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昭和新山形成までの流れ①:約11万年前、洞爺湖が形成

まず、洞爺湖の成り立ちから解説していきましょう。

約11万年前、この地で大量の火砕流を発生させる、日本列島最大級の噴火が起こりました。大地は陥没してカルデラができ、そこに雨水などが溜まったのが洞爺湖です。

約5万年前には、湖の中心付近で火山が噴火、火口から押し出された粘り気の強いマグマが固まって溶岩ドームができました。その後、噴火口が次々と移動しながらいくつもの溶岩ドームをつくり、これが大小4つの島からなる中島となったのです。

当時の噴火の姿を残す洞爺湖

なお、洞爺湖は最深部で水深約180mありますが、中島の北東、約700m離れた場所には水深1mほどの浅瀬があります。そこにはマグマが冷え固まったもの、つまり、中島を生んだ火山の頂上のひとつが見えているのです。

火山の山頂部と水面がおよそ同じ高さというだけでなく、火山は水没しているため風化したり植物が繁茂することもなく、できた当時の姿をほぼ保っているのがすごい点です。

昭和新山・洞爺湖エリア

昭和新山・洞爺湖エリア

洞爺湖は面積70.7㎢、中心部に中島が浮かぶドーナツ型をしたカルデラ湖。その南岸に、昭和新山を含む活火山・有珠山が鎮座。火山のマグマを熱源に温泉も湧出しています。

昭和新山形成までの流れ②:約2万年前、有珠山が形成

洞爺湖は温泉地としても知られていますが、その源は南岸にそびえる活火山・有珠山(標高737m)です。

有珠山は、約2万年前の火山活動によって生まれ、最近でも20~30年ごとに噴火しています。その周辺では、豊富な地下水が有珠山のマグマで温められ、火山ガスなどの成分が溶けて温泉として湧き出しているのです。洞爺湖温泉が湧出したのは、1910年の有珠山噴火のときなのです。

2000(平成12)年の有珠山噴火では、前兆地震をとらえ1万5000人超の地域住民全員の避難に成功しています。

昭和新山形成までの流れ③:有珠山の火山活動により誕生

そして1943年に始まった有珠山の火山活動により、その東麓に生まれたのが昭和新山です。

かつて麦畑だった平地が、ある日突然に盛り上がり、約2年間で標高約400mに成長。これは、粘性の高い火山岩(流紋岩)がつくる溶岩ドームで、山容はゴツゴツとしています。また、昭和新山といえば、赤褐色の山肌も特徴的ですが、これは、もともとあった粘土質の土壌が押し上げられ、高温の溶岩で焼かれて「天然のレンガ」となったためです。

昭和新山の火山活動の様子を記録した三松氏

昭和新山ができたのは太平洋戦争末期とあって、地域住民の防災はおろか、この火山活動自体も一般に知らされることはありませんでした。

しかし、壮瞥の郵便局長を務めていた三松正夫(みまつまさお)氏が自ら行動を起こします。平地が山になるまでの2年余りの火山活動を克明に記録したのです。氏は、郵便局裏を定点として、目線が一定となるように顎を載せる台を固定、水平にテグスを張って基準とし日々スケッチを続けたといいます。

その成果を『昭和新山隆起図』としてまとめるとともに、体感地震回数と噴火・隆起の相関関係図も作成しました。この人類初となる火山形成の記録は、1948年にノルウェーで開催された万国火山会議に提出されます。世界中の研究者を大いに驚かせ、絵図は『ミマツダイヤグラム』と命名されたのです。

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第1章「超大陸や日本列島を生んだプレート運動」
第2章「日本海拡大と列島形成」
第3章「日本の名所・絶景の地学」
収録図 日本列島3D鳥瞰図/日本列島地質図

【監修者】高橋 典嗣(たかはし のりつぐ)

東京都生まれ。
武蔵野大学教育学部・大学院教育学研究科特任教授。
明星大学、神奈川工科大学、電気通信大学非常勤講師。千葉大学大学院博士後期課程で公共研究を専攻。
太陽コロナ、地球接近小惑星、スペースデブリなど、地球を取り巻く宇宙環境と理科教育の研究に取り組んでいる。
日本スペースガード協会元理事長。日本学術会議天文学国際共同観測専門委員、日本学術観測団団長(ザンビア皆既日食)、学校科目「地学」関連学会協議会議長、天文教育普及研究会副会長、いわき天体観測所理事などを歴任。
著書に『地球進化46億年』(ワニブックス)、『138億年の宇宙絶景図鑑』(KKベストセラーズ)、『巨大隕石から地球を守れ』(少年写真新聞社)、共著に『子どもの地球探検隊』(千葉日報社)、『大隕石衝突の現実』(ニュートンプレス)、監修に『なぜ飛行機は空を飛べるの? 説明できない? カガクの不思議』(マイクロマガジン社)など多数。

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