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原子力船むつは地元民に歓迎されず海を漂う
ですが、大湊港が面する陸奥湾をホタテ養殖の一大産地に育てた漁民らは放射能汚染を懸念し、湾内試験や洋上試運転に強く反対。「むつ」の出港を阻止しようと、約300隻もの漁船で包囲します。その隙を突いての出港は、予定より1日遅れの1974(昭和49)年8月26日でした。2日後、尻屋崎東方沖約800kmで初臨界を達成するも、9月1日、放射線漏れが発生。報道は非難一色で、青森県、むつ市、地元住民は「むつ」の安全性を疑い、大湊港への帰港に反対します。
「むつ」は45日間漂流の末、定係港の撤去などを条件に大湊港に帰港。原子炉は封印され、新たな定係港は下北半島の津軽海峡側の関根浜(せきねはま)港に決まりました。
原子力船むつは試験・実験を重ね最後は非核化された
「むつ」は長崎県佐世保(させぼ)市での修理を経て、1982(昭和57)年に大湊港にいったん戻り、1988(昭和63)年に港開きしたばかりの関根浜港に入港しました。原子力船として点検や試験を重ね、1990(平成2)年、16年ぶりに臨界を達成。1年間の実験航海で、ウラン235約4.2㎏の燃焼による原子動力(重油換算で5000トン)で約8万2000kmを航行しました。
非核化された「むつ」
その後、非核化された「むつ」はディーゼル機関を搭載し、1996(平成8)年に海洋地球研究船「みらい」となり、調査船として現在も活躍中です。整備に約223億円を投じた関根浜港は「みらい」の母港となり、「むつ」の原子炉室は「むつ科学技術館」(むつ市)に展示されています。
むつ科学技術館
- 住所
- 青森県むつ市関根北関根693
- 交通
- JR大湊線下北駅からタクシーで20分
- 料金
- 大人300円、高校生200円、小・中学生100円、幼児無料(65歳以上無料、障がい者と同伴者1名半額、20名以上の団体は1割引、要予約)
原子力船むつを筆頭に下北半島は国策に揺れる
下北半島は現在、六ヶ所村を中心に、ウラン濃縮工場や原子力発電所、再処理工場など、各種原子力施設が集積。地元経済を潤してきましたが、東京電力福島第一原発事故後は建設中断や稼働停止が相次ぎました。国策に揺れる歴史は、今なお続いているのです。
「むつ小川原開発」は多様なエネルギー開発が行われている
「むつ小川原開発」は1960年代末から国、青森県、産業界が協同で進める国家プロジェクト。六ヶ所村を中心とする地域に大規模工業地帯を整備する当初の計画をはじめ、各種計画が頓挫し、2007(平成19)年に「科学技術創造圏」の形成を目指す新計画が策定されました。2020(令和2)年までに開発用地の約36% が分譲され、国家石油備蓄基地や核燃料サイクル施設、風力・太陽光発電所など、多様なエネルギー関連施設の集積地となっています。
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Part.1 地図で読み解く青森の大地
・津軽・下北半島が陸奥湾を抱き 県央を貫く奥羽山脈が地形を二分
・火山がもたらした絶景や石灰岩 下北半島に刻まれた列島誕生史
・二重カルデラの十和田湖が生んだ奥入瀬渓流の渓谷美
・津軽富士と称される美しい岩木山は荒々しい火山地形を残す活火山
・古いカルデラの上に形成された八甲田山は火山地形の宝庫!
・東に段丘・西に砂丘・南に扇状地 岩木川がつくった津軽平野
・かつて潟湖だった小川原湖と広大な上北平野ができるまで
・地すべりでブナの原生林が誕生 太古の森が残る白神山地の成り立ち
・・・など
Part.2 青森を駆け抜ける鉄道網
・日本鉄道の駅として明治期に開業 北への玄関となった栄光の青森駅
・E5系・H5系「はやぶさ」が走り延伸を続ける東北・北海道新幹線
・車内で津軽三味線の生演奏!?「リゾートしらかみ」がゆく五能線
・函館への海底トンネルを掘削!?大湊線・大畑線・大間線の大計画
・日本初のステンレス車も活躍する東北最大の私鉄 弘南鉄道がすごい
・黄金の東北本線は新幹線で激変 新時代を走り出した青い森鉄道
・冬は石炭炊きのストーブ列車!ローカル私鉄・津軽鉄道の魅力
・レトロなレールバスがみちのくの原風景を走った幻の南部縦貫鉄道
・・・など
Part.3 青森で動いた歴史の瞬間
・マンモスを追ってきた人類が定着 中央に属さない独自の文化が発展
・豊かな自然のもとで生まれ1万年にわたり続いた縄文文化
・稲作を基盤とする弥生文化と北海道で発達した擦文文化が交錯
・和人の律令国家に取り込まれず蝦夷の地として交易で発展する
・奥州藤原氏が源頼朝に滅ぼされ武士たちの激しい抗争の時代へ
・十三湊を制して栄えた安東氏と室町期に台頭した南部氏の争い
・北東北最大勢力の南部氏から独立し弘前藩を築いた津軽氏とは?
・藩境争いに暗殺未遂、戊辰戦争…度重なる津軽と南部の紛争
・戊辰戦争後に紆余曲折を経て青森県が成立し近代化していく
・港町から県都となった青森では町人中心の町づくりが進んでいく
・・・など
Part.4 青森で育まれた産業や文化
・霊媒師イタコが霊場・恐山の象徴的存在となった理由
・諸大名が財を投じて求めた南部駒 青森県の馬産の歴史は古代から!?
・築100年のダムが現役!耐久性の高い青森ヒバ
・岩木山麓の原野を切り拓いて旧藩士たちが始めたリンゴ栽培
・大間のマグロに陸奥湾のホタテ! 青森県で水産物が豊かな理由とは?
・船上に車両を載せて海を渡る! 青森〜函館をつないだ青函連絡船
・セメント工場の設立をきっかけに漁村から工業地帯に変貌した八戸
・米軍・自衛隊・民間が利用する三沢飛行場は旧海軍航空基地だった
・・・など
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