熊本の遺跡から発見された古代人の痕跡
有明海を見下ろす丘の上に広がる沈目遺跡は、3万5000年前のもので、2002( 平成14)年には約3万年前の姶良丹沢(あいらたんざわ)火山灰の下から、スクレイバーと呼ばれる獲物の皮を剥ぐための打製石器が発見されました。また1981(昭和56)年には、沈目遺跡よりは時代が新しいものの、曲野(まがの)遺跡(宇城市松橋(まつばせ)町曲野)で約2万5000年前の打製石器が見つかっていました。日本列島には、そんな昔から多くの人々が暮らしていたのです。
熊本の遺跡の痕跡から彼らの足跡を辿る
それにしても、彼らはいったいどこからやってきたのでしょうか?
まだ明白な答えは見つかっていません。しかし4万年~3万年前の日本列島は、今より中国大陸に近いところに位置しており、地球の気温も寒冷で、海水が極地で凍りついていました。そのため、海面が今より数十mも低く、陸地化している部分が多くありました。
たとえば日本列島には瀬戸内海も形成されておらず、東シナ海もうんと狭く、船で渡るのも容易だったとされています。つまり、彼らは中国大陸や朝鮮半島から船で渡ってきた可能性が高いと考えられています。
熊本の遺跡は本来は海の近くだった?
旧石器時代、多くの人々が海の幸に恵まれた海岸線近くに集落を形成していました。たとえば、沈目遺跡の現在の場所は海岸線からずいぶん離れたところにありますが、3万5000年前は、すぐ近くまで海が迫っていたとされています。ですが、その後の5000年ほどの間に海面が低くなり、海岸線が次第に遠のいていくと、人々はそれに伴い、生活の拠点を移動させていったのです。
遺跡同士の位置図
下の地図で見ると、曲野(まがの)遺跡は沈目遺跡の南西(直線距離でおよそ8㎞)に位置しています。そして両遺跡を結んだ線の断面図をみると、沈目遺跡が標高30mほどに位置しているのに対し、曲野遺跡周辺の標高は20m程度となっています。
地図から読み取れる沈目遺跡と曲野遺跡の関連性
これは、3万5000年前は沈目遺跡が海岸近くに存在していましたが、海面低下に伴ない遠のいていった海岸線を追いかけるように、人々は住む場所を移動させていき、2万5000年前に曲野遺跡が形成された結果だと考えられます。
ちなみに、沈目遺跡も曲野遺跡も周辺の開発が進み、現在はその姿を見ることができなくなっています。
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