アイダホ州の政治
アイダホ州の選挙人の数は、4人です。アイダホ州は、共和党の牙城。民主党の候補者が選ばれたのは1952年の1度だけ。2016年は、アイダホ州のほぼ全ての郡がトランプ共和党を支持しています。
アイダホ州は、ポテトと共に近代化した州
アイダホ州に最初に来た開拓者は、初期の毛皮商人や宣教師たちです。アイダホ州に本格的にまとまった人数が入ったのは、1860年代初頭にアイダホゴールドラッシュが起きてからのこと。1865年の南北戦争終結後には、連邦政府の政治に不満を持った南部の人々がアイダホ州に一定数入植しました。
ゴールドラッシュはほどなく終息しますが、1870年代にアイダホ州北部のシルバーバレーで銀が発見されてアイダホ州経済を支えました。鉱業は現在も重要で、ガーネット、トパーズなど72種の宝石が採掘されています。
芋少なきアイダホ開拓時代を経て、アイダホポテト伝説へ
アイダホ州に最初に来たポテトは、初期の開拓者が持ってきたものでした。しかし彼らは、インディアンの白人虐殺事件で足取りが途絶えます。次にユタ州から来たモルモン教徒が、アイダホ州にポテトをもたらしました。
ポテトはゴールドラッシュの盛り上がりとともに栽培されましたが、大規模栽培は、ポテト王と呼ばれる男と、ポテト帝王と呼ばれる男によってなされました。王の名はジョー・マーシャル。彼は栽培、収穫、貯蔵、販売、運送を研究しました。しかし、いかんせん帝王の派手さの前には影が薄れます。
アイダホ州のポテト帝王がやったこと
帝王の名はJ・R・シンプロット。彼は10代前半に学校を辞めてポテト栽培に乗り出し、買い付け、販売、加工までを手掛けました。その後1940年に冷凍玉ネギ、冷凍ポテト工場を作ると、第二次世界大戦中の米軍の食料として大ヒット。1946年からは世界初のフライドポテトの冷凍工場を作り、これがマクドナルドで採用されて莫大な富を築きました。
さらに帝王は、1980年に半導体メモリ企業に融資を決定。この企業は現在もDRAMを製造する国際企業マイクロン社で、本社をアイダホ州の州都に置いています。マイクロンのDRAMはコモドール社が発売したホームコンピュター「コモドール64」に使われました。同製品は世界中で販売され、ユーザーの中から多くの技術者やゲーム開発者が生まれたとされます。
つまりアイダホ州からすれば、ポテトこそパソコンとゲームの母なのです。
アイダホ州を知るキーワード
アイダホ州のキーワード:ボイシ
アイダホポテトと冷凍フライドポテトを世に知らしめた、J.R.シンプロット社の本社があります。同社社長が投資したDRAMの世界的メーカー、マイクロン社の本社もここ。
アイダホ州のキーワード:アイダホシティ
ゴールドラッシュでできた鉱山の町。近郊で2億5000万ドル相当の貴金属が採掘されて、急発展しました。でも今は半分ゴーストタウン。
アイダホ州のキーワード:アイダホポテト博物館
巨大ベークドボテトが目印。意外と展示が丁寧で、ここに行けばアイダホ州のアイダホポテトの全てがわかります。併設のカフェメニューは、案の定芋祭り。
アイダホ州のキーワード:ネズ・パース保留地
馬による交易や遠征など、時代に合わせて生活を変える柔軟なネズ・パース族の一部が暮らしています。1877年の戦争では、政府軍と5か月に及ぶ死闘を繰り広げました。
アイダホ州のキーワード:マイ・プライベート・アイダホ
リバー・フェニックスとキアヌ・リーブスが共演した、無情なロードムービー。アイダホ州は、リバー・フェニックスが演じるマイクの故郷。
マイ・プライベート・アイダホシルバーバレー
長さ64キロの狭谷。銀、銅、タングステンなどが採掘される世界で最も豊かな鉱山。しかし希少価値の高いスターガーネットは、採れません。
マイ・プライベート・アイダホじゃがナッツ
