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佐渡金銀山の歴史と金銀ができる仕組み
金は、石英(せきえい)などの鉱脈の中に含有されています。マグマが冷えて固まるときに、熱が放出されてできる高温の水・熱水(石英などが溶けている状態)には、金や銀などの金属も溶けていて、それらを濃集しながら地表に向かって移動します。この熱水に含まれていた金や銀が沈殿して固まり、金銀を含んだ石英脈となるのです。
佐渡金銀山の歴史は平安時代から
採取する金には「砂金」と「山金(やまきん)」があります。金は重く、酸にもアルカリにも強いので、金を含んだ鉱石が風化して砂になって、水に流されても砂や小石の下に溜まります。これが砂金です。大きさは数ミリほどで、佐渡でも平安時代の説話集『今昔物語』に、能登国(現在の石川県北部)の鉄掘り集団の長が佐渡で砂金を掘ったと記されています。これが佐渡金山の最初の記録であり、場所は佐渡最古の砂金山・西三川砂金山と見られています。いっぽう山金とは、砂金にならず鉱脈に含まれたままの金です。日本の金の大部分は山金であり、佐渡でも金は岩脈の中から取り出されます。
佐渡金銀山で最大の「相川金銀山」
佐渡最大の金山は、相川金銀山です。1601(慶長6)年、佐渡最大の銀山・鶴子銀山の山師(やまし)が、地表に露出した有力鉱脈を見つけたことをきっかけに、徳川幕府の直轄領となり、本格的な採掘が始まりました。相川金銀山からは、金はもちろん、鶴子銀山以上の銀も採取されました。こうして佐渡の金銀山の中心は、鶴子から相川へと移っていったのです。
佐渡金銀山の張り巡らされた坑道
佐渡の鉱山には、アリの巣のように坑道が張り巡らされています。地下は海面下に達し、坑道の総延長は実に約400kmに及んでいます。これが可能だったのは、岩盤が固い火山岩でできていて、崩落しにくかったからでした。
佐渡金銀山での江戸時代の採掘工程
江戸時代には相川に佐渡奉行所が置かれ、金山の経営を行っていました。奉行所は山や施設を貸し出し、工程を管理したのでした。
新しい鉱山の発見や開発を仕事とする「山師」が採掘を請け負い、採掘された石の選鉱(せんこう)や精錬を「買石(かいいし)」と呼ばれる製錬業者が行いました。江戸時代初期には、40人以上の山師が佐渡にいたといわれています。山師が経営し運上(税金)を払う鉱山を「自分山」または「請山(うけやま)」といい、幕府直営の鉱山を「直山(じきやま)」と呼びました。江戸時代後期には、直山が増え、選鉱・鋳造まで奉行所内で行うようになっていました。当時、採掘から小判鋳造まで行っていた地域は、佐渡だけでした。
佐渡金銀山から大量に金銀が産出された理由
佐渡金銀山は、明治時代以後、官営の佐渡鉱山となり、宮内省御料局(ごりょうきょく)に移管後、1896(明治29)年、三菱合資会社に払い下げになりました。江戸時代後期には産出量が低迷していましたが、最新設備の導入や製錬技術の進歩で、1940(昭和15)年には過去最高の年間・金約1.5トン、銀約24.5トンを産出しています。
佐渡でここまで大量に金銀が発見・産出された背景には、金銀が地表に現れやすかったこと、また金銀鉱脈が谷川の侵食で地表に露出しやすかったことが挙げられています。
佐渡鉱山は1989(平成元)年に閉山しますが、採掘跡である「道遊(どうゆう)の割戸」「宗太夫間歩(そうだゆうまぶ)」などの遺構の見学が可能です。
史跡 佐渡金山
- 住所
- 新潟県佐渡市下相川1305
- 交通
- 両津港から新潟交通佐渡本線相川行きバスで1時間15分、佐渡金山前下車すぐ
- 料金
- 入館料(宗太夫坑・道遊坑)=各大人900円、小・中学生450円/入館料(宗太夫坑・道遊坑共通券)=大人1400円、小・中学生700円/(障がい者手帳持参で半額)
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・約3000万年前に誕生した佐渡島 火山や地殻変動の痕跡がいっぱい!
・かつて圧倒的な産出量を誇った佐渡島の金銀山が生まれた秘密
・プレートの沈み込みが生む奇跡!糸魚川地域でヒスイが採れるわけ
・ヒスイ峡に3億年前のサンゴ礁!? 石灰岩でできている明星山の秘密
・日本列島を分断する見えない溝 フォッサマグナとはいったい何か?
・最長70㎞で10列をなす新潟砂丘は信濃川と阿賀野川がつくった!?
・約40年前から形成され始めた中津川に広がる河岸段丘の絶景
・約1000万年前の海底火山が生んだ新潟市・間瀬海岸の奇岩や沸石
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・産出量は文句なしの全国1位! 新潟県に油ガス田が多いわけ
・約300万年で2000mも隆起! 八海山が秘める地殻変動のすごさ
Part.2 新潟を駆ける充実の交通網
・東京と新潟をいかにして結ぶか?直江津線として生まれた信越本線
ほか、上越新幹線・北陸新幹線、上越線、飯山線、越後線、北越急行ほくほく線、えちごトキめき鉄道、新潟交通電車線、蒲原鉄道線などを紐解く。
Part.3 新潟の歴史を深読み!
・古代史総論/縄文時代 火焔型土器
・弥生時代 玉作と稲作
・越国が成立しやがて三国に分かれる
・中世史総論 城氏の興亡
・波月条絵図はなぜつくられた?
・上杉氏と長尾氏の複雑な関係(謙信による越後統一まで)
・御館の乱を経て景勝が越佐統一
・近世史総論……越後平野の開発
・鉱山都市相川の発展
・近世の交通
・近現代史総論
・北越戊辰戦争
・戦時下の新潟
Part.4 新潟で育まれた産業や文化
・大河津分水
・燕三条の金物
・西山・東山・新津の三大油田ほか新潟に発展した石油関連事業
・コシヒカリ
・越後杜氏と日本酒/越後縮
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