目次
日米和親条約締結までの経緯②:異国船打払令の発令
ロシア対策が喫緊の課題となった幕府は、蝦夷地を直轄化して対露政策を進めていきます。クナシリ・メナシの戦いのあとの1799(寛政11)年、まず東蝦夷を直轄化すると、択捉島と樺太で襲撃された翌1807(文化4)年には西蝦夷と松前を直轄地にしました。これにより松前藩は藩領を召し上げられ、武蔵国(埼玉郡(埼玉県))へと転封されます。
幕府の役人がロシア艦の艦長ゴローニンを捕縛する事件(ゴローニン事件)が解決し、日露の緊張状態が緩和されたのにともなって松前藩は復領しますが、日本近海への異国船の接近は頻度が増し、幕府は1825(文政8)年に異国船打払令を出さざるを得ませんでした。
日米和親条約の調印により箱館を開港
しかし、幕府の対外方針は、浦賀(神奈川県横須賀市)に来航した「黒船」により一大転換が図られます。アメリカ艦隊を率いるペリーに開国を要求され、1854(安政元)年、幕府は日米和親条約に調印。この条約で日本は下田(静岡県下田市)と箱館((函館市)を開港することになりました。
箱館はもともと道南十二館(どうなんじゅうにたて)のひとつ(宇須岸(うすけし))として「場所請負制(ばしょうけおいせい)」で栄えていた点と、波が穏やかで大型船を係留しやすい点が評価され、開港場所として選ばれたようです。
日米和親条約締結その後①:箱館開港後に箱館を防衛強化する幕府
いずれにせよ、幕府はまたもやロシア対策を講じる必要性に迫られました。そこで蝦夷地を再び幕領化し、箱館奉行を配置したのです。箱館奉行は蝦夷地経営や防衛拠点の整備をしなければならず、箱館湊に砲台を備えた要塞(弁天岬台場)を建造し、箱館郊外には星形の城郭施設・亀田御役所土塁(かめだおんやくしょどるい)(五稜郭)を建設しました。
日米和親条約締結その後②:経済効果で繁栄する箱館
日米和親条約を機に、1858(安政5)年に日本はアメリカ、オランダ、ロシア、イギリス、フランスの5カ国と修好通商条約を結ばされます(安政五カ国条約)。この条約自体は日本側に不利な不平等条約でしたが、公共事業(五稜郭や弁天岬台場の建設など)や外国商船の往来による経済効果のおかげで、箱館は松前を超える都市として大いに繁栄していきました。
日米和親条約締結その後③:蝦夷地を狙うロシアと幕府の防衛対策
ロシアはクリミア戦争(1853~1856年)の終結後、再び南下政策を活発化させました。
1859(安政6)年、幕府は蝦夷地を防衛するために東北6藩(仙台、会津、秋田、庄内、南部、津軽)に蝦夷地を分与し、自藩領として蝦夷地を開発し、警備するよう指示するのでした。命じられた各藩は、陣屋を建設し、藩兵を配備し、農民を移住させて開拓をしなければならなくなったのです。なお、樺太の警備に関しては、仙台、庄内、会津、秋田の4藩が2藩ずつ隔年で担当することになります。
このように幕末の北海道域には、各藩の藩領が入り交じっていました。まさに混沌とした状態で、明治維新を迎えることになるのです。
蝦夷地分割分領図
1859(安政6)年の蝦夷地分領の状況。東北諸藩を蝦夷地の開発と警備に当たらせましたが、気候が厳しく財政的負担も重かったため、各藩とも警備には消極的でした。
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