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越後縮の歴史

越後縮の開発に成功したのは、播州明石藩出身の堀次郎将俊(ほりじろうまさとし)と伝えられています。寛文年間(1661〜1673年)、将俊は越後国山谷村(現・小千谷(おぢや)市)に居を構え、この地方で織られていた麻製の越後布に改良を施し、縮織(ちぢみおり)の技法を編み出します。縮織とは、ヨコ糸に強い撚よ りをかけて布地にシボ(しわ)を出し、糊で固めてから織り上げ、そののちに糊を落とし、ひねりがもとに戻る力を利用してシワをつけるもの。従来の越後の布は白地でしたが、縞や格子の模様も織り出すことでデザイン性にもすぐれ、さらに生地にしわがあるので肌にまとわりつかず、夏服として重宝されました。元禄期(1688〜1704年)には幕府御用達(ごようたし)の織物となり、武士など上流階級からの需要が急激に高まりました。最盛期の天明期(1781〜1789年)には、年間20万反の生産があったといいます。

越後縮の生産はあくまでも農家の女性の副業

ただ、これだけ隆盛した織物にもかかわらず、越後縮の生産・流通形態は、問屋制家内工業の方式をとりませんでした。本来、機織りの職人を雇って織らせれば利益は多く上がりますが、魚沼(うおぬま)地方ではそうせず、越後縮を織るのはもっぱら農家の婦女子で、あくまでも農閑期の副業としてでした。冬の魚沼地方は雪深い地域です。そのため女性は家に籠っているしかなくなり、そこで空しく過ごさなくても済むように縮織の仕事がありました。農家は、必要な原料(苧麻の茎の表皮からつくられる青苧(あおそ))の代金をまず借り受け、織った布を換金してその代金を支払いました。このまとまった資金を必要としない生産システムによって、副業としての機織りが農家の間に広まったのです。

越後縮の伝統と技術はユネスコの無形文化遺産に登録

高貴な人から縮の注文があった際は、「御機屋(おはたや)」という清められたスペースを家につくり、女性はそこに籠りきりで機を織りました。さらに織り上げた布は植物性繊維を漂白するために雪晒さらしにされますが、高貴な人の注文品は晒し場も別にしたそうです。晒した布は何日かすると染料が鮮やかに映え、地の生地も白々と輝き、雪上を美しく彩ります。その伝統と技術は、ユネスコの無形文化遺産にも登録されています。

へぎそばに縮織の原料!?

のどごしなめらかで、しっかりとしたコシもある越後名物のへぎそば。そばのつなぎといえば、一般的には小麦や山芋などが主流ですが、へぎそばのつなぎは布海苔(ふのり)といわれる海藻です。布海苔は古くから糊の原料として利用されてきました。小千谷で「縮」の製作過程で必要な糊の原料の布海苔をそばのつなぎとして使い、へぎそばが誕生しました。へぎそばの「へぎ」とは、せいろのような木の器のこと。ここにひと口大に取り分けられたそばが盛られます。

へぎそばに縮織の原料!?
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Part.1 地図で読み解く新潟の大地

・新潟の地質・地形概論(「米納津隕石、櫛池隕石」)
・約3000万年前に誕生した佐渡島 火山や地殻変動の痕跡がいっぱい!
・かつて圧倒的な産出量を誇った佐渡島の金銀山が生まれた秘密
・プレートの沈み込みが生む奇跡!糸魚川地域でヒスイが採れるわけ
・ヒスイ峡に3億年前のサンゴ礁!? 石灰岩でできている明星山の秘密
・日本列島を分断する見えない溝 フォッサマグナとはいったい何か?
・最長70㎞で10列をなす新潟砂丘は信濃川と阿賀野川がつくった!?
・約40年前から形成され始めた中津川に広がる河岸段丘の絶景
・約1000万年前の海底火山が生んだ新潟市・間瀬海岸の奇岩や沸石
・上信越高原国立公園・清津峡 圧巻の渓谷と柱状節理ができるまで
・産出量は文句なしの全国1位! 新潟県に油ガス田が多いわけ
・約300万年で2000mも隆起! 八海山が秘める地殻変動のすごさ

Part.2 新潟を駆ける充実の交通網

・東京と新潟をいかにして結ぶか?直江津線として生まれた信越本線

ほか、上越新幹線・北陸新幹線、上越線、飯山線、越後線、北越急行ほくほく線、えちごトキめき鉄道、新潟交通電車線、蒲原鉄道線などを紐解く。

Part.3 新潟の歴史を深読み!

・古代史総論/縄文時代 火焔型土器
・弥生時代 玉作と稲作
・越国が成立しやがて三国に分かれる
・中世史総論 城氏の興亡
・波月条絵図はなぜつくられた?
・上杉氏と長尾氏の複雑な関係(謙信による越後統一まで)
・御館の乱を経て景勝が越佐統一
・近世史総論……越後平野の開発
・鉱山都市相川の発展
・近世の交通
・近現代史総論
・北越戊辰戦争
・戦時下の新潟

Part.4 新潟で育まれた産業や文化

・大河津分水
・燕三条の金物
・西山・東山・新津の三大油田ほか新潟に発展した石油関連事業
・コシヒカリ
・越後杜氏と日本酒/越後縮
・冬の新潟が豪雪地帯となるわけと雪がもたらした観光業

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