船場のはじまりと商業都市としての歩み
そんな船場のはじまりは、戦国時代後期の1583年。大坂城の建築に伴い、豊臣秀吉が家臣の武具や生活必需品を購入するため、堺などの商人(あきんど)を移住させて城下町を整備しました。この40間(約80㎢)の町こそが、のちの船場となっていくのです。
江戸時代には、町の北側が年貢米などの集積地である中之島と接し、商業取引をするには最適だったこともあり、多数の問屋と商人が集まる商業都市として栄えていきました。
船場ことばが大阪弁のベースに
大坂の経済が発展していくにつれ、船場の街はさらに活況を帯びていきます。商人間で使われた「船場ことば」は大阪弁のベースとなりました。商家の女将(おかみ)を指す「ごりょんさん」、長女の「いとはん」、謝罪の「かんにん」、すべて船場言葉です。これらの多くは京の公家言葉が語源だとされますが、商いの街だからこそ上品な言葉が用いられたのでしょう。
また、船場の商家では、男の子が生まれるよりも女の子の誕生を喜んだといいます。その理由は、息子だと跡継ぎは選べないが、娘だと婿(むこ)を選ぶことができるからです。できの悪い実の息子よりも、優秀な婿を望むという実利的な考え方です。
船場の一時衰退から近代都市への飛躍
明治維新で船場は一時衰退しましたが、繊維産業を主軸とする工業化の推進で復興。「大大阪時代」と呼ばれる大正時代から昭和初期にかけての経済発展のさなか、繊維問屋を中心とするさまざまな企業が立ち並び、銀行や百貨店も軒を連ねる近代都市となりました。
このとき建てられた船場ビルディングや綿業会館などの施設は、今も当時のまま残されて います。
船場の明治時代
船場の中心部は現在の本町界隈にあたります。御堂筋はまだ拡張されておらず、碁盤の目のように「通」や「筋」が張りめぐらされていました。
船場に建つ綿業会館
1931年に完成した綿業会館。戦前は迎賓館として外交交渉などで使われていました。現在は国の重要文化財、近代化産業遺産として保存されています。
船場の戦後復興と現在
太平洋戦争後は市の資金難で都市再建計画から外されるという事態にもおちいりましたが、住人たちの自助努力で無事復興。1950年代には問屋数が数百を超える問屋街となりました。
1970年には、大阪市内を東西に走る中央大通の敷設で立ち退きになった問屋の移転先として「船場センタービル」が誕生。約800店舗が入る名所となっています。
中央大通りの中心、上には阪神高速が通る大阪市内のど真ん中を貫く船場センタービル
島之内(しまのうち)の由来と薬の町道修町(どしょうまち)
島之内は船場の南側から、道頓堀までの地域を指し、運河に囲まれた「島の内側」というのが地名の由来です。江戸初期に開発され、大坂有数の歓楽街が形成されていました。町の異称は「ミナミ」。つまり、ミナミは本来、島之内を指す名称であり、現在も東心斎橋や宗右衛門町、西心斎橋などの島之内エリアは、繁華街の中心です。
また、船場の中にある道修町は「薬の町」とも呼ばれ、江戸時代には124軒以上の薬店が並んでいました。現在も町には製薬会社が多数立ち並び、薬の神を祀る少彦名(すくなひこな)神社の神農祭(しんのうさい)は町の目玉になっています。
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