糸魚川のヒスイが歴史から姿を消した
縄文〜古墳時代に盛んに使われたヒスイでしたが、奈良時代以降、忽然として歴史から姿を消してしまいます。仏教の伝来と関係づける説もありますが、理由は定かではありません。最古のヒスイ文化は忘れ去られ、ヒスイの起源は大陸にあるとさえ思われていました。
糸魚川のヒスイの出自は「古事記」の記載に着眼して発見
出自が判明したのは戦前。1935(昭和10)年、糸魚川の文学者・相馬御風が『古事記』に出てくる「越(こし)の奴奈川姫(ぬなかわひめ)」が身につけていたのはヒスイではないかと考え、地元住民の協力でヒスイを探したところ、小滝川上流の土倉沢で美しい緑色の石を発見。それを東北大学の河野義礼博士らが分析し、ヒスイ輝石(硬玉(こうぎょく))だと確認されました。河野義礼博士は翌年に論文を発表、その後、日本国内で発見されているヒスイ加工品のほとんどが、糸魚川産ヒスイを使っていると判明しました。なお、国内には約10カ所のヒスイ産地がありますが、宝石級の上質なヒスイを多産するのは糸魚川だけでした。
糸魚川流域のヒスイ産出地
姫川支流の小滝川ヒスイ峡は、1956(昭和31)年に「小滝川硬玉産地」として国の天然記念物に指定。また、青海川上流、黒姫山の麓にある青海川ヒスイ峡(青海川硬玉産地)は翌57年に国の天然記念物に指定されました。フォッサマグナパークではプレート境界や枕状溶岩を見ることができます。明星山や黒姫山は石灰岩でできた山です。
糸魚川のヒスイ誕生のメカニズム
ところでヒスイとは、おもにヒスイ輝石という鉱物からできた硬い岩石です。そしてヒスイ輝石の化学組成は、ナトリウムやアルミニウム、ケイ素、酸素など地球上に豊富な元素からできているにもかかわらず、産出地域が世界的に限られています。それには、ヒスイ誕生のメカニズムが関係しているのです。
糸魚川のヒスイは約5億年前の海洋プレートの沈み込みからつくられた
ヒスイ輝石は、海洋プレートが大陸プレートに沈み込む「沈み込み帯」の地中深くでつくられる変成岩(へんせいがん)で、低温高圧の特殊な条件でのみ生成されます。
糸魚川のヒスイは、約5億年前、エリアの地下に海洋プレートが沈み込んでつくられました。そして、青海川、姫川、小滝川などのヒスイ産地の周囲には、必ず蛇紋岩が分布しています。蛇紋岩は、マントルを構成するカンラン岩が、沈み込んだ海洋プレートから絞り出された水と反応し変質したものです。蛇紋岩はカンラン岩より比重が小さく、地中を浮力により上昇していく際にヒスイを取り込みます。ここに大陸プレートが海側へのし上げられる力が加わり、ヒスイは地表付近に運ばれたのです。
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ほか、上越新幹線・北陸新幹線、上越線、飯山線、越後線、北越急行ほくほく線、えちごトキめき鉄道、新潟交通電車線、蒲原鉄道線などを紐解く。
Part.3 新潟の歴史を深読み!
・古代史総論/縄文時代 火焔型土器
・弥生時代 玉作と稲作
・越国が成立しやがて三国に分かれる
・中世史総論 城氏の興亡
・波月条絵図はなぜつくられた?
・上杉氏と長尾氏の複雑な関係(謙信による越後統一まで)
・御館の乱を経て景勝が越佐統一
・近世史総論……越後平野の開発
・鉱山都市相川の発展
・近世の交通
・近現代史総論
・北越戊辰戦争
・戦時下の新潟
Part.4 新潟で育まれた産業や文化
・大河津分水
・燕三条の金物
・西山・東山・新津の三大油田ほか新潟に発展した石油関連事業
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・越後杜氏と日本酒/越後縮
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