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「淡海乃海」が「近江」となったのは「「遠淡海」と区別するため
一方、天智天皇が667年に飛鳥(現奈良県明日香村)から近江国滋賀郡(現大津市)に遷都した都は、「近江大津宮」と呼ばれています。『日本書紀』には「近江京」と記されていることから、飛鳥時代後期に律令制が始まる前から「近江」という地名が一部で使われていたということになります。
近江という漢字は、じつは「遠江(とおとうみ)」(現静岡県西部)と区別するために用いられたといいます。浜名湖(静岡県浜松市)は飛鳥時代に「遠淡海(とおつおうみ)」と呼ばれており、これが遠江国の語源となりました。遠淡海とは、ヤマト王権から遠くの湖という意味をあらわしています。
「淡海乃海」が「近淡海」となり「近江」に
これに対して琵琶湖の周辺地域の名称として用いられたのが「近淡海」です。やがて「近江」という用字に短縮され、律令制が施行された701年以降、国名として定着していきました。
近江と遠江は、大きな湖があるということ以外に共通点はありません。それでも、ヤマト王権からすれば、近江はヤマトの近くに、遠江は遠くに位置する湖の国であるため、ひとつにまとめて捉えていたのでしょう。
この近江という名称は現在でも、近江牛や近江地鶏、近江米、近江上布(じょうふ)など滋賀県特産ブランドに使われています。また、自治体としては近江八幡市(おうみはちまんし)、東近江市(ひがしおうみし)があります。このほか神社、企業、学校などの名称にも用いられており、親しまれています。
知名度が高いので琵琶湖県のほうがいい?
県名の滋賀は、もともとは南西部の郡名だったものです。滋賀郡は琵琶湖と比良山地に挟まれた地域で、現在の大津市の北部にあたります。これに対して近江国は、現在の県域と重なっていることから、滋賀より近江のほうが大きかったのです。そのため近江のほうが県名としてふさわしいという意見は多くあります。
また、滋賀より琵琶湖のほうが、知名度が高いことから「琵琶湖県」に変更すべきだという意見も出ているそうです。
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Part.1 地図で読み解く滋賀の大地
・近江はいつから始まった?近江と呼ばれるワケ
・近江盆地の地形と気候/琵琶湖はいつできた?
・「琵琶湖八景」と「近江八景」の違い/琵琶湖に浮かぶ四つの島々
・琵琶湖に流れ込む川は約450本もあった!
・京都を復活させた琵琶湖疎水
・琵琶湖以外にも湖、あります。湖だけじゃない滋賀を囲む山々
・滋賀県の温泉
・「津」がつく地名が多いのははぜ?
・「両側町」という形をとり「大津百町」と呼ばれた
・京都・三重・岐阜・福井と隣接する三県境
Part.2 滋賀を駆ける充実の交通網
・「瀬田の唐橋を制するものは天下を制す」ともいわれた軍事と交通の要
・「道の国」とも呼ばれた近江のさまざまな街道と宿場
・鉄道や国道が「草津川」の下をくぐる必要不可欠なトンネル
・琵琶湖上をかける外輪船、初めて浮かんだのは「一番丸」
・揖斐川と琵琶湖をつなぎ1トン級の船舶を通す「日本横断運河計画」とは?
・「夢のかけ橋」と呼ばれた琵琶湖大橋
・私鉄開業ブームで伸びる私鉄網
・時速130キロメートルで運行される「湖西線」
・観光と輸送の主要駅である「米原駅」と「草津駅」
Part.3 滋賀の歴史を深読み!
・遺跡から見る古代の近江のすがた
・滋賀県は首都だった。天智天皇が遷都した近江大津宮と紫香楽宮
・日本の仏教史において重要な「近江」、天台宗は比叡山で開かれ都道府県別寺院1位!
・自治組織としての「惣」と「近江商人」、伊藤忠兵衛の活躍
・種子島から国友に伝えたとされる火縄銃
・戦国の二大決戦「姉川の戦い」「賤ヶ岳の戦い」
・滋賀県の城と武将たち
・歩兵連隊が所在し「軍都」と呼ばれた近江の戦争遺産
Part.4 滋賀で育まれた産業や文化
・近江にもたらされ、広まった土器の技術
・彦根藩の特産となった「浜縮緬」と生産量世界1位の「レーヨン」
・大企業が進出、工業団地がたくさんあります
・近江神社いろいろ、「祭り」もいろいろ
・1万年前から続く「湖の幸」と外来種の襲来
・外国人が造ったレンガ造りの田川カルバート
・天候と土地の広さから競馬と密な関係にある滋賀県
・青土のダム穴
・「鳥人間コンテスト」はなぜ始まったのか?
・スポーツが盛んな滋賀県
・大型ショッピングモールが完成、敷地のほとんどが駐車場
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