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松前藩士は交易を和人に委ねたことによってアイヌと和人の不均衡が生じる

松前藩士は交易を和人に委ねたことによってアイヌと和人の不均衡が生じる
写真: 松前藩屋敷

のちに商場での交易を商人に委ね、藩士は運上金を受け取るだけの「場所請負(ばしょうけおい)制」に移行しますが、制度が導入される以前から、実質的に商人が介入するようになっていました。商人たちは交易だけに飽きたらず、蝦夷地での漁業にまで進出します。

寛文年間(1661~1673年)には、早くも積丹(半島南部の「しりふか」で和人が大網による鮭漁を行ったといいます。生鮭を塩引きに加工して持ち帰る「秋味船(あきあじぶね)」は蝦夷交易の目玉となり、アイヌの伝統的な漁法とは異なる手法で漁獲高を上げましたが、アイヌの鮭を買い叩いたり、アイヌを低賃金で酷使したりしました。こうした経済的不均衡による反和人感情は、1669(寛文9)年のアイヌ一斉蜂起へとつながったのです。

松前藩がアイヌの首長シャクシャインを謀殺

シャクシャインの戦いは、当初はアイヌ同士の部族間抗争でしたが、シベチャリ(新ひだか町静内)の首長・シャクシャインの指揮によって反和人蜂起へと発展。和人商船が次々と襲撃され、和人355人が殺害されました。その大半が商人であったといいます。

松前藩がシャクシャインを謀殺してこの戦いは終結しますが、以降、しばらくは蝦夷地での和人の活動は制限されました。

蝦夷地での漁業が再認可されてニシン漁が盛んに

やがて交易の形態が「場所請負制」になり、元禄年間(1688~1704年)に蝦夷地での漁業が再び許可されるようになると、ニシン漁が始まりました。ニシン漁は江戸時代後期から明治期にかけて盛んになります。

慶長年間に開かれた留萌(るもい)場所は、1844(弘化元)年には佐賀家が場所請負制下で漁場を経営するようになり、礼受(れうけ)のニシン漁場は蝦夷有数の漁場となります。

蝦夷地の地図の作製

江戸時代後期にロシアからの圧力が増すと、江戸で暦学を学んでいた伊能忠敬は、蝦夷と江戸での天体観測から子午線1度の距離を求めようと、幕府に蝦夷地の測量を願い出ました。

さらに幕府は間宮林蔵(まみやりんぞう)を国後(くなしり)場所(国後島、択捉島(えとろふとう)、得撫島(うるっぷとう))に派遣。現地で忠敬から測量の技術を学んだ林蔵は、西蝦夷(日本海沿岸からオホーツク海岸)を測量して得撫島までの地図を作製しました。林蔵は樺太が半島ではなく島であることを確認し、後世になってから樺太と大陸とのあいだは間宮海峡と名づけられます。

かくして蝦夷地は、19世紀になってようやくその全容を本州の和人に知られたのです。

蝦夷地の地図の作製

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