
・護摩行は密教の修法の一つ。大日如来の智慧の火で煩悩を焼き払う
4.弘法大師の教えを感じる場所 ~弘法大師信仰~
・最澄に遅れること55年、空海がとうとう弘法大師になる
・人智の及ばない出来事から人々を守る密教の教えと弘法大師・空海への感謝が、弘法大師信仰として定着
・修行のための巡礼路だった「四国辺路」が一般庶民の間に広がり「四国遍路」として定着する
・空海の足跡をたどりながら自分を見つめ直す。全長約1400㎞の四国八十八ケ所巡り
・四国遍路をしたいが四国まで行けない人のために全国各地で四国霊場を模した「地四国」が開かれる
・水にまつわる伝説が多い?全国各地に点在する弘法水伝説と開湯伝説
・「うどん県・香川」の産みの親は空海だった?空海が唐から持ち帰ったと伝わる食べ物
【監修者】吉田 正裕(よしだ しょうゆう)
広島県廿日市市出身、真言宗御室派大本山大聖院第77代座主。2008~2018年総本山仁和寺本山布教師。2018~2022年総本山仁和寺執行長、真言宗御室派宗務総長。宗教事業にかかわらず、宮島、広島の地域活動、文化活動などを幅広く行なっている。
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