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【山形県の歴史】急速な近代化の恩恵と弊害

初代県令に就任した三島通庸(みしまみちつね)は、山形市に県庁を置くと、西洋風建築物が並ぶ官庁街をつくり、県内外を結ぶ道路網の整備を推し進めます。その費用の約7割が住民負担だったため、三島通庸は「鬼県令」とも呼ばれ、米沢や天童では住民たちによる土木工事への反対運動も起こりました。
過重な住民負担のいっぽう、広がった道路網は農業の近代化を促進しました。なかでも置賜地方では、養蚕・製糸業で多くの商人たちが工場経営に乗り出し、生糸生産が隆盛します。また、この頃には山形県にサクランボの苗が持ち込まれ、村山地域で果樹栽培が広がっていきました。明治から大正にかけて生産高が急激に上昇。1933(昭和8)年には、日本におけるサクランボ生産量の3割以上を占めるほどにまで成長しました。

近代化への弊害

こうした産業の近代化は、民衆の経済格差を拡大させました。たとえば、農業では地主制が顕著となり、耕地をまったくもたない小作農が増加して、零細農民が50%以上を占めました。1913(大正2)年に冷害による大凶作が起こると、飽海(あくみ)郡で義挙団が結成されるなど、民権運動が広がりました。

【山形県の歴史】戦争と世界恐慌

さらに、第一次大戦後にアメリカの株暴落を発端とする昭和恐慌が起こると、山形県の主力輸出品だった生糸の価格が大きく下落。極度の不振に陥り、1930(昭和5)年6月の調査では山形県内の失業者は2982人に上りました。1934(昭和9)年の大凶作時には農村部でも極端に収入が下がり、十分に食事を与えられない欠食児童が激増したとされています。

戦時下の山形県では、山形歩兵第三十二連隊が日露戦争や日中戦争に出兵し、功績を挙げるなど「忠君愛国」の精神が広がりますが、農村や貧困層はますます困窮の一途を辿り、配給に頼る生活が続きました。

【山形県の歴史】戦後の歩みと現在

戦後の山形県は、空襲による被害がそれほど大きくなかったため、疎開などによって人口が急増。戦争による未亡人などを中心に生活保護受給者が増大し、山形市や米沢市では母子寮も建設されました。進駐軍による農地改革で農村は地主から解放され、農民の収入も安定するようになります。
ところが高度経済成長期に突入し第一次産業から第二次・第三次産業への転換が進むと、都市部への出稼ぎが急増し、農村は過疎化。こうした関東へのストロー現象は交通インフラの発展も相まって、今なお山形県の人口問題の根幹となっています。

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Part.1 地図で読み解く山形の大地

・出羽富士・鳥海山の成り立ちと火山がもたらす湧水や地形
・山形盆地の成り立ちと扇状地に発展した県都・山形市
・大江町の最上川川床で発見!ヤマガタダイカイギュウって何だ!?
・河川がつくった肥沃な庄内平野を35㎞におよぶ庄内砂丘が守る
・最上川・五百川峡谷の誕生と流域に形成された河岸段丘
・どうやって誕生し段丘が発達?山形唯一の有人離島「飛島」の謎
・冬の名物・美しい樹氷はどうして蔵王山に形成されるのか?

…などなど山形のダイナミックな自然のポイントを解説。

Part.2 山形を駆け抜ける鉄道網

・急勾配と豪雪を克服し新庄へ至る全国初のミニ新幹線・山形新幹線
・急峻な板谷峠で奥羽山脈越え!逞しき幹線・奥羽本線の今昔
・九州~北海道の貨物車両が走り日本海縦貫線をなす羽越本線
・日本初の交流電化路線にして今や貨物の重要路線の仙山線
・最上川の絶景峡谷を走る!新庄と余目を結ぶ陸羽西線
・三山・高畠・尾花沢の3路線 山形交通の鉄道路線網とは?

…などなど、山形ならではの交通事情を網羅。

Part.3 山形で動いた歴史の瞬間

・木の実でつくったクッキーも!? 山形県域の縄文時代
・和人が蝦夷の領域へと進出! 城柵から見る開拓の歴史
・鎌倉御家人が地頭として進出! 次第に激化する権力争い
・伊達氏との対立を経て統治者に君臨した最上氏の栄枯盛衰
・街道と航路が整備され 発展する沿道の産業と商業
・領主交代に領民が抵抗! 天保の国替え反対一揆とは?
・異名は鬼県令!? 初代県令三島通庸が推進した土木工事

…などなど、激動の山形の歴史に興味を惹きつける。

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