その熊本県の中心・熊本市は、明治・大正時代に急速に近代都市としての形を整えていきますが、その一翼を担ったのが、廃藩置県と同時に設置された鎮西鎮台（ちんぜいちんだい）であり、その後軍都としても発展していくこととなりました。軍の駐留は、都市人口の増加や経済発展の観点から歓迎されました。そして1873（明治6）年に徴兵令が施行され、鎮西鎮台が熊本鎮台に改称されると、部隊数は徐々に増加、熊本城内地区にも屯所が設けられるようになります。この熊本鎮台の兵は、1874（明治7）年の台湾出兵や同年に起きた佐賀の乱鎮圧などの他、西南戦争でも活躍しました。

その後、1888（明治21）年には第六師団が組織され、師団司令部は熊本城に置かれます。熊本城内と武家屋敷跡には、さらに兵舎が設置され、山崎（現在の辛島町、練兵町などの熊本中心地）の武家屋敷跡地の大部分は練兵場となり、日清戦争（1894～1895／明治27～28年）では、ここから第六師団が出陣するなど、軍都としての色合いがいよいよ濃くなっていきました。

明治末期になると、熊本市は上水道や公共交通機関の整備に着手しました。しかし、そのとき大きな課題となったのが軍の存在でした。そこで、当時の熊本市長・辛島格（からしまいたる）らは、軍部に働きかけて熊本市の中央部を占有していた山崎練兵場の移転を嘆願、それを受けて軍部も1900（明治33）年には練兵場を渡鹿（とろく）に移転しました。その跡地には新市街の建設が始まり、これと相前後して兵営も郊外へ移転していきました。1907（明治40）年には、熊本軽便鉄道が開業し、大正時代に熊本電気鉄道を経て熊本市電へと変わり、市民の生活を向上させることとなりました。しかし熊本城が第二次世界大戦終了まで旧・日本陸軍第六師団の中心的拠点であることに変わりはなく、その周辺には軍関連施設が数多く存在し続けました。

そのため、第二次世界大戦末期の1944（昭和19）年11月21日以降には熊本は数回におよぶ米軍の空襲を受けることとなります。特に1945（昭和20）年7月1日〜2日の空襲では、市街地の約20%が焼失、被害は、死者数469人、負傷者数552人、罹災家屋総数1万1000戸、罹災者数43万3000人に達するという被害を出しました。

戦後、米軍は熊本城郭を接収、解除されたのは、1956（昭和31）年のことでした。それから4年後の1960（昭和35）年、熊本城は大小天守等が再建され、公園として整備されます。こうして熊本城は加藤清正の築城より約350年のときを経て、市民の憩いの場として生まれ変わったのでした。

地形、交通、歴史、産業…あらゆる角度から熊本県を分析！

熊本県の地形や地質、歴史、文化、産業など多彩な特徴と魅力を、地図を読み解きながら紹介するマップエンターテインメント。熊本の知っているようで知られていない意外な素顔に迫ります。思わず地図を片手に、行って確かめてみたくなる情報を満載！