藤原頼通は皇子に恵まれず外戚の地位を失う
しかし藤原氏は藤原頼通、教通(のりみち)の兄弟ともに入内させた娘が皇子に恵まれず、次代の外戚の地位を築くことに失敗します。
そのため後冷泉天皇のあと、その弟で藤原氏を母としない後三条(ごさんじょう)天皇が治暦(じりゃく)4年(1068)に即位しました。
藤原頼通は引退して宇治へ
関白の座は、藤原頼通から弟の教通に譲られましたが、後三条天皇は摂関家にはばかることなく自らが国政改革に乗り出し、荘園整理令などを出します。さらに天皇は即位わずか5年で茂子の子の白河(しらかわ)天皇に譲位し、院政(いんせい)の基礎を築きました。
関白の座は教通から藤原頼通の子・師実(もろざね)へと継承されましたが、摂関家=外戚でなくなったこともあり、その地位は道長の時代にははるかに及ばないほど低下しました。藤原氏を外戚としない後三条天皇が即位し、藤原氏の全盛期がついに終わったのです。
藤原頼通の引退後
宇多天皇以来170年ぶりの藤原氏を外戚としない天皇となった後三条天皇は、まず八省院と内裏の再建に着手します。仮の内裏(里内裏)を転々としながら、改革を断行していきました。康平元年(1058)の焼亡後、再建が続いていた内裏が完成し、延久3年(1071)、天皇はようやく内裏へ戻ります。
一方、関白・藤原頼通は後三条天皇の即位を機に、関白を弟の教通に譲ります。そして治暦4年(1068)、後冷泉天皇の崩御後、藤原頼通は宇治へ閉居したのでした。
藤原頼通は、宇治に阿弥陀堂を持つ平等院(びょうどういん)を建てています。
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第1章 天皇親政と藤原氏 天皇親政の影で、藤原四家の争いに決着がつく
〈どんな時代?〉天皇親政による政治改革が進むなか藤原四家の主導権争いが続いた時代
【蝦夷遠征】東北植民戦争は、坂上田村麻呂の勝利と徳政論争によって終焉を迎える
【最澄と空海の入唐】入唐留学したふたりの僧により密教が平安の都を鎮護する仏教になる
【伊予親王事件】平城天皇と藤原式家の思惑が一致か?天皇の異母弟が、謀反の噂だけで南家の有力者とともに排除される
【平城太上天皇の変(薬子の変)】朝廷の分裂解消とともに、藤原氏の権力闘争に終止符が打たれる
第2章 藤原氏の権力掌握 藤原氏によってライバル氏族が次々に排斥される
〈どんな時代?〉藤原氏が対抗勢力を次々に排除し、摂関政治の足場を固めた時代
【承和の変】皇太子を報奉じた謀反計画の発覚で、橘氏が没落し、藤原北家の権威が高まる
【応天門の変】朝堂院の正門炎上事件が藤原氏の躍進と伴氏の没落をもたらした
【阿衡の紛議】藤原氏の専横に不満を募らせる宇多天皇により菅原道真が抜擢される
【遣唐使の停止】菅原道真によって遣唐使の停止が建議され、260年の歴史に終止符が打たれる ほか
第3章 藤原摂関政治 権力を掌握した藤原氏が全盛期を迎える
〈どんな時代?〉対抗勢力をすべて排除した藤原氏内部で、氏長者を巡る熾烈な争いが展開された時代
【平忠常の乱】東国に割拠した平氏の反乱が、源氏の東国進出の契機となった
【末法の世】終末観が漂い、浄土思想が流行した平安後期、貴族も庶民も極楽往生を願っていた
【藤原氏全盛の終焉】外戚関係のない後三条天皇の即位とともに、藤原氏隆盛の時代が終わる
【荘園整理令】後三条天皇による延久の荘園整理令が朝廷の収入を大幅に回復させる ほか
第4章 院政と平氏政権 平清盛によって武家政権への道が開かれる
〈どんな時代?〉院政下で政界に進出した武家が政争に決着をつける原動力となり、主役となった時代
【奥州藤原氏の繁栄】奥州に支配を確立した藤原氏が平泉を中心に黄金文化を築く
【院政の始まり】摂関家の力が低下する一方で、上皇が政治の実権を掌握し、院庁が政治の中心となる
【平家の海賊退治】海賊と謀反人追討によって平家一門が徐々に勢力を伸ばす
【鳥羽上皇と宮中の争い】天皇家と摂関家の保元の乱へとつながる対立に、武家が動員される
【保元の乱】朝廷の政争に武士の軍事力が決着をつけ、その力を見せつける ほか
~コラム~
平安貴族の装束/平安貴族の1日/平安貴族の一生/平安貴族の隠居と死/平安貴族の喧嘩/平安武士の暮らし/平安京の人々の暮らし/平安京の怪異と呪い ほか
【監修者】繁田信一(しげた・しんいち)
1968年、東京都に生まれる。東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科博士後期課程修了。現在、神奈川大学日本常民文化研究所特別研究員、東海大学文学部非常勤講師。専攻は歴史民俗資料学。 王朝時代の天皇、貴族、庶民の姿を活写する著書多数。『陰陽師と貴族社会』『呪いの都 平安京』『天皇たちの孤独』『かぐや姫の結婚』『紫式部の父親たち』『下級貴族の王朝時代』など。
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