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空海が大日経と出合ったのは夢のお告げがきっかけ

この時期空海は「こんなに探しているのに、道が見えない」という絶望を抱えながら、各寺を巡って仏典を集め、研究していたようです。さまざまな仏典を読んでも満足ができないという苦悩の中、「久米寺(くめでら)の東塔に、お前が求めている経典がある」という夢のお告げを受け、大日経を発見します。大日経の内容に感銘を受けた空海は、この時の喜びを「精誠感(せいせいかん)あって、この秘門(ひもん)を得たり(自分の真心が通じ、密教に会うことができた)」と『性霊集』で述べています。

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大日経を学びたい空海は、唐行きを考えるようになる

大日経は、大日如来(だいにちにょらい)が金剛薩埵(こんごうさった)の質問に答える形式で教えを説く密教の経典ですが、非常に難解であることから当時の僧侶は手をつけていませんでした。空海ですら「文(もん)に臨んで心昏うして(経典を読んでみたが、難しくて内容が理解できない)」と記しています。

一説によると空海が発見した大日経は2巻あり、1巻の大日経はなんとか理解できましたが2巻の大日経はどうしても分からなかったようです。そもそも密教経典がほとんどなく系統立てて教えてくれる師匠もいない日本では、大日経について理解することができません。そこで空海は 「大日経(密教)を教えてもらうために、唐に行きたい」と強く願うようになりました。

大日経が示す密教の本尊、大日如来について

如来とは悟りを獲得した仏のことで、密教では大日如来を本尊としています。密教の根本経典である『大日経(だいにちきょう)』と『金剛頂経(こんごうちょうぎょう)』は、大日如来は太陽の象徴であり、全ての諸尊は大日如来から出生したと解説しています。また大日如来は姿形を変え、さまざまな仏の姿になって人々を救い導くといいます。

大日如来が宇宙の真理そのもの

すでに悟りを開き煩悩から解放されている如来は宝石や装飾品などを身に着けておらず、衣1枚の姿で表現されることが多いです。しかし大日如来は宝冠をかぶり、首飾りや腕飾りを着けています。これは大日如来が宇宙の真理そのものであり、全ての仏を統一する最高の地位にあることを示すためです。装身具により大日如来の特別感や威厳を示しているのです。

『スッと頭に入る空海の教え』6月13日発売!

真言宗の開祖であり今も「お大師さま」として多くの人から信仰を集める空海。天才であるが故に数多くの挫折や苦悩を経験しながら、当時まだ新興勢力にすぎなかった密教をいかにしてこの世に広めたのか、そこには現代にも通じる社会を生き抜くための知恵が隠されています。本書は、謎の多い空海の生涯と思想をひも解きながら現代社会を生き抜くための行動の指針や考え方のヒントを紹介していくものです。

1.空海の行動から見る教え~空海の処世術~

・四国の地方豪族出身の真魚(空海)が貴族の子弟が通う大学に入学
・官吏を目指し勉学に励むも儒教に興味が持てず大学を退学、出家
・西日本の霊場で山岳修行に励み悟りを開いて「空海」になる
・苦悩の末、大日経と出会う
・朝廷が派遣する遣唐使使節団の一員として唐へ向かう
・30日以上の漂流の末、福州に漂着。約2400㎞の道のりを経て長安へ。
・密教習得に必要な梵語を学び、中国密教の中心的人物である恵果阿闍梨から密教の全てを伝授され後継者と認められる
・「日本で密教を広めよ」という恵果の遺言を果たすため日本へ早期帰国
・朝廷との約束を破って帰国したため上京の許可が下りず筑紫に滞在
・最澄の執り成しもあり809年に入京が叶う

2.空海の考え方から見る教え ~空海の交渉術~

・南都六宗と距離を置きたい桓武天皇と最澄の活動により、密教布教の基盤が固まる
・「書」という共通点を持つ橘逸勢との交流が嵯峨天皇と結びつく
・薬子の変で乱れた国家を平穏にするため鎮護国家の修法を行ない嵯峨天皇から信任を得る
・早良親王の怨霊を鎮めるために乙訓寺の別当となり高雄山寺で最澄に持明灌頂を授ける
・自分の都合で密教の教えを求める最澄を許せず経典の貸与を拒否。2人の関係が途絶える
・都から離れた紀伊山地に位置する高野山を真言密教の修禅道場として開創する
・唐で学んだ最先端の技術を駆使して故郷に貢献。築池別当として満濃池の修築工事を完遂する
・嵯峨天皇より東寺を賜り国立寺院だった東寺を密教の根本道場に再編する
・さまざまな学問を学べる庶民のための学校、綜藝種智院を設立する
・密教の基盤強化のために病を押して活動し弟子たちに具体的な指示を残して入定する

3.空海が完成させた密教とは ~密教の教え~

・鎮護国家思想の学問から現世利益の仏教へ。これまでの仏教と空海が持ち帰った密教の違い
・密教の最終目標はその身のまま仏になること。正しく三蜜加持を行なえば即身成仏できる
・両手を合わせて印を結び仏と一体化して真実の言葉である真言を唱え仏の加護を得る
・密教を経典や注釈書だけで理解するのは困難なため大宇宙の本質を仏の配置で表現した曼荼羅で把握する
・仏の区分は如来・菩薩・明王・天の4種類。それぞれの仏の違いと特徴を知る
・護摩行は密教の修法の一つ。大日如来の智慧の火で煩悩を焼き払う

4.弘法大師の教えを感じる場所 ~弘法大師信仰~

・最澄に遅れること55年、空海がとうとう弘法大師になる
・人智の及ばない出来事から人々を守る密教の教えと弘法大師・空海への感謝が、弘法大師信仰として定着
・修行のための巡礼路だった「四国辺路」が一般庶民の間に広がり「四国遍路」として定着する
・空海の足跡をたどりながら自分を見つめ直す。全長約1400㎞の四国八十八ケ所巡り
・四国遍路をしたいが四国まで行けない人のために全国各地で四国霊場を模した「地四国」が開かれる
・水にまつわる伝説が多い?全国各地に点在する弘法水伝説と開湯伝説
・「うどん県・香川」の産みの親は空海だった?空海が唐から持ち帰ったと伝わる食べ物

【監修者】吉田 正裕(よしだ しょうゆう)

広島県廿日市市出身、真言宗御室派大本山大聖院第77代座主。2008~2018年総本山仁和寺本山布教師。2018~2022年総本山仁和寺執行長、真言宗御室派宗務総長。宗教事業にかかわらず、宮島、広島の地域活動、文化活動などを幅広く行なっている。

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