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「ペイ・ド・ラ・ロワール」は、多様な景観に恵まれた地域

「ペイ・ド・ラ・ロワール」は、サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏の西側にあり、ロワール渓谷や大西洋沿岸地域などの自然と歴史遺産に恵まれた地域圏です。

地域圏の首府が、ロワール川下流域の中心都市ナントです。河口に近い西フランス最大の都市で、外洋船の停泊も可能な港町。18世紀には、西インド諸島および西アフリカとの黒人奴隷や砂糖の交易による三角貿易の基地となり、フランスの貿易を支えました。歴史的には、ユグノー戦争を終結させた「ナントの勅令」の地としても知られています。

2024年パリ五輪でサッカーの競技会場となったスタッド・ドゥ・ラ・ボージョワールは、ナントの中心部から電車で30分ちょっとの距離です。ナントのサッカークラブチーム「FCナント」のホームスタジアムで、1998年のFIFAワールドカップや2007年のラグビーワールドカップが行われたスタジアムです。

ナント周辺の都市アンジェとル・マン

ナントの東に位置し、ロワール川の支流メーヌ川に臨むアンジェは、周辺のロワール川流域に点在するロワール古城巡りの西の玄関口です。中世城塞の代表として知られるアンジェ城やブリサック城、モンソロー城、ソミュール城など、有名な古城も多く残っています。

その北東にあるル・マンは、24時間レースで知られています。自動車製造・電子機器工業で栄え、ナント周辺とあわせて大きな工業地域となっています。ロワール河口域より南のヴァンデ県は250kmにおよぶ海岸線を持ち、レ・サーブル=ドロンヌなど、美しいビーチが多いリゾートとして有名です。

「ペイ・ド・ラ・ロワール」で興った、アンジュー帝国の興廃

ロワール渓谷、ブドウ畑、ビーチリゾートなど、のどかな風景が広がる地域ですが、中世には「アンジュー帝国」とも呼ばれる広大な領地を持つ勢力の拠点となりました。

12世紀にアンジュー伯の父ジョフロアからアンジュー家を継いだアンリは、アンジュー伯領とノルマンディー公領を受け継ぎ、さらにアキテーヌ女公アリエノールと結婚して、フランス南西部のアキテーヌ公領を取得しました。さらに、アンリは元イングランド国王ヘンリー1世の孫であることから1154年にはイギリス王位も継承し、ヘンリー2世としてプランタジネット朝を創始しました。

英仏にまたがる広大な領地は、当時のフランス王の直轄領をはるかに凌ぐものでした。フランス王は大陸におけるイギリス領の奪還を目指して長く対立し、百年戦争によってフランス領を回復。プランタジネット朝は衰退し、アンジュー帝国も消滅したのです。

「ペイ・ド・ラ・ロワール」を知るキーワード

ペイドラロワールのキーワード:ロワール渓谷

ペイドラロワールのキーワード:ロワール渓谷

2つの地域圏にまたがるロワール川の800㎞にわたる流域にある21の城館が世界遺産に登録され、多くの観光客を集めています。

ペイドラロワールのキーワード:アンジェ城

ペイドラロワールのキーワード:アンジェ城

メーヌ川を見下ろす巨大な要塞。17の塔と600mにおよぶ城壁に囲まれ、中世の傑作「ヨハネの黙示録のタペストリー」が見られます。

ペイドラロワールのキーワード:馬術学校 カドルノワール

ソミュールにはルイ15世が創立した国立馬術学校があり、「カドルノワール」と呼ばれる教授団は、華麗な馬術ショーを披露しています。

ペイドラロワールのキーワード:ル・マンの旧市街

ペイドラロワールのキーワード:ル・マンの旧市街

サン=ジュリアン大聖堂がある旧市街は、古代、中世からの歴史遺産が残り、フランスでも指折りの美しさです。

ペイドラロワールのキーワード:サント・スザンヌ城

ペイドラロワールのキーワード:サント・スザンヌ城
123RF

メーヌの真珠と称される、中世の雰囲気を残した美しい村。エルヴ川流域の高さ70mにもおよぶ絶壁の上に、サント・スザンヌ城や旧市街が佇んでいます。

ペイドラロワールのキーワード:レ・マシーン・ド・リル

ジュール・ヴェルヌの空想世界とレオナルド・ダ・ヴィンチのメカニカルな世界が交差したような、ナントにある人気のアミューズメントパークです。

ペイドラロワールのキーワード:ゲランドの塩

ペイドラロワールのキーワード:ゲランドの塩

ナント近郊のゲランドの塩田で、伝統的な製法で作られる世界的に有名な天日塩。奥行きのあるまろやかな味わいが特徴です。

ペイドラロワールのキーワード:リュのビスケット 「プチ・ブール」

老舗のお菓子ブランド「LU」は、ナント発祥です。19世紀末に誕生したプチ・ブールは、フランスで知らない人がいないくらいの定番商品です。

ペイドラロワールのキーワード:ブール・ブラン

エシャロット入りの濃厚なバターソース。古典的なフランス料理の定番ソースで、淡泊な白身魚との相性が抜群です。

「ペイ・ド・ラ・ロワール」の著名人

ペイドラロワールの著名人:ファッションデザイナー ココ・シャネル

「シャネル」の創業者。ソミュール生まれ。スタートは帽子店で、今ではあたりまえの女性のパンツスタイルも彼女が広めました。(1883〜1971)

ペイドラロワールの著名人:素朴派の画家 アンリ・ルソー

『眠るジプシー女』『蛇使いの女』などで知られる素朴派の画家。ラヴァル生まれ。代表作のほとんどは50代以降のものです。(1844〜1910)

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コンテンツ

巻頭特集『フランスの魅力再発見!』
第1章 パリ
第2章 イル・ド・フランス
第3章 フランス北東
第4章 フランス北西
第5章 フランス南東・コルス島
第6章 フランス南西

【監修者】Julie Blanchin Fujita (ジュリ・ブランシャン・フジタ)

1979年、シャラント県生まれ。2004年にストラスブールの国立美術学校(École supérieure des arts décoratifs de Strasbourg)を卒業。翌年からイラストレーターとして活動。
アマゾンを中心にポリネシア、オーストラリアなどを訪れ、現地の日常生活を描く。2008年に南極圏へ向かう取材の途中で東京に短期滞在し、翌年から日本での生活を始める。
2017年に日本の日常生活を綴った『J’aime le nattō(納豆が好き)』を、フランスの出版社Hikari Éditionsから出版しベストセラーに。子ども用ミニ絵本シリーズ『mon imagier japonais』[動物、もの、食べ物編など]を出版しているほか、2015年からNHK出版の「まいにちフランス語」にイラストの連載もしている。2児の母。

公式サイトはこちら

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