目次
オホーツク文化の代表的な遺跡・モヨロ貝塚
その代表的な遺跡であるモヨロ貝塚(網走市)は、オホーツク海に注ぐ網走川の河口にあります。クジラやイルカといった大型の海獣類の骨が出土していることからも、ここに暮らした人々が海洋狩猟民であったことがうかがえます。
貝塚に埋葬された人骨の副葬品には、東北アジアから樺太経由で持ち込まれたと思われる宋銭(そうせん)「景祐元宝(けいゆうげんぽう)」や青銅製品(鈴など)があり、さらには本州から伝わったとみられる鉄製品(直刀(ちょくとう)や蕨手刀(わらびてとう)など)も出土しています。
網走市立モヨロ貝塚館
- 住所
- 北海道網走市北一条東2丁目
- 交通
- 女満別空港から網走バス女満別空港線網走バスターミナル行きで35分、モヨロ入口下車、徒歩5分
- 料金
- 大人300円、高・大学生200円、小・中学生100円(団体割引あり)
オホーツク文化最大規模の集落・目梨泊遺跡
オホーツク文化期における最大規模の集落は目梨泊(めなしどまり)遺跡(枝幸(えさし)郡)です。この遺跡で見つかった5点の大陸製装飾具(青銅製帯金具)のうち、4枚には透かし彫りが施されていました。
また、本州製武具(蕨手刀など)も出土しており、大陸だけでなく道央や本州との主要な交易拠点であったことがうかがえます。
擦文文化の成り立ち
オホーツク文化が北から南下してきた文化であるのに対し、擦文文化は本州から道南を経て道東、そして北海道全域へと広がっていった文化です。
本州で古墳時代(3世紀末~7世紀)につくられた土師器(はじき)が北海道に持ち込まれたのち、続縄文末期の土器の影響を受け、表面を木べらや刷毛で擦ったような地紋をつけて仕上げる製法に変化しました。この擦文土器の分布範囲で展開した文化を擦文文化といいます。
オホーツク文化とは一線を画す擦文集落
カマドが壁に面した隅丸方形(すみまるほうけい)の竪穴(たてあな)住居が用いられる擦文集落は、本州における古墳時代から平安時代にかけてのものとよく似ており、住居中央に炉のあった縄文文化やオホーツク文化とは一線を画します。
オホーツク文化を吸収していく擦文文化
擦文遺跡は河川の中下流域に多いですが、サクシュコトニ川遺跡(札幌市)や札前遺跡(松前町)からは栽培植物の種子が見つかっており、サケ漁などを主体とした河川狩猟だけでなく原初的な農耕の存在も確認されています。
本格的な農耕社会へと転化することはなかったようですが、擦文文化は13世紀頃までに北海道全域に展開し、次第にオホーツク文化を吸収していったのです。
擦文・オホーツク遺跡の分布
オホーツク文化の分布域は、アムール川河口で発生する流氷が漂着する地域と重なります。北方民族が流氷を渡って持ち込んだ文化と考えられています。
対する擦文文化は本州から流入した文化で、川の近辺を中心に展開しました。
北海道式古墳とは?
北海道式古墳とは江別古墳群(江別市)や茂漁(もいざり)古墳群(恵庭市)などで発見された墳墓形式のことで、末期古墳とも呼ばれています。径は3~10m、高さは1m未満と、その規模は小さいです。
東北から北海道の道央・石狩低地帯に分布し、擦文文化への移行期である8世紀前半から9世紀前半にかけてのわずかな期間に築造されました。本州からもたらされた須恵器や土師器、鉄器が出土していることから、本州と交流のあった有力者か東北からの移住者の墓と推定されます。
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