目次
【大化の改新の従来説】改新の詔は創作であり、大化の改新もなかったのではないか?
大化の改新は古代日本の方向性を定めた極めて重大な国政改革でした。その改革のビジョンを示した改新の詔の重要性もまたしかりです。
しかし、この改新の詔については不自然な点があるという指摘がなされてきました。たとえば、発布当時はまだ使用されていなかったはずの「郡(ぐん)」という文字が使われており、内容についても701(大宝(たいほう)元)年に完成した大宝律令(たいほうりつりょう)と似ている部分が多いといいます。こうしたことから、改新の詔はまったくの創作か、『日本書紀』を編纂する際に脚色されたのではないかという説が唱えられたのです。そればかりか、大化の改新という大改革そのものがなかったのではないかなどともいわれていました。
『日本書紀』の編纂者が中央集権国家を目指した律令体制整備事業に権威づけをしようとして、脚色を行なった可能性があるというわけだです。しかし現在、これらの説は否定されています。
改新の詔創作・脚色説の根拠
改新の詔
一、罷昔在天皇等所立子代之民処々屯倉及臣連伴造国造村首所有部曲之民処々田荘
[天皇等が所有する子代の民と各地の屯倉、さらに豪族(臣・連・伴造・国造・村首)が所有する部曲の民と各地の田荘を廃止する]
二、初修京師置畿内国司郡司関塞斥候防人駅馬伝馬及造鈴契定山河
[京師(京・都)を制定し、畿内の範囲を確定し、国司・郡司・関塞・斥候・防人・駅馬・伝馬を設置する。さらに駅鈴・契を作成し、国郡の境界を設定する]
三、初造戸籍計帳班田収授之法
[戸籍・計帳、班田収授法を定める]
四、罷旧賦役而行田之調
[従来の税制・労役を廃止し、新たな租税制度である調(田の調と戸別の調)を定める]
※発布当時には使われていなかったはずの「郡」という文字がみえる。そのため、改新の詔の内容に関して疑惑の目が向けられることになったのでした。
【大化の改新の最新説】大化の改新の舞台である難波長柄豊碕宮の規模を見ると、大きな改革があったことは間違いない
根拠のひとつは大化の改新の舞台となった難波長柄豊碕宮(なにわのながらのとよさきのみや)です。
豊碕宮は非常に大規模なもので、その構造も内裏(だいり)(天皇の私的空間)と朝堂院(ちょうどういん)(政務をとる公的空間)が区別されているなど、従来とは大きく異なっています。こうした宮の造営は政治体制の大変革を示唆するものです。
改新の詔に創作部分がある可能性は否定できません。しかし、大きな改革があったことは間違いないのです。
『地図でスッと頭に入る古代史』好評発売中!
淡路島の銅鐸、蘇我氏や大王家の古墳など21世紀に入ってからも新発見が相次ぎ、注目を集め続ける日本の古代史。その歴史を解くカギは限られた文献と、神話と出土品のみであるため、未だ解明されない謎が多いのです。
そもそも日本人がどのように生まれたのか、天皇家がどのように誕生したのかも判然としません。
こうした古代史を読み解く上で、もうひとつ重要な鍵となるのが地図。日本人の成り立ちも、縄文人の生活も、地図を読み解くことによって明らかとなります。さらには日本最初の都が飛鳥に生まれた理由や京都盆地が都建設地に選ばれた理由も当時の豪族の勢力圏から浮き彫りに。古代史のトピックを解説しながら、これらにまつわる謎を地図によって読み解きます。
第1章 縄文・弥生時代
【縄文・弥生時代の流れ】 大陸から日本へやってきた人々がクニをつくり各地で戦争を繰り広げる
【日本への長い道】 何のために、どんなルートを通り、日本へたどり着いたのか?
【縄文人の生活】 高度な技術で多様な道具をつくり、危険をおかして遠距離を移動!
【戦争のはじまり】 中国の史書が記す「倭国大乱」はいったいどこで起こったのか?
~クローズアップ古代史~
稲作がはじまったのは弥生時代ではなく、縄文時代だった!
曹操の墓で発見された鉄鏡が邪馬台国の九州説の裏づけになる?
第2章 古墳時代
【古墳時代の流れ】 ヤマト政権による統一が進むとともに各地に築造されていく巨大な前方後円墳
【倭の五王】 中国に使者を送り続けた5人の王 彼らの正体を明らかにする
【巨大古墳の登場】 前方後円墳はヤマト政権のシンボル それが全国につくられた意味とは?
~クローズアップ古代史~
日本最大の前方後円墳は仁徳天皇の陵墓でない!
第3章 飛鳥時代
【飛鳥時代の流れ】 朝鮮半島から日本へ仏教が伝わり、中大兄皇子のクーデターで大化改新が実現
【崇仏論争】 仏教を受け入れるか拒絶するか……激化する蘇我氏と物部氏の争い
【大化改新】 天皇中心の中央集権体制を目指し、新政権がいよいよスタートを切る
【天武天皇の政治】 律令体制が次第に整い、日本がようやく「国」になった!
~クローズアップ古代史~
聖徳太子が建立した法隆寺の現在の建物は再建されたもの?
大化改新は虚構ではなく、確かに大きな改革が行われていた!
第4章 奈良時代
【奈良時代の流れ】 政争や疫病などの社会不安が相次ぐなか、平城京に律令体制の中央集権国家が完成!
【遣唐使派遣】 命の危険をおかして中国に渡った留学生たちが唐で得たものとは?
【聖武天皇と鎮護国家】 仏教で社会不安を鎮めようとした聖武天皇の篤き願い
【平安京遷都】 長岡京の建設中に決まった平安遷都 なぜ桓武天皇は心変わりしたのか?
~クローズアップ古代史~
平城京では「破斯清通」という名のペルシア人が働いていた!?
奈良時代の人々も知恵を絞ってさまざまな疫病対策を試みていた!
[監修者] 瀧音能之(たきおとよしゆき)
1953年北海道生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学科卒、博士(文学・早稲田大学)。
現在、駒澤大学教授。日本古代史、特に『風土記』を基本史料とした地域史の研究を進めている。主な著書に『風土記と古代の神々』(平凡社)、『古代日本の実像をひもとく出雲の謎大全』(青春出版社)、『出雲大社の謎』(朝日新聞出版社)などがある。
『地図でスッと頭に入る古代史』を購入するならこちら
※掲載の情報は取材時点のものです。お出かけの際は事前に最新の情報をご確認ください。
まっぷるトラベルガイド編集部は、旅やおでかけが大好きな人間が集まっています。
皆様に旅やおでかけの楽しさ、その土地ならではの魅力をお伝えすることを目標に、スタッフ自らの体験や、旅のプロ・専門家への取材をもとにしたおすすめスポットや旅行プラン、旅行の予備知識など信頼できる情報を発信してまいります!