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土佐日記に記されていない土佐国への往路
土佐に向かうルートとして一般的だったのが、「伊予(いよ)回り線」です。平安京から大坂、和歌山、淡路島(あわじしま)を経て、阿波国撫養(あわのくにむや)(現在の徳島県鳴門市撫養)へ入ります。そこから讃岐国(さぬきのくに)を進み、伊予国の海岸線をたどるように移動して土佐国に入ります。非常に大回りですが平坦な道が多く移動がしやすかったことから、こちらがメインルートとなりました。『土佐日記』には帰路の旅程しか書かれていないため、紀貫之一行がどのルートで土佐国に入ったかは不明ですが、当時一般的だった伊予回り線を利用した可能性が高いでしょう。
土佐日記でも触れられていない紀貫之の業務
紀貫之が土佐国でどのような業務を果たしていたのかは、はっきりしていません。国守の任務は地方から庸(よう)・調(ちょう)などの税を徴収し朝廷に届けることなので、紀貫之も同様の仕事をこなしていたと考えられています。後任の島田公鑑(しまだきみあき)に国務を引き継ぎ(分付)、国司の交代手続き完了証明書である解由状(げゆじょう)を受納していることから、任務は滞りなく終えたのでしょう。「後任者の遅れで足掛け5年の赴任になった」と不満をもらしていますが、もともと国司の任期は4~5年なので、そこまで長期の赴任というわけではありません。
紀貫之は円滑に業務をこなす
土佐国政庁である国府(現在の南国市比江(なんこくしひえ))およびその周辺の人々が離別の宴を開いており、在地豪族から餞別をもらったりもしているため、地元との関係も良好だったようです。
土佐日記から読み解く紀貫之の帰京の道のり
『土佐日記』によると紀貫之は、934(承平4)年12月21日に国府を出発しています。21~26日は餞別の宴会が開かれており、27日に大津を出て鹿児崎(かこざき)経由で浦戸(うらど)に入っています。28日には浦戸から大湊(おおみなと)へ移動し、大湊で年越し。1月8日まで大湊に滞在し、そこからは海路です。奈半泊(なはのとまり)(奈半利(なはり))から室津(むろつ)を目指し、その後は阿波国の海岸沿いを移動して淡路島に入っています。紀貫之が平安京の自宅に到着したのは2月26日なので、土佐から京都まで50日近くかかったことになります。通常であればもう少し短いのですが、この時は10日近く風待ちをしており、余計に時間がかかったようです。
紀貫之が帰京の際に本筋を外れた道のり
なぜ紀貫之が阿波国を経由するルート(阿波回り線)を選んだのかは分かりませんが、「西から東に流れる黒潮に乗れるため移動しやすかった」「荷物が多いため、一度に多くの荷物を運べる海路を選んだ」などの説があります。
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