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鹿鳴館の役割

「鹿鳴」とは迎賓を意味しています。同年11月28日、井上馨外務卿夫妻の主宰で開館式の夜会が開かれました。それまでは外賓を招待するにも適当な施設がなく、旧浜御殿や華族の邸宅などを借用していました。

当時の日本は、外国との不平等条約の改正交渉が大きな外交問題でした。交渉を本格的に進めるにあたり、井上馨外務卿は旧薩摩藩邸6000坪を整備、そこに迎賓施設を建設したのが鹿鳴館なのです。完成した鹿鳴館では、海外生活の経験がある大山巌夫人の大山捨松(すてまつ)らが指導して、会合から食事、宿泊にいたる接客万端の態勢が整えられ、外交交渉促進の舞台として脚光を浴びました。

当時の東京は、新旧交代の風俗が入り混じっていました。人力車、瓦斯燈(がすとう)、新聞紙、錦絵、ザンギリ頭などが文明開化を誇示していたのです。新旧交代の風俗に、ひとつの方向を示したのが鹿鳴館時代だったという見方もあります。

鹿鳴館は欧化主義排撃の風潮に打ち勝てず閉鎖

ですが、鹿鳴館時代は明治16〜20(1883〜1887)年にかけてのわずか4年で、その後急速に衰えます。明治20年代初頭から、国粋主義の台頭により欧化主義排撃の風潮が強まったこともあり、鹿鳴館時代はあっけなく幕を閉じるのです。

鹿鳴館は、極端な欧化政策や卑屈に見えた対外的な政治姿勢などから、明治23(1890)年に閉鎖され、明治27(1894)年に華族会館(華族の集会場)として払い下げられることになりました。 その後、鹿鳴館のあった敷地は昭和2(1927)年、日本徴兵保険(後の大和生命保険)に売却されましたが、当時はまだ鹿鳴館の建物は残されていました。しかし、不経済との理由から昭和15(1940)年に取り壊されます。建築家の中から取り壊し反対の声があがりましたが、その声は届くことはありませんでした。現在は跡地に残る碑だけが、鹿鳴館のあったことを語っています。

『東京のトリセツ2』好評発売中!

全都道府県が出そろった好評のトリセツシリーズ。本書はそのなかでもとくに話題豊富な首都・東京の第2弾です。本書は地形、交通、歴史、産業・文化などのジャンルからその県ならではの知っておきたい面白いネタを拾ってきて紹介していますが、東京第2弾のコンセプトは「懐かしの東京を知る。江戸・明治・大正・昭和、時間を飛び越え、知らなかった東京を見つけよう!」。江戸城完成の秘密、高輪築堤出土!品川海上を走った鉄道、江戸幕府を支えた大名屋敷のいま、赤坂・麻布・青山は軍施設の密集地、飛鳥山に居を構えた渋沢栄一・・・などなど、今回もまた読み応えのある一冊に仕上がっています。

■第1章 地形から読み解くあなたの知らない東京

・最強の城・江戸城はこうして完成した/姿を消した渋谷川が再び川として蘇る
・九品仏川は矢沢川に乗っ取られた?
・標高たったの26m!? 家康ゆかりの愛宕山
・23区内にある低山は江戸時代に増えた!?
・品川台場のために切り崩された御殿山
・日本初の上水・神田上水から玉川上水へ
・東京市の水源確保のため多摩湖に沈んだ村
・八王子と町田の境界にある戦車道路とは?

■第2章 東京の知られざる鉄道・交通網

・高輪築堤出土!品川海上を走った鉄道
・新宿ゴールデン街を都電が走った!
・荒川放水路建設でねじ曲げられた東武線
・かつて山手線はチョコレート色だった!
・知られざる東京都港湾局専用線
・江戸川を走っていたマッチ箱電車とは?
・実働わずか8か月 国鉄武蔵野競技場線
・奥多摩駅のさらに奥に東京都専用の鉄道があった
・渋谷上空にロープウェイ!ひばり号とは?
・道として使われた川-江戸時代の舟運
・本土と伊豆諸島を繋ぐ東海汽船

■第3章 東京が誇る建造物・名建築をめぐる

・高級住宅地・世田谷に200年前栄えた城があった
・江戸幕府を支えた大名屋敷のいま
・大名庭園は金食い虫だった!?
・築地本願寺は海の上に建てられた
・阿吽の武士像が鎮座する迎賓館赤坂離宮
・明治・大正ロマンを感じる西洋建築
・都内最古の石橋・常磐橋
・まるで橋の博物館!隅田川橋梁群

■第5章 東京ゆかりの人物が愛した東京の街

・90年で引っ越し90回以上!葛飾北斎とすみだ
・正岡子規と文人の集う根岸の里
・飛鳥山に居を構えた渋沢栄一
・東急グループを作り上げた鉄道王・五島慶太
・西部王国を築いた堤康次郎と国立学園都市
・夏目漱石-『三四郎』が誕生した早稲田
・森鴎外が愛した千駄木
・青年期までの芥川龍之介を育んだ両国
・向島のラビラント-私娼窟・玉の井と永井荷風
・太宰治が好んだ三鷹の跨線橋も見納め?
・多くの文士・芸術家が集まった馬込文士村

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