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メリーランド州の政治
メリーランド州の選挙人の数は、10人です。圧倒的に民主党が強いメリーランド州。メリーランド州議会も民主党が多数です。トランプ大統領がしきりに非難するボルチモアは、民主党の拠点なのです。
メリーランド州は、アメリカの国歌が生まれた州
アメリカ国歌『星条旗』の歌詞は、戦時中のメリーランド州で生まれました。
時は1812年、イギリスとの開戦を望む機運が高まり米英戦争が勃発します。戦争特需での工業発展により経済の自立が果たされ、後に第二次独立戦争と呼ばれるようになったこの戦争で、ボルチモアの砦が攻撃されました。
イギリス軍の猛攻は25時間に及びましたがアメリカ軍は持ち堪え、翌朝になっても砦には星条旗がはためいていました。この光景が現在の国歌になったのです。
メリーランド州は、イギリスでの迫害を逃れようとしたカトリックが1634年に開拓した土地です。初期は信仰の自由とともに、インディアンとの共存を目指し、戦いを好みませんでした。不戦の州での戦闘が国歌になったのは、歴史の悪戯です。
首都に食い込まれるメリーランド州
国歌だけでなく、メリーランド州は国の中心になることに縁があるようです。1784年にアメリカ独立を認めたパリ条約は、アナポリスの議事堂で批准されました。この議事堂は当時の国会議事堂で、つまりアナポリスは実質的な首都だったのです。
現在の合衆国首都はワシントンDCですが、その場所は地図を見ればよくわかるように、メリーランド州に食い込んでいます。DCに隣接する地域は高級官僚のベッドタウンで、ハイテク産業もあり、メリーランド州の州民所得は全米上位。
一方で海あり、山ありと自然がたっぷり。歴史、地勢、都市、田舎とあらゆるアメリカらしさがあり「アメリカのミニチュア」とも呼ばれる州が、メリーランド州なのです。
メリーランド州を知るキーワード
メリーランド州のキーワード:マクヘンリー要塞
1812年の米英戦争の激闘を耐えた、メリーランド州ボルチモアの海に面した堅固な要塞。アメリカ国歌の歌詞の舞台で、今は海風が心地よい観光地です。
メリーランド州のキーワード:ボルチモア・ オリオールズ
メリーランド州第一の都市で、古い港町ボルチモアを本拠とするメジャーリーグの球団。低迷期が続いていますが、2010年以降たまに突然強くなる年があります。
メリーランド州のキーワード:アナポリス
かつて首都だったこともあるメリーランド州の州都。海軍兵学校があることでも知られ、海兵隊員や士官候補生が卒業式で帽子を空へ投げるのが風物詩です。
メリーランド州のキーワード:大統領別荘
CAMP DAVIDは、大統領の別荘兼避難所。大統領が外国の要人を招待してもてなすことも。しばしば、山荘の前で記者会見が開かれることでも有名です。
メリーランド州のキーワード:カニ
メリーランド州では、家でもレストランでも登場するご当地名物がカニ。味はロブスターに勝るとも劣りません。パン粉で揚げた「クラブ・ケーキ」も有名です。
メリーランド州のキーワード:同性婚
メリーランド州が、住民投票の末に同性婚を認めたのは2012年。アメリカでも早い方でした。わずかの差で同性婚賛成派が勝ちました。
メリーランド州のキーワード:移民船アーク号とドーブ号
イギリスからメリーランド州ヘ植民する、最初の移民団を1634年に運んだ船。140人以上の農民、大工らを載せた約3か月の旅でした。
メリーランド州のキーワード:チェサピーク・ オハイオ運河
ワシントンDCからメリーランド州カンバーランドまで延び、19世紀から20世紀初めにかけてアパラチアの石炭を運びました。当初はオハイオ川まで延ばす予定でしたが、時代が運河から鉄道に移行したために計画は幻になりました。
メリーランド州のキーワード:メイソン・ディクソン線
元はペンシルベニアとメリーランド州の境界線でしたが、やがて延長され、北部自由州と南部奴隷州を分ける境界の意味を持つようになりました。
