この恩恵を最も受けているのが、県都・熊本市です。熊本地域（11市町村）では年間約20億4000万㎥の雨が降ります。そのうち約３分の１は大気中に蒸発してしまい、約３分の１は白川、緑川などを経て有明海に流れていきます。しかし、残り約３分の１（約６億4000万㎥）は田畑や森林、草原から地下の火砕流堆積物に染み込んでいきます。その際、熊本市周辺の地下の基盤岩の上に堆積している地層（阿蘇火砕流によってできた地層）が帯水帯となり、そこに地下水が染み込み蓄えられ、地層内をゆっくりと流れていきます。このような地層は外輪山の西側から熊本市に至る広い範囲に存在しており、白川の中流域付近の地下には巨大な地下水プールが形成されているのです。

地下水は、そこからさらに水位を下げながら南西に向かい、湧水地帯に至ると地中からコンコンと湧き出してきます。その典型が、長さ2.5㎞、周囲６㎞、水面面積約50ha、１日40万tの湧水量を誇る江津湖（えづこ）です。また、江津湖の北北西およそ２㎞に位置する水前寺公園（水前寺成趣園）の池も、湧出地下水を利用してつくられたものです。
ちなみに、この地下水が熊本市の江津湖周辺にたどり着くまで、阿蘇外輪山西麓付近からでは約20年、白川中流域あたりからは約５〜10年はかかるとされています。

出典：熊本市役所ホームページ「奇跡の地下水物語」

また、熊本の水がおいしいのには別の理由があります。熊本の地層は、阿蘇火山の4度にわたる大火砕流噴火により、厚く降り積もった火砕流で形成されています。この地層には非常に穴の多い砥川（とがわ）溶岩が広く分布しており、すき間も多く、水が浸透しやすいという特徴があるため、熊本地域に降った雨は地下に染み込み、この地層の間を縫うようにゆっくりと流れます。その間に細かいすき間によって不純物が取り除かれ、ミネラル成分や炭酸成分がバランスよく溶け込み、おいしい水となります。このような奇跡が重なって、熊本はおいしい水に恵まれた、まさに「水の国」となっているのです。

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