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パリ五輪会場「エッフェル塔」は、解体の危機を免れた強運の鉄塔

眼下で反対意見が渦巻くなか、未曾有の高さとなる建造物は、別の場所で製作したパーツを現地で接続して組み立てる工法を採ったことで、当時としては驚異的な短期間で竣工します。着工が1887年1月28日で、完成は1889年3月31日。建設期間2年2か月と、異例のスピードで工事は進みました。

そして、開催された万国博覧会において、エッフェル塔は会期中に約200万人が入場するという大成功を収めたのです。入場者のなかには、万博に多数出品した発明王トーマス・エジソン、女優のサラ・ベルナール、イギリス王太子らがいたといいます。

万博が終わったエッフェル塔は

万博では話題となったエッフェル塔も、徐々に入場者数が減少していきました。しかも、完成から20年後の1909年には取り壊しが決まっていました。

しかし、エッフェル自身の努力もあり、軍事用無線電波の送信に活用できることがわかると、1904年にはその実験用の拠点となります。さらに、1908年にはラジオ用発信器が設置され、初期のラジオ放送における巨大アンテナという新たな役割が与えられました。完成当時のエッフェル塔の高さは300m(旗を合わせて312m)でしたが、放送用のアンテナが加わった現在では324mになっています。

「エッフェル塔」は、世界的に知られるパリの象徴

「エッフェル塔」は、世界的に知られるパリの象徴

当初は芸術家たちに忌み嫌われたエッフェル塔でしたが、次第にパリの景観に溶け込んでいき、その姿に心惹かれる者も現れ始めます。画家のジョルジュ・スーラや詩人のギョーム・アポリネールといった芸術家たちが自身の作品の題材として取り上げたほか、エッフェル塔完成の年に生まれた詩人ジャン・コクトーは「レースでできた美しいキリン」と、独自の言葉で塔の魅力を表現しました。芸術家に「醜悪」と貶められた建造物が、やはり芸術家によって、正反対となる賛辞を贈られる結果になるとは、皮肉以外の何物でもありません。

エッフェル塔を題材とした文学や絵画作品がその数を増やすにつれ、エッフェル塔は「パリの象徴」として重宝される存在となりました。1964年には歴史的建造物に認定され、形状の保全が義務づけられることになります。さらに1980年、エッフェル塔は公社となり、パリ市の一部となりました。そして今や、年間700万人近くが訪れる世界有数の観光資源となったのです。

「エッフェル塔」のお隣「アンヴァリッド」に眠るナポレオン

エッフェル塔と同じパリ7区にある、もうひとつの歴史的建造物で人気観光地がアンヴァリッド

ここはフランス傷痍軍人のための療養所として設けられたもので、黄金のドーム(礼拝堂)で有名です。そして、アンヴァリッドは、皇帝ナポレオンの墓所としても知られています。ナポレオンはアンヴァリッドに多額の予算を与えており、1840年にナポレオンの亡骸がセント・ヘレナ島から運ばれてくると、ドーム教会に置かれて壮大な墓が造られました。

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【監修者】Julie Blanchin Fujita (ジュリ・ブランシャン・フジタ)

1979年、シャラント県生まれ。2004年にストラスブールの国立美術学校(École supérieure des arts décoratifs de Strasbourg)を卒業。翌年からイラストレーターとして活動。
アマゾンを中心にポリネシア、オーストラリアなどを訪れ、現地の日常生活を描く。2008年に南極圏へ向かう取材の途中で東京に短期滞在し、翌年から日本での生活を始める。
2017年に日本の日常生活を綴った『J’aime le nattō(納豆が好き)』を、フランスの出版社Hikari Éditionsから出版しベストセラーに。子ども用ミニ絵本シリーズ『mon imagier japonais』[動物、もの、食べ物編など]を出版しているほか、2015年からNHK出版の「まいにちフランス語」にイラストの連載もしている。2児の母。

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