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「オードフランス」に流れるソンム川
オードフランスを流れるソンム川は、ベルギー国境付近の丘陵地わずか標高97mの地に発します。上流部では詩人ランボーが詠ったオアーズの流れと運河を通じて連絡し、高低差が少ないためピカルディー平野をゆったりと流れて土壌を肥やし、古都アミアンを左岸に眺めて後、イギリス海峡に注ぎます。
オードフランスのソンム川流域は、第一次世界大戦で西部戦線の主戦場となった場所です。多くのフランス人兵士が塹壕に身を隠して戦い、命を落としたのです。
オードフランスでの大戦の様子
1914年、短期のパリ陥落を目論むドイツ軍は中立国ベルギーを突破、マルヌで進撃を阻止された後、塹壕戦により戦線は膠着(こうちゃく)します。激戦地となったソンムでの戦いは二次にわたりました。
第一次は16年7〜11月。この間の死傷者は連合軍側でフランス軍19万5000人、イギリス軍42万人におよび、対するドイツ軍も65万人が死傷、連合軍は5か月もかけて約10kmしか進軍できませんでした。
第二次が18年3月、ドイツ軍が大攻勢に出て戦線を突破、ソンム川を渡りました。ドイツ軍は戦線から最深65kmまで侵攻しましたが阻止され、死傷者または捕虜として仏7万7000人、英16万3000人を失い、独死傷者は24万人を超えたといいます。
「オードフランス」の大きな犠牲と平和への歩み
140万人もの戦死者と都市の破壊を経て、18年11月11日オードフランス南西部パリ郊外にあるコンピエーニュの森で連合軍とドイツ軍との間に休戦条約が結ばれました。連合国側は大きな痛みを代償に勝利を得、この森は各国兵士らの犠牲と平和の象徴となりました。現在フランスで11月11日は第一次世界大戦休戦記念日の祝日であり、休戦100周年となる2018年同日には60か国以上の首脳がパリに集まり戦没者を追悼しました。
両大戦による破壊から復興、なかでも古くから先進農業地域であったピカルディ地方は医薬品・鉄鋼・化学などの一大工業地帯となり、オードフランス工業地帯の中心都市のひとつであるリールはデジタル産業の拠点ともなっています。
パリ五輪の会場となる「スタッド・ピエールモーロワ」は、リールの街の中心部から車で15分ほどの場所にあり、地元のサッカークラブ、リール・オランピク・スポーティング・クラブ(LOSC)の本拠地です。
「オードフランス」を知るキーワード
オードフランスのキーワード:アラス大聖堂
初代フランク王クローヴィスを改宗させた、聖ヴァーストの修道院が起源です。ナポレオンの時代に大聖堂となり、両大戦で被害を受けるが修復されました。
オードフランスのキーワード:シャルル・ド・ゴール
リール生まれの軍人、政治家。1958〜69年大統領。第二次世界大戦時フランスが降伏すると、ロンドン亡命政府から対独レジスタンスを呼びかけました。
オードフランスのキーワード:アミアン大聖堂
ピカルディ地方のアミアンにある、フランス最大の大聖堂。ゴシック様式寺院の最高峰と称されています。1981年世界遺産に登録。ちなみにアミアンはマクロン大統領の生地です。
オードフランスのキーワード:ショー原子力発電所
シャルルヴィル・メジエールにある原子力発電所。両基ともネット(総発電から所内使用電力を差し引いた電力量)電気出力が国内最大です。
オードフランスのキーワード:コンピエーニュの森
フランスで大戦といえば多くの犠牲を出した第一次大戦で、その休戦協定が結ばれた象徴的な場所。美しい庭園や追悼記念碑などがあります。
オードフランスのキーワード:ピエルフォン城
放置されていた廃城をナポレオンが買い取り、ナポレオン3世の時代に再建しました。ネオ・ゴシックの内部や彫刻類などを多くの観光客が楽しんでいます。
オードフランスのキーワード:シャンティイのディアヌ賞
シャンティイ城や城と見まがう大厩舎(現在は馬の博物館)のある同地で行われる、牝馬限定の競馬。女性らの華やかな帽子の競演でも有名です。
オードフランスのキーワード:Y(イ)村
フランス最短の地名かつ世界でもっとも短い名前の村のひとつ。ソンム県、アミアンの東にあるコミューンです。
オードフランスのキーワード:メールのゴーフル
リールにある1761年創業の菓子店メールの名物。薄いワッフル生地で、マダガスカル産バニラのクリームを挟んだものがいち押しです。
「オードフランス」の著名人
オードフランスの著名人詩人 アルチュール・ランボー
シャルルヴィル生まれ。パリ文壇に突如現れた夭折(ようせつ)の天才詩人。短い文学生活の後、アフリカ・アジアなど世界各地を遍歴しました。(1854〜1891)
オードフランスの著名人小説家・劇作家 アレクサンドル・デュマ
オードフランスのピレル・コトレ生まれ。大デュマ(デュマ・ペール(父))とも。小説『三銃士』『モンテ・クリスト伯』が大売れしました。(1802〜1870)
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コンテンツ
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第1章 パリ
第2章 イル・ド・フランス
第3章 フランス北東
第4章 フランス北西
第5章 フランス南東・コルス島
第6章 フランス南西
【監修者】Julie Blanchin Fujita (ジュリ・ブランシャン・フジタ)
1979年、シャラント県生まれ。2004年にストラスブールの国立美術学校(École supérieure des arts décoratifs de Strasbourg)を卒業。翌年からイラストレーターとして活動。
アマゾンを中心にポリネシア、オーストラリアなどを訪れ、現地の日常生活を描く。2008年に南極圏へ向かう取材の途中で東京に短期滞在し、翌年から日本での生活を始める。
2017年に日本の日常生活を綴った『J’aime le nattō(納豆が好き)』を、フランスの出版社Hikari Éditionsから出版しベストセラーに。子ども用ミニ絵本シリーズ『mon imagier japonais』[動物、もの、食べ物編など]を出版しているほか、2015年からNHK出版の「まいにちフランス語」にイラストの連載もしている。2児の母。
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※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
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