メリーランド州のキーワード:カンバーランド
西のオハイオ方面に向かうための中継地点であり要所。この街の先に、南北に走るアレゲニー山脈を通り抜けられる細い谷間があります。
メリーランド州のキーワード:サベージ川州立 森林公園
米軍が建設した貯水池があり、首都の緊急時は給水施設になるらしい。平時は狩猟や釣り、キャンプ、ハイキングに最適な遊び場です。
メリーランド州のキーワード:スミスアイランドケーキ
チョコと黄色い生地を10層ほど重ねて作るケーキ。メリーランド州の漁師の島、スミス島で何十年も受け継がれた味です。2008年にメリーランド州の公式スイーツに採用されています。
メリーランド州の著名人
メリーランド州の著名人:ホームラン王 ベーブ・ルース
メリーランド州ボルチモア出身。通算本塁打数714本は、1974年にハンク・アーロンに破られるまで、39年間にわたりメジャーの最多記録でした。(1895~1948)
メリーランド州の著名人:英雄 ハリエット・タブマン
メリーランド州ドーチェスターに奴隷の身として生まれるも逃亡し、後に南部の奴隷を逃す組織「地下鉄道」の主要メンバーとして活躍しました。(成年不明~1913)
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“合衆国”というように50州からなるアメリカは、それぞれが独自の州憲法、政府組織を持ち、強い個性を放つ、いわばモザイク国家。それだけにアメリカの素顔は日本人にはなかなかわかりにくいもの。アメリカを知るには俯瞰的に眺めるのではなくそれぞれの州について知らないと、国の姿が見えてこないのです。本書では、それぞれの歴史や特徴を豊富なイラストとともに紹介。
さらには、日本でも毎回大きく報じられる4年ごとの大統領選挙について、各州のページで選挙人の数と民主党と共和党どちらが優勢であるか(2020年7月時点)を説明し、巻末には、大統領選挙のしくみ解説や歴代大統領のデータなども掲載。大統領選への理解も深まります。
【見どころ―目次より抜粋】
1章 北東部
■各州紹介
■<歴史解説>自由と仕事を求めた移民たちが、多民族国家アメリカを形成していった。
■<歴史解説>アメリカの根底にあるゴーウエスト思考、東海岸から始まった領土拡大の歴史。
■<コラム>4大プロスポーツのチームがない州
2章 南部
■各州紹介
■<歴史解説>南北戦争とリコンストラクション 敗北した南部州は深い傷を負った
■<歴史解説>人種差別を跳ね返した公民権運動 キング牧師の夢が叶う日はいつ
■<コラム>地下鉄道
3章 中西部
■各州紹介
■<歴史解説>アメリカ2大政党、民主党と共和党はいかにして今日の姿になったのか
■<コラム>アメリカの地勢
4章 西部
■各州紹介
■<歴史解説>銃による犯罪、学校や公共施設での銃乱射事件が止まらない。それでも銃規制が進まない理由。
■Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)
巻末資料
■<大統領選挙しくみ解説>民意がストレートに反映される国政、一年かけて国民が自らのリーダーを選ぶ
■歴代大統領
■人口ランキング
■面積ランキング
■銃規制(拳銃の公然携行の可否)/同性婚
■死刑の存続と廃止/消費税率(セールス・タックス)
【監修者】デイビッド・セイン
アメリカ生まれ。証券会社勤務を経て来日。30年以上にわたり翻訳や英語指導に従事、自身が代表を務めるAtoZ 英語学校で教鞭をとるかたわら、英語学習執筆、教材プロデュース、Webコンテンツ制作、動画制作と幅広く英語教育事業に関わる。NHKレギュラー出演ほか、日経・朝日・毎日新聞などにも連載。主な著作に『1日15分18日で英語の達人に 魔法の英語脳トレ』(InteLingo)などがあり、現在まで累計400万部を超える著書を刊行。
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