デスモスチルス類は、北太平洋沿岸地域でだけ化石が見つかる哺乳類で、絶滅種です。
体長は2～3メートル、体重は200～300kg、現代のゾウやジュゴンなどの海牛に近いと考えられ、非常に奇異な体を持ちます。背骨は軟弱で陸地を歩けず、主に水中を泳いでいました。さらに円柱を束ねたような歯を持っており（そのため束柱類といいます）、歯は非常に厚いエナメル質でできていますが、何を食料にしていたかはわかっていません。

実態が謎なままで1300万年ほど前に絶滅しています。

化石が見つかった地層は瑞浪層群と呼ばれ、岩村や可児にも似たような地層があり、厚さ600メートルほどの層を持ちます。ここから貝類や魚類、哺乳類、植物など約1500種類もの化石が産出しています。クジラやサメ、エイなどの化石も多く、この地は当時湖や海だったことが想定されます。

2000万年前の地層からは淡水魚や植物化石が見つかっており、瑞浪周辺は湖と森が広がっていたと考えられます。次に1800万年前の地層からは、浅い海に生息するビカリアという貝の化石が多く出ており、南方から海が入り込んできたことがわかります。徐々に水深は深くなり、1600万年前ごろにはクジラや魚類が増えて外洋性になり、1500万年前ごろはマングローブ沼ができ、熱帯に近い環境が広がっていたと考えられています。

デスモスチルスたちは温かい海水の中で、マングローブやサンゴを見ながら伸び伸びと泳いでいたのかもしれません。

詳細がわかるきっかけになったのは、1971（昭和46）年に瑞浪で中央自動車道の工事が始まり、瑞浪層群の地層が掘削されて大量の化石が産出したことです。
研究者が集い、2年間で10万点以上の標本が集まり、それを整理してまとめた瑞浪市化石博物館が誕生しました。ここではデスモスチルスの骨格標本を見学できます。博物館の野外学習地では実際に化石の採集ができるため、採掘にチャレンジすれば、新しい発見に出合えるかもしれません。

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