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【コシヒカリ誕生の歴史】農林1号の改良によって生まれた越南17号

川の氾濫は人々を苦しめてきましたが、山間部から運ばれ堆積した土砂により、越後平野は肥沃な土地となっていました。その結果、河川の流れを制御し水害がなくなると、平野部の湿地帯は絶好の耕作地となりました。ですが、昭和初期の頃は、新潟の米は品質が高くありませんでした。そんな新潟の米事情を一変させたのが一大ブランド、コシヒカリの登場です。

戦前、新潟県農事試験場(現・新潟県農業総合研究所)が研究開発した品種に「農林1号」と呼ばれる稲がありました。「農林1号」は早生(わせ)、多収、良質でありながら、いもち病に非常に弱いのが欠点でした。そこで「農林1号」と病気に強い「農林22号」を掛け合わせる改良が1944(昭和19)年に始まります。第二次世界大戦で一時中断するものの、戦後、改良種の第三世代が生まれると、研究・開発は隣の福井県農事試験場(現・福井県農業試験場)に移譲され、開発が続けられました。そして誕生したのが「越南17号」です。

【コシヒカリ誕生の歴史】「越南17号」が育成されて「コシヒカリ」へ

「越南17号」は病気に弱く、さらに稲の丈が長く倒れやすいのが欠点でしたが、その味はどの品種よりも高く評価されました。しかも、1948(昭和23)年に発生した福井地震で多くの稲が倒れ収穫できなかったなかで、「越南17号」だけは倒れはしたものの穂は無事に収穫できました。そこで、新潟県は「越南17号」を奨励品種に指定して、育成に力を入れることにしたのです。そして、1956(昭和31)年、「越南17号」は「越の国(北陸)に輝く光」をイメージするコシヒカリと名づけられました。コシヒカリは粒がそろっているのが特徴で精米のばらつきが少なく、炊いたときの光沢も良好、味は抜群。やがて日本を代表する品種となります。

コシヒカリ誕生の歴史は奇跡の土地から

新潟がコシヒカリをはじめとする多くの米を産出する米どころになった大きな理由は、もともと氾濫によって肥沃な土地となったほかに、その気候も大きな要因と考えられています。

穂が実り始める登熟期の気温がおよそ24.5℃。これは登熟期としては最適といわれています。また、魚沼など盆地部では昼夜の気温差が大きいことも、米にとっては好条件でした。さらに、豪雪で知られる新潟の雪解け水も、腐葉土などの栄養分を多く含んでいます。コシヒカリは、稲作にとってまさに奇跡のような土地で育まれてきたのでした。

新潟の米産地は、新潟地区、魚沼地区、岩船地区、佐渡地区の大きく4つに分けられます。平野部、盆地部、島部などいずれも米栽培に適しています。
全国農業協同組合連合会 新潟県本部HP( 2019年11月20日現在のデータ)を参考に作成

新潟はチューリップの切り花出荷量日本一

1919(大正8)年、中蒲原郡小合村(現・新潟市)でオランダから輸入したチューリップの球根数万球を栽培したのが日本におけるチューリップの商業栽培の始まりです。年間出荷量はおよそ2千万本。現在、新潟はチューリップの切り花出荷量日本一です。発祥の地、新潟市小合には、1989(平成元)年に記念碑が立てられました。また、五泉(ごせん)市、胎内(たいない)市などもチューリップの産地として有名です。

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Part.1 地図で読み解く新潟の大地

・新潟の地質・地形概論(「米納津隕石、櫛池隕石」)
・約3000万年前に誕生した佐渡島 火山や地殻変動の痕跡がいっぱい!
・かつて圧倒的な産出量を誇った佐渡島の金銀山が生まれた秘密
・プレートの沈み込みが生む奇跡!糸魚川地域でヒスイが採れるわけ
・ヒスイ峡に3億年前のサンゴ礁!? 石灰岩でできている明星山の秘密
・日本列島を分断する見えない溝 フォッサマグナとはいったい何か?
・最長70㎞で10列をなす新潟砂丘は信濃川と阿賀野川がつくった!?
・約40年前から形成され始めた中津川に広がる河岸段丘の絶景
・約1000万年前の海底火山が生んだ新潟市・間瀬海岸の奇岩や沸石
・上信越高原国立公園・清津峡 圧巻の渓谷と柱状節理ができるまで
・産出量は文句なしの全国1位! 新潟県に油ガス田が多いわけ
・約300万年で2000mも隆起! 八海山が秘める地殻変動のすごさ

Part.2 新潟を駆ける充実の交通網

・東京と新潟をいかにして結ぶか?直江津線として生まれた信越本線

ほか、上越新幹線・北陸新幹線、上越線、飯山線、越後線、北越急行ほくほく線、えちごトキめき鉄道、新潟交通電車線、蒲原鉄道線などを紐解く。

Part.3 新潟の歴史を深読み!

・古代史総論/縄文時代 火焔型土器
・弥生時代 玉作と稲作
・越国が成立しやがて三国に分かれる
・中世史総論 城氏の興亡
・波月条絵図はなぜつくられた?
・上杉氏と長尾氏の複雑な関係(謙信による越後統一まで)
・御館の乱を経て景勝が越佐統一
・近世史総論……越後平野の開発
・鉱山都市相川の発展
・近世の交通
・近現代史総論
・北越戊辰戦争
・戦時下の新潟

Part.4 新潟で育まれた産業や文化

・大河津分水
・燕三条の金物
・西山・東山・新津の三大油田ほか新潟に発展した石油関連事業
・コシヒカリ
・越後杜氏と日本酒/越後縮
・冬の新潟が豪雪地帯となるわけと雪がもたらした観光業

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