岐阜県内で、最も規模の大きいものが濃尾断層帯（のうびだんそうたい）です。福井県から南東へ延びる温見断層（ぬくみだんそう）、能郷白山（のうごうはくさん）の麓から岐阜市まで繋がる根尾谷断層（ねおだにだんそう）、本巣市の北東から関市の南へ続く梅原断層（うめはらだんそう）などを含んでいます。

根尾谷断層を中心とする主要部分が、明治時代に起きた濃尾地震（のうびじしん）の際に大きく活動しています。内陸地震としては日本最大級のM8.0を記録し、死者は7000人を超えました。家屋や鉄道、工場の倒壊を招き、地割れや陥没などの地変を伴ったといいます。

濃尾大地震で活動した地震断層は、枝分かれしたものも含めて全長80km近くもあり、すべてが左横ずれです。特に、本巣市根尾水鳥（もとすしねおみどり）に現れた全長約500m、高さ6m、左ずれ3mの断層崖は世界的にも規模が大きく、海外の地震の教科書にも掲載されているほどだといいます。

根尾谷断層自体は縦ずれを起こす場合、ほぼ南西側が隆起しますが、ここだけは北東側が隆起しています。根尾谷断層の東側に黒津断層が平行に走り、こちらの左横ずれ運動の力と衝突したことで、挟まれた地面が上昇したのです。この断層壁は濃尾地震断層を象徴する存在となり、1952（昭和27）年に国の特別天然記念物の指定を受け、濃尾地震100周年の1991（平成3）年には根尾谷地震断層観察館・体験館が建設されました。断層の一部が掘削されており、地下の様子を観察することができます。

濃尾地震では根尾谷断層と梅原断層、温見断層北西部が活動。三田洞断層や揖斐川断層、武儀川断層は活動していません。

また、根尾谷地震断層観察館の北、うすずみ温泉の南東に根尾中（ねおなか）集落があり、ここにも著名な根尾谷断層があります。茶の木の列（畑の境界線）が平均で7.4mも左横ずれした場所があり、濃尾地震時の変位としては最大値。「根尾中の屈曲」として知られ、こちらも2007（平成19）年に国の特別天然記念物として追加指定されました。

余談になりますが、根尾谷にはさらに2つの特別天然記念物があります。1つめは樹齢1500余年を誇る薄墨桜（うすずみざくら）で、樽見鉄道の樽見駅からすぐの場所にあり、日本三大桜の１つに数えられます。ピンクの蕾が満開になる頃には白に変わり、散り際には墨色へ変化する様子を楽しめます。2つめは根尾東谷から産出する菊花石です。暗い緑色の石に白や赤の菊が咲いたような鑑賞石で、愛好家からの人気も高いのです。

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