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津田梅子は日本女性の現状にショックを受け、高等教育の必要性を痛感

帰国した津田梅子は、日本における女性の社会的地位の低さに驚くと同時に、留学生として得たものを女性たちと分かち合いたいと考えます。だが、当時の日本には女子留学生が活躍できる土壌は整っておらず、機会に恵まれないまま失意の3年間を過ごしました。

やがて、伊藤博文の勧めで華族女学校の教授補となり、自らが理想とする学校を創る夢をもつようになります。そして目指すべき高度な教育を受けるため、再度アメリカへの留学を決意するのです。

留学先のブリンマー大学では生物学を専攻。共同研究で蛙の卵の発生について論文を発表するなど成果を挙げる一方で、日本女性のための奨学金制度を設立しました。

津田梅子は資金集めに奔走したのち、ついに女子英学塾を設立

帰国後、再び華族女学校などで教鞭(きょうべん)をとる傍ら、万国婦人クラブ大会への出席、ヘレン・ケラーやフローレンス・ナイチンゲールとの会見など、旺盛に活動します。多くの交流によって、日本女性に対する高等教育の土台づくりを進めていくのです。

留学時代の学友や支援者らの協力を得て1900(明治33)年、ついに「女子英学塾」を創設。同塾は、日本の女子高等教育における先駆的機関となりました。津田梅子は開校式で、教師には熱意と学生の個性に応じた指導を求め、学生には研究心と広い視野をもつ人間を目指すよう説きました。その教えは、女子英学塾、そして津田塾大学の教育精神として連綿と受け継がれ、津田梅子の蒔まいた種は、多分野における卒業生の活躍という大輪の花を咲かせています。

津田梅子の授業は超スパルタ!?

女子英学塾では自ら教壇に立ち、週に14時間の授業を担当していた津田梅子。生徒の英語の発音に対して、たった一語であっても納得いくまで繰り返させました。しかし、授業が終わると、途端に明るい笑顔になって、教室をあとにしたといいます。

また、「学生の個性に応じた指導のためには少人数教育が望ましい」と語っていた津田梅子。留学先での経験が独自の教育観を形成していきました。

津田梅子の言葉

真の教育には物質上の設備以上に、もっと大切なことがあると思います。それは一口に申せば、教師の資格と熱心と、それに学生の研究心とであります。
(中略)
英語を専門に研究して、英語の専門家になろうと骨折るにつけても、完(まった)き婦人となるに必要な他の事柄を忽ゆるがせにしてはなりません。完き婦人即ち all-round womenとなるよう心掛けねばなりません。
1900(明治33)年 女子英学塾開校式辞より

津田梅子(つだうめこ)のプロフィール

教育者
生まれ:東京都新宿区
生没年:1864[元治元]年12月31日〜1929[昭和4]年8月16日
出身校:アメリカ・ブリンマー大学(選科生として在籍)
創立校:女子英学塾(現・津田塾大学)

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監修者:ヤマザキマリ

漫画家・文筆家。東京造形大学客員教授。1967年東京生まれ。
84年にイタリアに渡り、フィレンツェの国立アカデミア美術学院で美術史・油絵を専攻。比較文学研究者のイタリア人との結婚を機にエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカなどの国々に暮らす。

2010年『テルマエ・ロマエ』で第3回マンガ大賞受賞、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞。2015年度芸術選奨文部科学大臣賞新人賞受賞。2017年イタリア共和国星勲章コメンダトーレ綬章。著書に『スティーブ・ジョブス』(ワルター・アイザックソン原作)『プリニウス』(とり・みきと共著)『オリンピア・キュクロス』『国境のない生き方』『ヴィオラ母さん』『たちどまって考える』『ヤマザキマリの世界逍遥録』『ムスコ物語』など。

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