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中満泉はUNHCRの現場で経験を積み、新しい仕事にも次々とチャレンジ

大学院修了後、中満泉は政府による国際機関派遣制度のJPO試験に合格します。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に採用され、トルコへ派遣されました。難民申請者と面接し、難民かどうか判定するのが主な仕事でした。「自分の決定がその人の人生に大きな影響を及ぼすという点で、その後のキャリアの中でも一番きつい仕事だった」と中満泉は振り返ります。仕事の重みを認識し、誠実さがいかに重要かを学びました。

第一次湾岸戦争勃発後は、クルド難民危機に対応。高等弁務官の緒方貞子に出会い、人命を最優先に前例のない決断で指導力を発揮する、新たなリーダー像に感激しました。ニューヨーク出向時、中満泉は人生の転機を迎えます。外交官と結婚し、夫の祖国、スウェーデンの国際機関に転職したのです。組織のビジョンに共感しての決断でした。37歳で出産し、子育てと仕事を両立。夫の転勤で日本へ戻り、次女を出産したあとも、JICAや一橋大学などで働き続けました。

中満泉は現場重視のPKOでの活動を経て、日本人女性初の国連事務次長へ

帰国して5年、夫の日本での任期満了が迫るにつれ、中満泉の国連復帰への思いは高まっていました。夫婦で話し合い、国連平和維持活動(PKO)の公募に応募します。政策部長として採用され、家族でニューヨークに移住しました。

約4年後、今後は政策を作る側ではなく実施する仕事がしたいと思っていたとき、アジア・中東部長への異動が決まります。シリア内戦やアフガニスタン情勢など、山積みの難問がやる気をかきたてました。その後、国連開発計画(UNDP)の危機対応局局長を経て、2017年、国連事務次長に就任します。軍縮部門のトップを務め、国際問題の第一線を走り続けているのです。

中満泉は国連事務次長、軍縮担当上級代表に就任

日本人女性としては初。核兵器禁止条約の採択に貢献し、約3年半かけて発効しました。「核兵器のない世界」の実現に向け、外交手腕を発揮しています。

中満泉の言葉

自分の信念と何をしたいのかをしっかり考えること。これは自分の人生の目的を考えるということでもあるかもしれません。それには、ともかくいろいろなことを勉強すること、経験すること、考えることです。勉強して考えた結果、見えてくるのが人生の目的なのだと思います。そして、自分の価値観や行動を律するモラル・コンパス(倫理基準)や、あなた自身の個性をしっかり持つこと。あなたがあなたらしく生きていくには、あなた自身のしっかりとした個、「核」のようなものが必要です。
『危機の現場に立つ』(講談社)より

中満泉(なかみついずみ)のプロフィール

国際連合 軍縮担当事務次長・上級代表
生まれ:東京都
生年:1963[昭和38]年6月3日~
出身校:早稲田大学、アメリカ・ジョージタウン大学大学院

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監修者:ヤマザキマリ

漫画家・文筆家。東京造形大学客員教授。1967年東京生まれ。
84年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。

2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞受賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ綬章。著書に『スティーブ・ジョブス』(ワルター・アイザックソン原作)『プリニウス』(とり・みきと共著)『オリンピア・キュクロス』『国境のない生き方』『ヴィオラ母さん』『たちどまって考える』『ヤマザキマリの世界逍遥録』『ムスコ物語』など。

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