燕三条に金属加工業が根付いた背景
元禄年間(1688〜1704年)になると、越後平野西部の弥彦山(やひこやま)で間瀬(まぜ)銅山の採掘が始まります。そこで仙台や会津の鍛冶職人を呼び、彼らから銅加工の技術がもたらされ、銅器の製造が盛んになりました。また、燕や三条の南西に位置する出雲崎は、江戸時代には北国街道の要衝で、佐渡の金や銀が陸揚げされたほか、北前船の寄港地だったので、鉄も運び込まれました。当時の鉄のおもな生産地は中国地方で、江戸への流通には時間も手間もかかっていました。そこで中国地方から原料となる鉄を出雲崎に運び、燕や三条で加工し、水路や陸路で江戸へと運ぶしくみがつくられました。
燕三条の金属加工に欠かせない木炭の運搬
こうして燕や三条は金属加工の一大拠点として発展していきますが、その過程で後背地である下田地区の存在も見逃せません。下田地区は、当時の金属加工に欠かせない木炭の一大産地でした。大量に生産された木炭は、五十嵐川(いからしがわ)を使って燕や三条へと運ばれてきます。信濃川とその支流は燃料の輸送手段としても重要な役割を担っていました。この運搬ルートを駆使し、三条の商人たちは、金属加工品の製造・流通網を確立していったのです。
燕では銅加工の技術を生かしてキセルや鎚起銅器を生産するようになり、明治以降、燕と三条は金属加工の拠点として、ますます鍛冶屋が増えますが、洋釘の輸入による和釘需要の減少という危機が訪れます。そこで、三条は大工道具や打刃物(うちはもの)を生産。1911(明治44)年には燕で手づくりの金属洋食器も誕生。現在、燕の金属洋食器(食卓用ナイフ・フォーク・スプーン及び、そのほかの洋食器)の出荷額は新潟県が全国でダントツです。その原動力が燕三条地区なのはいうまでもありません。
燕三条の金属加工発展の素地となった流通
燕と三条の周辺には、輸送手段としての川、交通の要衝にして北前船の寄港地だった出雲崎、鉱山や木炭の一大生産地もそばにあり、流通網も含めて金属加工業が発展する素地は十分にありました。
燕三条の金属加工品は世界的ブランド
今や燕三条地区の金属加工品は国内のみならず、世界各国に輸出されています。とくに刃物や洋食器は、その品質や機能性の高さから、高級レストランからの引き合いも多いといいます。また、さまざまな有名企業から委託を受け、クライアントの希望に合わせた製品をつくり出しています。
江戸時代から培われてきた燕や三条の高い金属加工技術は錆びれることなく、新しい技術を取り入れて進化し、現代に受け継がれているのです。
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ほか、上越新幹線・北陸新幹線、上越線、飯山線、越後線、北越急行ほくほく線、えちごトキめき鉄道、新潟交通電車線、蒲原鉄道線などを紐解く。
Part.3 新潟の歴史を深読み!
・古代史総論/縄文時代 火焔型土器
・弥生時代 玉作と稲作
・越国が成立しやがて三国に分かれる
・中世史総論 城氏の興亡
・波月条絵図はなぜつくられた?
・上杉氏と長尾氏の複雑な関係(謙信による越後統一まで)
・御館の乱を経て景勝が越佐統一
・近世史総論……越後平野の開発
・鉱山都市相川の発展
・近世の交通
・近現代史総論
・北越戊辰戦争
・戦時下の新潟
Part.4 新潟で育まれた産業や文化
・大河津分水
・燕三条の金物
・西山・東山・新津の三大油田ほか新潟に発展した石油関連事業
・コシヒカリ
・越後杜氏と日本酒/越後縮
・冬の新潟が豪雪地帯となるわけと雪がもたらした観光業
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