スパッド(spud)はポテトの俗称。芋を使ったドーナッツをスパドナッツといい、これを売る商店の店内には個性的なマスコットの絵が飾られました。
マイ・プライベート・アイダホサンバレー
ユニオンパシフィック鉄道が開発した、アメリカ初のスキーリゾート。作家のヘミングウェイは、この地での創作活動を好んだといいます。
マイ・プライベート・アイダホヘルズキャニオン
アイダホ州とオレゴンとの州境にある、全米で最も深い渓谷。最深部は2400メートルを超えます。名前に反し、カヤックなどのアクティビティを満喫できます。
マイ・プライベート・アイダホロッキー山脈
アイダホ州の北東部に沿って鎮座しています。ロッキーの西の麓にアイダホ州があるともいえます。山麓はいくつもの森林公園が広がるエリアです。
マイ・プライベート・アイダホイエローストーン国立公園
巨大間欠泉で知られるこの公園は、ワイオミングにあると思われがち。その通りなのですが、範囲の一部はアイダホ州にかかっていたりします。
『地図でスッと頭に入るアメリカ50州』好評発売中!
“合衆国”というように50州からなるアメリカは、それぞれが独自の州憲法、政府組織を持ち、強い個性を放つ、いわばモザイク国家。それだけにアメリカの素顔は日本人にはなかなかわかりにくいもの。アメリカを知るには俯瞰的に眺めるのではなくそれぞれの州について知らないと、国の姿が見えてこないのです。本書では、それぞれの歴史や特徴を豊富なイラストとともに紹介。
さらには、日本でも毎回大きく報じられる4年ごとの大統領選挙について、各州のページで選挙人の数と民主党と共和党どちらが優勢であるか(2020年7月時点)を説明し、巻末には、大統領選挙のしくみ解説や歴代大統領のデータなども掲載。大統領選への理解も深まります。
【見どころ―目次より抜粋】
1章 北東部
■各州紹介
■<歴史解説>自由と仕事を求めた移民たちが、多民族国家アメリカを形成していった。
■<歴史解説>アメリカの根底にあるゴーウエスト思考、東海岸から始まった領土拡大の歴史。
■<コラム>4大プロスポーツのチームがない州
2章 南部
■各州紹介
■<歴史解説>南北戦争とリコンストラクション 敗北した南部州は深い傷を負った
■<歴史解説>人種差別を跳ね返した公民権運動 キング牧師の夢が叶う日はいつ
■<コラム>地下鉄道
3章 中西部
■各州紹介
■<歴史解説>アメリカ2大政党、民主党と共和党はいかにして今日の姿になったのか
■<コラム>アメリカの地勢
4章 西部
■各州紹介
■<歴史解説>銃による犯罪、学校や公共施設での銃乱射事件が止まらない。それでも銃規制が進まない理由。
■Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)
巻末資料
■<大統領選挙しくみ解説>民意がストレートに反映される国政、一年かけて国民が自らのリーダーを選ぶ
■歴代大統領
■人口ランキング
■面積ランキング
■銃規制(拳銃の公然携行の可否)/同性婚
■死刑の存続と廃止/消費税率(セールス・タックス)
【監修者】デイビッド・セイン
アメリカ生まれ。証券会社勤務を経て来日。30年以上にわたり翻訳や英語指導に従事、自身が代表を務めるAtoZ 英語学校で教鞭をとるかたわら、英語学習執筆、教材プロデュース、Webコンテンツ制作、動画制作と幅広く英語教育事業に関わる。NHKレギュラー出演ほか、日経・朝日・毎日新聞などにも連載。主な著作に『1日15分18日で英語の達人に 魔法の英語脳トレ』(InteLingo)などがあり、現在まで累計400万部を超える著書を刊行。
『地図でスッと頭に入るアメリカ50州』を購入するならこちら
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!