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広岡浅子は先見の明で新事業を成功させ、日本女子大学校設立にも尽力
炭鉱事業の可能性をいち早く見抜いた広岡浅子は、福岡・筑豊(ちくほう)の炭鉱に目をつけ買収します。ところが、当初は採算が取れるほどの採掘量が出ずに難航することになります。10年以上も経営は苦しかったものの、広岡浅子は諦めずに自ら陣頭指揮を執り、優良炭鉱へと成長させます。
数字に強かった広岡浅子は、銀行事業にも乗り出します。後年には、生命保険会社「真宗生命」の経営を引き継ぎ「朝日生命※」(※現在の朝日生命とは異なる)と改称。さらに2社の保険会社を合併して「大同生命」とし、全国規模に成長させました。
女性実業家として名を馳せた広岡浅子は知人の紹介で、女子高等教育を実現させようとする成瀬仁蔵(なるせじんぞう)に出会います。成瀬仁蔵は、近代日本の最高学府・帝国大学と肩を並べる女性の大学、日本女子大学校創設の構想を掲げ、広岡浅子はそれに共感。資金面での協力にとどまらず、各地の実業家を説き伏せて資金を集め、52歳で開校を実現させたのでした。
広岡浅子の炭鉱事業のエピソード
広岡浅子は洋装にピストルを忍ばせて単身炭鉱に赴き、自ら陣頭指揮を執りました。作業員たちの女性蔑視にも毅然と対応し、一目置かれるようになったといいます。
広岡浅子は第一線から退きキリスト教に入信。晩年は女性の地位向上に貢献
還暦を迎え、乳がんを患った広岡浅子は、手術で九死に一生を得た際、偉大な力に守られたと実感します。それを機に神への信仰心が芽生え、成瀬が紹介した大阪基督(キリスト)教会の牧師・宮川経輝から教えを受けてクリスチャンになります。キリスト教の布教に努め、女性解放運動や社会事業を支援。また、後進の女性を育成するための勉強会を開くなど、教育面でも精力的に活動しました。
「九転十起生」(きゅうてんじゅっきせい)。これは広岡浅子が晩年、『基督教世界』に寄稿した際に用いたペンネーム。激動の時代で幾度も苦境に陥るも、力強く立ち上がった人生を表した言葉です。
広岡浅子の言葉
複雑なる社会はなかなか思いのままには行かぬ、九度転んでも十度起き上がれば、前の九度の転倒は消滅して、最後の勝利を得るものである。斯(か)くの如(ごと)く、転んで起き上がって歩くのでなければ、本当にしっかりした歩みではない。そしてすべての迫害四囲(はくがいしい)の習慣、失敗など、これらの万難を排して得た月桂冠は、真の光輝ある勝利者の頭上にのみ、かざされるのである。「真我を知りて婦人自ら立て(三)」
(『婦女新聞』五〇二号1909(明治42)年)より
広岡浅子(ひろおかあさこ)のプロフィール
実業家
生まれ:京都府京都市
生没年:1849[嘉永2]年10月18日~1919[大正8]年1月14日
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監修者:ヤマザキマリ
漫画家・文筆家。東京造形大学客員教授。1967年東京生まれ。
84年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。
2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞受賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ綬章。著書に『スティーブ・ジョブス』(ワルター・アイザックソン原作)『プリニウス』(とり・みきと共著)『オリンピア・キュクロス』『国境のない生き方』『ヴィオラ母さん』『たちどまって考える』『ヤマザキマリの世界逍遥録』『ムスコ物語』など。
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