寺内町の面影を色濃く残す富田林
戦国時代になると、京都山科を追われた本願寺は大坂石山に拠点を移します。この石山本願寺(いしやまほんがんじ)周辺の八尾(やお)、久宝寺(きゅうほうじ)、枚方(ひらかた)などには一向宗寺院を中心とする町が築かれ、やがてどの大名にも属さない事実上の自治権を獲得しました。これが大阪における「寺内町」のはじまりです。
当時の面影を、今も色濃く残しているのが富田林(とんだばやし)です。1558年、一向宗の証秀(しょうしゅう)上人が興正寺(こうしょうじ)の別院を建立したことから富田林は寺内町となります。
段丘の地形に竹藪や石垣を組み合わせ、有事の際には防御陣地としても活用できたといいます。
富田林の寺内町だけは戦火を免れた
1570年、本願寺は織田信長と対立する勢力にくみして、石山合戦がはじまります。その結果、多くの寺内町は攻撃を受けたのですが、富田林だけは戦火を免れることができました。なぜなら、富田林は本願寺に味方せず、信長に恭順して存続を許されたからです。
大寺院が町を運営する一般的な寺内町とは異なり、富田林の自治を担っていたのは「八人衆」と呼ばれる地元の庄屋集団でした。寺院の力も強くはなく、本願寺の要請を無視することも比較的たやすかったのです。
その結果、市内の富田林町には寺内町の町並みが現存し、1997年には大阪府下で唯一の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。
寺内町を存続した貝塚と再編された富田林
戦闘には巻き込まれはしたものの、時代の動きに合わせることで存続できた寺内町もあります。石山合戦に巻き込まれた貝塚です。町は1580年に再建され、江戸時代に入っても寺内町として自治が認められたのです。
江戸幕府は寺内町を再編して自治権を奪い、富田林も商品生産地である「在郷町(ざいごうまち)」となりました。ですが貝塚は、江戸時代初期の本願寺の後継者争いで不介入を貫いたこと、紀伊徳川家が大坂へ移動する際に使う本陣が置かれたことなどから、再編対象から外されました。
こうして貝塚は、明治維新まで寺内町としての自治を保ち、現在でも江戸時代当時の建物が複数残されています。
富田林寺内町の町割
赤い丸付近が旧寺内町の範囲。織田信長より「寺内別条なき」との保証を受けた富田林には、 六筋八町の区画や辻角の「あてまげ」など、当時の面影が断片的に残されています。
寺内町は北摂にもう1つ残る
河内の富田林、泉州の貝塚と同じように高槻富田(現・高槻市富田町)も一向宗の寺内町でした。本願寺が1476年に室町幕府管領の細川家からこの地を譲られ、「富田道場」という寺院を建てたことから寺内町となりました。
1532年には細川家との対立で焼き討ちされますが、4年後に再建され、蓮如が親鸞の著作 を書き写したことから「教行寺(きょうぎょうじ)」という別名でも呼ばれていました。
富田道場は江戸時代の再編で自治権を失いますが、最盛期には430以上の屋敷が建つ地方有数の都市となっていました。
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