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カムイサウルスとはどんな恐竜だったのか

2019(平成31)年9月、むかわ竜は新属新種、ハドロサウルス科の植物食恐竜と判明し「カムイサウルス・ジャポニクス」の学名が与えられました。
全長は約8mで、後ろ足に比べ、きゃしゃな前足が特徴的。二足歩行をしていたと仮定すると、その体重はおよそ4トン、四足歩行の場合5.3トンと推定されています。武器になるような部位を備えておらず、集団で生活することで外敵から身を守っていたようです。

カムイサウルスの恐竜化石が眠っていた白亜紀後期の地層

日本ではめずらしい全身骨格化石が見つかったのは、約7200万年前(白亜紀後期)に堆積した砂泥岩の地層。北海道には、蝦夷層群(えぞそうぐん)と呼ばれる北は宗谷岬から南は浦河町まで断続的に分布する地層があり、おもに白亜紀の海洋堆積物で構成されています。往時、あたりは海の底だったのです。

カムイサウルスの恐竜化石は当初別種のものだと思われていた

大発見の端緒は、2003(平成15)年、現在のむかわ町立穂別博物館に寄贈された骨化石でした。しかし、海の堆積層が発見されたこともあり、多くの標本が見つかっている海の大型爬虫類、首長竜の化石だと考えられました。

そのため、とくに注目されずに収蔵庫へ収められたままになりました。

カムイサウルスの化石は恐竜の可能性が浮上

その後、首長竜の化石研究のためにクリーニング作業を進めたところ、2011(平成23)年、首長竜のものではなく陸上で暮らす恐竜のものである可能性が浮上しました。ハドロサウルス科の恐竜と推定された尾椎骨(びついこつ)の化石は全部で13個。それらをつなげてみると、約1mの尻尾が現れたのです。

発掘現場の再調査がスタート

こうして尻尾部分が相次いで見つかったことから、発掘現場をさらに調査すると全身が埋まっている可能性が出てきました。そこで2013(平成25)年に大規模な第1次発掘が行われ、右大腿骨を含む後ろ足など全体の3割程度が、翌年の第2次発掘では残りの体と100点以上の遊離した歯や頭骨の一部などが確認されました。

陸生恐竜のカムイサウルスの化石が海底の地層に埋まった理由

こうして貴重な全身骨格化石が発見されたのですが、なぜ陸生恐竜が海の堆積層から発掘されたのでしょうか? 白亜紀後期のむかわ町付近は、大陸から約10㎞離れた海底にありました。

カムイサウルスは洪水や津波などの自然現象で命を落とした可能性

そこで立てられた仮説は、その個体は洪水や津波などの自然現象によって命を落とし、そのまま沖合に流されたというもの。

尻尾の化石を見た専門家は、付近に全身が埋まっているのではと考えました。ほとんどが骨の尻尾だけで海に浮くことは困難ですが、全身が流されることでプカプカと海中を漂ったのち、海底に着底し埋没。結果的によい保存状態で全身の骨格が残ったと推論されるのです。

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地球規模のプレート運動が北海道の大地と山々をつくる!
むかわ町穂別で発見された新種恐竜カムイサウルスとは!?
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Part.2 北海道を駆け抜ける鉄道網
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Part.3 北海道で動いた歴史の瞬間
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Part.4 北海道で育まれた産業や文化
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北海道らしい大規模農業は開拓時代に黒田清隆が提唱した!
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<コラム>
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