山形県域で整備された街道
出羽国では寛永年間(1624~1644年)に羽州(うしゅう)街道が整備されます。羽州街道は奥州街道からの脇街道であり、桑折(こおり)宿(福島県桑折町)で奥州街道から分かれ、宮城県域を通過して楢下(ならげ)宿(上山(かみのやま)市)から山形県域に入り、主要な宿場では山形宿(山形市)、天童宿(天童市)、楯岡(たておか)宿(村山市)、尾花沢(おばなざわ)宿(尾花沢市)、新庄宿(新庄市)などを経由し、秋田県域へと抜けていき、最終的に青森へと至ります。
山形県域で参勤交代で用いられた出羽国11藩と陸奥国2藩
この地方における唯一の基幹街道として、出羽国11藩(上山藩、山形藩、天童藩、長瀞(ながとろ)藩、新庄藩、庄内藩、出羽松山藩、矢島(やしま)藩、本荘(ほんじょう)藩、亀田(かめだ)藩、久保田藩)と陸奥国2藩(黒石(くろいし)藩、弘前(ひろさき)藩)が参勤交代に用いられました。
楯岡宿は街道が整備され舟運も好調
楯岡宿は最上川の河港である大石田(おおいしだ)(北村山郡)へと接続しました。村山郡内から羽州街道を用い、大石田から最上舟運を利用して物資を運ぶルートが確立して物資輸送量は増大化し、その中継点である楯岡宿はおおいに発展するのでした。
最上川舟運の整備は慶長年間(1596~1615年)にはじまります。最上川には碁点(ごてん)、隼(はやぶさ)、三ヶ瀬(みかのせ)という3つの難所があり、この難所を避けるには大石田で陸揚げし、陸路で運ぶほうが安全でした。このため大石田は最上川の河港として最大の物資集積場となったのです。
江戸時代以前より整備されていた酒田港
最上川の河口では古くから酒田港(酒田市)が開けていましたが、最上舟運の発着点であると同時に日本海の港として整備されていきます。1672(寛文12)年、政商・河村瑞賢(かわむらずいけん)が幕府の命を受け、西廻り航路を開拓します。それまで東北諸藩から江戸へと御城米(おしろまい)(年貢米)を運搬するには陸路を用いていましたが、時間がかかりすぎていました。西廻り航路は、酒田から日本海に出たあとは西に進路を取り、佐渡島の小木(おぎ)(新潟県佐渡市)、能登半島の福浦(ふくら)(石川県羽咋郡(はくいぐん))、下関(山口県下関市)などを経由して瀬戸内海に入り、大坂(大阪府大阪市)から紀伊半島を迂回して伊勢湾へと出て、伊豆半島の下田(しもだ)(静岡県下田市)から江戸へと向かいます。
西廻り航路は安全かつ費用が抑えられたことから東北諸藩に重宝され、酒田港は「西の堺、東の酒田」と称されるほど繁栄し、出羽国の廻船問屋では鐙屋(あぶみや)のような豪商も誕生したのです。
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・出羽富士・鳥海山の成り立ちと火山がもたらす湧水や地形
・山形盆地の成り立ちと扇状地に発展した県都・山形市
・大江町の最上川川床で発見!ヤマガタダイカイギュウって何だ!?
・河川がつくった肥沃な庄内平野を35㎞におよぶ庄内砂丘が守る
・最上川・五百川峡谷の誕生と流域に形成された河岸段丘
・どうやって誕生し段丘が発達?山形唯一の有人離島「飛島」の謎
・冬の名物・美しい樹氷はどうして蔵王山に形成されるのか?
…などなど山形のダイナミックな自然のポイントを解説。
Part.2 山形を駆け抜ける鉄道網
・急勾配と豪雪を克服し新庄へ至る全国初のミニ新幹線・山形新幹線
・急峻な板谷峠で奥羽山脈越え!逞しき幹線・奥羽本線の今昔
・九州~北海道の貨物車両が走り日本海縦貫線をなす羽越本線
・日本初の交流電化路線にして今や貨物の重要路線の仙山線
・最上川の絶景峡谷を走る!新庄と余目を結ぶ陸羽西線
・三山・高畠・尾花沢の3路線 山形交通の鉄道路線網とは?
…などなど、山形ならではの交通事情を網羅。
Part.3 山形で動いた歴史の瞬間
・木の実でつくったクッキーも!? 山形県域の縄文時代
・和人が蝦夷の領域へと進出! 城柵から見る開拓の歴史
・鎌倉御家人が地頭として進出! 次第に激化する権力争い
・伊達氏との対立を経て統治者に君臨した最上氏の栄枯盛衰
・街道と航路が整備され 発展する沿道の産業と商業
・領主交代に領民が抵抗! 天保の国替え反対一揆とは?
・異名は鬼県令!? 初代県令三島通庸が推進した土木工事
…などなど、激動の山形の歴史に興味を惹きつける。
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