新政府は1876（明治9）年、アメリカ人技師で地質学者のライマンを新潟に派遣し、油脈の測量を行わせます。その結果、優秀な評価が与えられ、新潟県内の油田掘削は熱気を帯びていきました。しかし、人々の期待とは裏腹に採算がとれる油田を掘り当てられず、熱気は冷めていきました。

そんななか、1888（明治21）年に中越地方の有力者が集まり、鉄道敷設とともに石油業を県内産業の振興策に定め、刈羽郡石地（現・柏崎市）に「有限責任日本石油会社」（以下、日本石油）を設立します。同社の誕生が、新潟県の石油業の転機となりました。

本社を三島郡尼瀬（現・出雲崎町）に移した日本石油は、尼瀬の海岸で石油の掘削を始めます。尼瀬の沖合いの海面には「草生水（くそうず）の間」と呼ばれる石油がしみ出す場所があり、そこを掘削機を使って掘り進め、破格の量の原油採取に成功します。その後もそれまで手掘りしていた油田に掘削機をとりつけて掘り進めると、そのほとんどで大量の採油に成功。尼瀬油田の生産量は飛躍的に増大しました。しかし、1894（明治27）年をピークに産出量は減少。そこで日本石油は、油田やガス田の存在が確認されていた尼瀬東部の丘陵地に目をつけ、新油田の掘削に次々と成功。海岸の尼瀬油田と丘陵地の新油田は一括で、「西山油田」と呼ばれるようになりました。

この西山油田の活況を受け、新たな産油地の候補となったのが長岡東部の山地でした。1887（明治20）年にはすでに油田の存在が確認され、掘削されたものの、手掘りだったため採油量は多くありませんでした。そこで機械掘をしたところ採油量が激増し、東山（ひがしやま）油田と呼ばれるようになりました。こののち長岡は、東山油田のおかげで石油関連の機械工業が発展し、工業都市化していきました。

JR信越本線・来迎寺駅付近にある南長岡・片貝油ガス田の分布。この油田は1960年代以降に発見されました。
新潟県作成「天然ガスと石油開発の現況」2020年データ（令和3年4月発刊）を元に作成。

いっぽう江戸期から採油の記録があった新津では、1893（明治26）年頃から上総（かずさ）掘り（千葉県で生まれた井戸掘用の掘削技術）を取り入れ、採油量が飛躍的に増えました。1900（明治33）年の産油量は西山・東山油田をしのぎ、その４年後には日本一となりました。1907（明治40）年にピークを迎えた後、徐々に枯渇していき、1996（平成8）年に最後の井戸の採掘が終了しました。

かつての大油田の多くは廃田しましたが、現在も新潟県の原油生産量は全国1位で、国内シェアの約64%（2020年）を占めています。新潟県内には南長岡、東新潟、岩船沖という3つの大規模油ガス田が操業、生産を続けています。

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