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宇部興産専用道路は県道山口宇部線(宇部湾岸線)の一部として山口県が購入

もともとクリンカーなどの輸送は、国鉄美祢線の貨物列車を利用していました。しかし昭和30年代に入りセメント需要が急増する中、列車貨物輸送では十分対応できなくなり、安定輸送に支障が出始めました。そこで沿道の私有地を買収するなどして自前で道路を建設することになりました。全通後、宇部市の一部区間1.5kmについては山口県が4車線のうち片側2車線を購入。以降、車線を完全分断したうえで県道山口宇部線(宇部湾岸線)の一部として国道190号を結ぶアクセス道に使用しています。地方公共団体が企業所有の道路を購入したのは全国でも珍しく、山口県にとってはアクセス道を新設した場合に比べ建設費や工事期間が大幅に圧縮できるメリットがありました。

宇部興産専用道路は、日本の公道では走れない超大型車両の通行が可能

宇部興産専用道路は一般の車両は通行できませんが、私道であることから道路交通法などの適用を受けません。このため日本の公道では走れない、超大型車両の通行が可能です。輸送の主役は、公道で走行が認められているフルトレーラーの長さの2倍近い、全長30mに及ぶダブルストレーラー。2両編成で積載量は80tないし88tを誇ります。公道を走行できるダンプカーは大型でも10t積み程度のため効率よく輸送でき、その分環境への負荷が低減できます。通常のナンバープレートが付いていない水色の巨大なボディーが1日に30台、美祢~宇部を10往復します。1日に運ぶクリンカーは1.2万t、石灰石は1.4万tに上ります。それでも輸送量は、ピーク時の1990年代後半に比べればやや減少傾向にあるといいます。輸送に関わる乗務員は80人。通常の運転免許だけでなく社内の講習会を受講してライセンスを取ることが義務付けられています。社内ルールは道路交通法以上に厳しく、時速70km以上は違反となります。車間距離を一定にとることトンネル内点灯など細かくルールが決められ、違反によってはライセンス取り消し処分もあります。特にスピード違反には厳しいのです。ダブルストレーラーは自重だけで40t、荷を積んだら120t以上になるため、沿線住宅への騒音の心配が大きいからです。

宇部興産専用道路はイベントや映画のロケ、自転車競技に使用された

私道だけに、所有する宇部興産株式会社が認めればさまざまな使い方が可能で、これまでも映画やテレビドラマのロケなどに使われました。1994(平成6)年に開催された広島アジア競技大会では、北部分の船木(ふなき)ICから伊佐トンネル南口までの12kmが自転車競技に使用されました。官民でつくる宇部・美祢・山陽小野田(さんようおのだ)産業観光推進協議会は、2007(平成19)年度から美祢、宇部市のセメント産業の現場を巡るバスツアー「セメントの道」を始めました。鉱山見学ももちろんですが、普段は立ち入ることができない宇部興産専用道路をバスで走れることも、貴重な体験として人気を集めています。

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Part.1 地図で読み解く山口の大地

・日本最大規模のカルスト台地 秋吉台の誕生をひもとく!
・秋芳洞はどうやってできた?
・ストライプの地層とマグマが生んだ須佐ホルンフェルス
・岩の柱が林立! 玄武岩でできた俵島
・海上アルプスとも呼ばれる青海島の岩石造形
・3本の川による河川争奪の結末
・昔は陸続き!? 関門海峡誕生の秘密
・3つのマグマの胎動が鍵を握る萩と阿武の大地
・長門峡の成り立ちに迫る
・大畠瀬戸に渦潮が生まれる理由

…など

Part.2 山口を駆ける充実の交通網

・関門をつなぐ世紀の大事業は世界初の海底トンネルだった
・SL「やまぐち」号の勇姿/路線跡地を活用した遊覧車 一度は乗りたい! とことこトレイン
・山陽鉄道の建設を拒否した県都・山口の苦い歴史
・私道では日本一の長さ! 約32kmの宇部興産専用道路
・土木学会デザイン賞を受賞 絶景と調和した角島大橋
・藩主や維新志士も行き来した山陰と山陽を結ぶ萩往還
・下関と釜山を結ぶ航路は2国を結ぶ友好の懸け橋

…など

Part.3 山口で動いた歴史の瞬間

・周防鋳銭司は古代日本有数の造幣局だった!
・道真公が無実を願った場所に建立 日本初の天神さま
・平家一門最期の地・壇ノ浦
・西国の覇者が築いた「西の京 やまぐち」の基礎
・お家のために御屋形様を討つ! 陶隆房は逆臣だったのか?
・経済政策と人材育成で財政難を乗り切り雄藩に成長
・先人の情熱が生んだ錦帯橋
・奇数代藩主と偶数代藩主で菩提寺が違うのはなぜ?
・「巌流島の決闘」の真相とは

…など

Part.4 山口で生まれた産業や文化

・日本海側で夏みかん栽培? 廃藩後の萩経済を支えた主役
・全国からふぐが集まる下関
・近代捕鯨発祥の地・下関でおいしいくじら料理を食べる
・セメント町に硫酸町…地名に残る小野田の産業
・本州最西端の山口が工業県に発展したわけ
・伝統を今に伝える「錦帯橋のう飼」
・茶人に愛される萩焼の今昔とその魅力
・有楽町、原宿、代々木公園。周南市になぜ東京の地名が?
・萩市の世界産業遺産が語る長州藩のチャレンジ精神

…など

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